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魔女⑦

 アレン達は3体目のエルゴアを斃すために移動を開始する。


 墓地のいたる所でエルゴアがアンデッド達を斃し瘴気を吸収しているようで、エルゴアの放つ気配の禍々しさがどんどん強大になっていくのをアレン達は感じている。


「う~ん…どんどんエルゴアが強くなっていくな」

「そうね、厄介な事になっているわね」

「でも、エルゴアに横の連携はまったく無いわね。という事は各個撃破できるという事だから大丈夫なんじゃないかしら」

「レミアのいう通りですね。1対1ならともかく常に5対1なのですから大した問題にはならないと思いますよ」


 アレン達の会話は余裕に満ちている。アレン達がエルゴアが6体現れるという異常事態であってもさほど緊張していないのは結局の所、5対1を6回くり返すだけという考えから来るものだ。


 一方でカタリナはアレン達の実力の高さに驚いている。カタリナはエルゴアを今回初めて見るのだが実際の所、1対1で戦うとしたときに勝てる自信はなかった。

 地竜アースドラゴンを放ったときにエルゴアは地竜アースドラゴンを剣で切り裂いたのだ。地竜アースドラゴンの表面はかなりの量の魔力で覆われており、その防御力はたとえミスリル製の武器であっても破る事は出来ないはずだ。

 だが、エルゴアの剣はその防御を紙のように打ち破った。それだけでエルゴアの戦闘力が並大抵のものでない事が理解できる。


 そのエルゴアを淡々と始末していくアレン達の実力を見て驚かないわけがなかった。しかも残り4体のエルゴアがいるのにまったく動じてないどころか『さっさと片付けよう』という感じなのだ。


(この4人が揃っていれば負けることはないわね)


 カタリナはそう結論づける。実際はさらにアディラが加わるためにさらに戦闘力は跳ね上がるのだが、さすがにカタリナはアディラが戦闘力過剰な王女である事は現時点では知らない。


「ん?」

「あれ?」

「…え?」

「う~ん…」


 アレン達がそれぞれ意外な事が起こったという表情を浮かべながら声を上げる。


「どうしたの?」


 カタリナはアレン達の反応が気にかかり聞いてみることにした。


「いや…エルゴア同士が接触したようだ」

「え?」

「正直、エルゴア同士が接触して何がどうなるかまったくわからんな」


 アレンの言葉にレミアが提案する。


「アレン、ちょっと急がない?」

「そうだな」


 レミアの提案をアレンは了承する。そしてフィアーネ、フィリシア、カタリナに順番に視線を移すとそれぞれが頷く。どうやら異論はないようだ。


「それじゃあ、接触したエルゴア2体の所に急ごう。でも何が起こるか分からんから戦闘は控えよう。場合によっては撤退も視野にいれて行動する」


 アレンの言葉に全員が頷くとアレン達は移動する。





 ギィン!!ギィン!!


『グゴガァァァッァァァ!!』

『ギジュギャァァァァァ!!』


 アレン達がエルゴア2体の所に行くとすでに2体のエルゴアは殺し合いの真っ最中だった。


 すでの相当数のアンデッドを斃して瘴気を吸収したエルゴア同士の殺し合いは闘技場であれば多くの観客を虜にしたことだろう。


 一体のエルゴアは、ありとあらゆる角度から斬撃を繰り出している。それをもう一体のエルゴアが必死に防戦している。だが、防戦一方であったエルゴアが反撃に転じると先程まで責め立てていたエルゴアが今度は防戦に回った。


 一進一退の攻防をエルゴア同士がくり返していた。


「アレン…エルゴア達が殺し合ってるわね」


 フィアーネの言葉にアレンも頷く。


「この状況を見るにエルゴア同士に仲間意識はないという事かしら?」

「う~ん…」


 アレンは呻く。ここで判断を下すのは少々早計のような気がしたのだ。


「エルゴアが殺し合うのは目的があるからかしら?それとも単純に自分以外の生物を殺すように作られているだけで、特に意味はないのかしら…いずれにしても興味深いわ」


 カタリナがエルゴア同士の殺し合いを見ながら研究対象としての興味が湧いたのかも知れない。カタリナの研究対象にホムンクルスがある以上、それと似た存在であるエルゴアに興味がないとは言えなかった。


「う~ん、エルゴアの生態って言って良いか分からないけどサンプルが欲しいわね」


 アレン達はカタリナの声を聞きながらスカウトのための情報を集めている。カタリナは研究者としての側面があるのはすでに分かっている。という事はこの国営墓地にカタリナの興味を引く材料があれば良いのだ。


 このエルゴアの存在はかなり興味対象として有効であるようにアレン達には思われる。


「魔人ヴェノキスは何のためにエルゴアを作ったのかしら?殺し合せた先に何があるのかしら…いえ、これから何が起こるのかしら…」


 カタリナはブツブツと呟いている。どうも思考の渦に巻き込まれてしまっており抜け出せないようだ。いや、抜け出す気は全く無いと言った方がより的確だろう。


『シャアアアアアアアアア!!!!!』


 雄叫びを上げたエルゴアの斬撃が相手の腕を斬り飛ばした。斬り飛ばされた腕は回転しながら地面に落下する。


 そのままエルゴアの剣が腹を斬り裂く。腕と腹を切られたエルゴアは跪く。どうやら勝負あったようだった。


 跪いたエルゴアの頭を勝ったエルゴアの剣が両断する。


 頭を両断されたエルゴアが地面にひれ伏す。すると死体から瘴気が立ち上り始める。死体から湧き起こった瘴気は勝ったエルゴアに纏わり付いていく。纏わり付いた瘴気はエルゴアに吸収されていく。


「アレン…」


 フィアーネが小さく言葉を発する。どうやらアレン達は下手を打ったということをこの段階で察したのだ。


 どうやらエルゴアは斃した相手の瘴気を吸収するのはアンデッドに限った事ではないらしい。今の戦いを制したエルゴアは殺したエルゴアから瘴気を奪い取り自分の糧としたのは間違いない。

 

 問題はこのエルゴアがどれほど強化されたかという事だ…。


 エルゴアがアレン達を見てニヤリと嗤った。



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