表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/602

閑話~デート:アディラ編②~

 すべての用意を終えたアディラはメリッサとエレナを伴い、アインベルク邸に向けて出発することにする。


 私室をでたアディラは廊下で幾人もの女生徒とすれ違う。


「お早うございます」

「王女殿下、お早うございます」

「みなさん、お早うございます」


 アディラが幸せそうに令嬢達にあいさつを返していく。


 着飾ったアディラは美しさと可愛らしさを兼ね備えており、ほとんどの令嬢達はアディラに見惚れている。


 アディラに陰口を叩くものであっても、アディラの容姿をけなすことはまずない。アディラを悪く言う者の根底にあるのは劣等感なのだ。


 王女という地位に生まれ、容姿も最上級、性格もすばらしい、しかも愛する男性と婚約まで結んでしまった。女として人として大きく差をつけられた事に対する嫉妬だった。

 

「今日の王女殿下、いつにも増してものすごく綺麗でしたね」


 1人の令嬢がアディラを褒めると他の令嬢達も同意する。


「ええ、可愛らしいのはいつもの事なのですが、今日は…こう、なんというか」

「確かに何かが違いますわね」

「ええ、何なのでしょうか?」


 令嬢達が首を傾げる。そこに1人の令嬢が言う。


「幸せそうというべきなのかしら?」


 1人の令嬢の言葉に首を傾げていた令嬢達は胸にストンと落ちるものがあったようで、みな同時に頷いた。


 同時にアディラの幸せそうな状況を羨ましそうに見送るのであった。






 アディラが寮を出て馬車にメリッサとエレナとともに乗り込むと、馬車はアインベルク邸に向かって走り出す。


「えへへ」


 馬車の座席に上でアディラは可愛く笑う。その恋する乙女全開の笑顔は同性であっても微笑まずにはいられない。


「そういえばアディラ様」


 エレナがアディラに尋ねる。また余計な事を言うのではないでしょうねという視線が隣に座るメリッサから送られるが表面上エレナは気にしていないふりをする。


「どうしたの?」


 アディラもメリッサから放たれる雰囲気を当然察しているがさらりと流すことにした。


「はい、アディラ様はゴルヴェラを斃したときにアインベルク卿にご褒美をねだるのではなかったのですか?」


 確かにエレナはあの時にアディラに冗談で『キスをせがんでも許されるのでは?』という類の事を言い、アディラもそれに乗ったのだが、実際にはせがんだご褒美はデートだった事がエレナは意外だったのだ。


「ふ…わかってないわね」


 アディラの言葉にエレナは『え?』という顔をする。アディラは何かしら作戦を立てていたというのだろうか。


「デートだったらアレン様に甘え放題なのよ。キスは幸せだけど一瞬じゃない。でもデートだったらその日はず~~~~~っと甘え放題、なら私はこちらを選ぶわ!!」

「はぁ」


 アディラのテンションに比べてエレナはガッカリしていた。そんな大した事を考えていたわけではなかったのだ。


「何よ、その反応は?」

「いえ、何でもありません」

「む~私の深慮遠謀を舐めちゃいけないわよ」

「え?まだ何かあるんですか?」

「当たり前じゃない」

「例えばどのような計画を?」

「聞いて驚きなさい。まずアレン様に抱きついてから、そのまま甘えまくる!!」

「「…」」

「む~なんで2人とも何も答えないのよ」


 アディラが拗ねる姿は可愛いのだが、メリッサとエレナは頭を抱えていた。結局の所、アディラはノープランでこのデートに望んだのだという事がわかったからだ。


「いえ…がんばってくださいね」


 メリッサがかろうじて声を絞り出す。アディラはその様子に首を傾げるが気にしないことにした。


 そんなやりとりをしているとアインベルク邸に到着した。


 馬車がとまるとアディラは真っ先に馬車から降り立つ。はっきり言って褒められた行動ではないが、アインベルク邸意外でこの類の事は絶対にしないためにもはやメリッサもエレナも何も言わない。


 アディラは玄関まで早足で移動すると玄関についている来客を告げる鐘を鳴らす。するとすぐに扉が開きアレンが出迎える。


 アレンの格好を見てアディラは微笑むと嬉しさを隠しきれない、いや、隠す気もない声でアレンに挨拶する。


「お早うございます!!アレン様!!」


 アディラの挨拶を受けてアレンは微笑むと返事をする。


「ああ、おはよう。今日の格好もアディラに似合ってるな」

「は、はい、ありがとうございます♪」


 アレンの賛辞を受けてアディラは幸せそうに微笑む。


「あら、おはよう。色合いが素敵ね」

「今日は黒なのね。でも白のストールとの対比が大人っぽく見えるわ」


 レミアとフィリシアがアディラの格好を褒める。


「えへへ、ありがとうレミア、フィリシア」


 何だかんだ言ってレミアとフィリシアのような美人に褒められるのは嬉しかったのだ。


「それじゃあ、アディラ行こうか」


 あいさつもそこそこにアレンがアディラを誘ってさっそくデートに出かける。


「みんな、それじゃあ行ってくる。夕食までには帰るから」

「「いってらっしゃい」」


 レミアとフィリシアがニコニコと微笑みアレンとアディラを見送る。


「「いってらっしゃいませ」」


 メリッサとエレナが一礼し、2人を見送る。メリッサとエレナはアディラが戻るまでアインベルク邸で留守番する事になっているのだ。

 護衛につかなくて良いのかと最初は思ったのだが、よくよく考えればアレンが護衛についていると考えればまったく心配ないのだ。加えてアディラは弓術のみでなく無手であってもゴブリンやオークが襲ってきても蹴散らすぐらいの実力は持っているのだ。その事に思い至ると2人はアレンに任せる事にしたのだ。むしろアインベルク邸に来るまでメリッサとエレナが護衛していた時間の方がよほど護衛力に不安があったぐらいだ。


 アレンとアディラはメリッサとエレナに手を振りデートへと出発した。



 あと1回続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ