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仮面②

 不意討ちで幕を開けたアレン達と仮面の男の戦いであったが、仮面の男に動揺は見られない。


 仮面は手の持つ幅の広い剣でフィアーネ、レミアの投擲したナイフを受け止める。仮面の持つ剣に弾かれたナイフは勢いをなくし地面に落ちる。


 そしてアディラの放った矢は仮面の左腕を射貫いた。アディラが狙ったのは仮面の隙間の目の位置であったのだが、仮面はそれを左腕でガードしたのだ。アレン達の『不意討ち』はこの段階で失敗したように見える。


 だがアレン達は先手を打った流れを失うのはもったいないという事でアレンとアルフィスが剣を抜き間合いを積め斬りかかった。


 アレンとアルフィスの斬撃を仮面は大剣を振るって受ける。凄まじい膂力であり仮面の剣を動かす事はまったく出来ないのだが、別にアレンもアルフィスもここで仮面と力比べするつもりはサラサラ無かった。


 アレンが仮面の剣を引き受けている間にアルフィスは仮面の首を狙って斬撃を繰り出す。仮面は身をよじって躱すがそこにアレンが容赦ない斬撃を繰り出していく。完全に流れを掴んだアレンはこのまま押し切ることにする。


 凄まじい速度で繰り出される斬撃を仮面は下がりながら捌いていく。


 このままいけばアレンが遠からず仮面を討ち取るように思われたが…突然、仮面がアレンの目の前から消える。


(…ちっ)


 アレンが舌打ちをするとアレンはそのまま背後に斬撃を放った。


 キィィィィン!!


 アレンの斬撃を仮面はその大剣で受け止めている。


「ぬん!!」


 アレンはそのまま剣を押し切り仮面をはじき飛ばした。仮面は3メートルほどの距離を飛び着地する。


 そこにアディラの一矢が放たれるが仮面は剣の腹でアディラの矢を弾いた。


「よくわかったな」


 アルフィスがアレンに声をかける。アルフィスの言葉はもちろん突然消えた仮面をアレンが見失わなかった事への言葉である。


「何言ってる。お前が俺の立場なら同じ事をしただろ」


 アレンの言葉をアルフィスは否定しない。


 アレンが間髪入れずに背後に斬撃を繰り出したのは、目の前から突然消えた者がどのような行動をとるかと考えれば自然と導き出されるものである。つまりアレンは仮面が転移魔術によって背後に回り込んだと当たりを付けたのだ。結果としてアレンが仮面を出し抜いた形となったのだ。


「さて…」


 アレンが全員に告げる。


「みんな…こいつはどうやら転移術の拠点をこの周辺に仕掛けているようだ。油断するなよ。いつ背後をとられるか分からんぞ」


 アレンの言葉に全員が頷く。


「となると…レミアのような事が出来ると考えれば良いというわけですね」

「まったく私の十八番を奪うのは止めて欲しいわね」


 フィリシアの言葉にレミアが軽口で返す。レミアは双剣を抜き放つと仮面にさっきを向ける。


 仮面は手に持つ大剣を地面に突き刺すと魔法陣を展開させる。


(召喚の術式か…まぁ予想はつくが…)


 アレンは皮肉げに思う。この国営墓地で召喚を行う者はアンデッドを召喚するというのが相場だ。


 展開された魔法陣からはアレンの予想通りアンデッドの集団が現れる。召喚されたアンデッド達は『死の聖騎士(デスパラディン)』、『デスナイト』、『リッチ』ここまではこの国営墓地においてほぼ日常的に発生するアンデッドなのでアレン達にとって目新しいものではなかった。だが一体だけ珍しいアンデッドが召喚された。


 そのアンデッドの名は【不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)】という。二本足で歩く竜である『シスメル』と呼ばれる竜を駆る竜騎兵のアンデッド版だ。シスメルは気性が荒々しいが人間により手なずけることが出来るために軍馬の上位種扱いされる魔物だ。体長は3メートルほどであり、火を吐くこと事も出来るために竜騎兵の戦闘力は並の騎士などとは戦闘力は段違いだった。当然、シスメルを御する竜騎兵の実力も強者であり、竜騎兵一騎で並の騎士の2~30人を相手取ることが出来るのだ。


 アンデッドであるためにシスメルも竜騎兵も当然ながら生者ではない。シスメルの骨格に瘴気が覆いシスメルの形を形成し、同様にそれを駆る竜騎兵も人間の骨格を瘴気が覆うことで竜騎兵の姿を形成していた。


「へぇ~【不死の竜騎兵(アンデッドドラグーン)】がいるな」

「俺は初めて見るな」


 アレンの言葉にアルフィスが返答する。


「だろうな、俺も1、2回しか見たことのないアンデッドだ」


 アレンの言葉にアルフィスは訝しむ。


「そんな稀少なアンデッドを召喚か…この仮面は一体何者だろうな?」

「まぁ…尋問は後にとっておこう…まぁ、こいつに意識があるかどうかは別問題だがな」

「だな…」


 アレンとアルフィスの会話を聞き他の者達も小さく頷いた。先程の戦闘から仮面に意識がないのではという可能性を全員が感じたからだ。


 その理由は、アディラの矢を左腕に受けたにも関わらず動きに僅かの乱れも生じなかったのを見たからだ。例え痛覚がなくともまったく乱れないと言うことはあり得ない。となるとこの仮面に意識はなく。誰かが操っているという可能性があるのだ。


「さて…みんな、こいつは転移をして俺達の背後に回り込むことが可能だ。そして、アンデッドを召喚する事が出来る。ここまではいいな?」


 アレンの言葉に全員が頷く。


「となるとこいつを始末しないとまたアンデッドを召喚されかねない。…という事は仮面から始末するという事だ」


 アレンの言葉に仮面は僅かの動揺も見られない。アレン、アルフィスの実力の高さは先程見せたのにもだ。


(う~ん…やっぱり、反応無しか…)


 アレンは仮面に作戦を聞かせることで反応を見ようとしたのだが、何ら反応を示さない事で結論づける。


 『こいつは誰かに操られている』


 アレンは結論づけたが仮面を助けようなどとまったく思っていない。ただ、脅し、言葉によるひっかけの効果が薄いという事を結論づけたのだ。


「さて…じゃあ、るか…」


 アレンは動いた。

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