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魔将Ⅱ⑤

 ゴルヴェラ達は散開しアンデッド達に襲いかかる。


 その戦力差は圧倒的だった。スケルトンソードマン、スケルトンウォリアーなどがそれぞれのゴルヴェラ達に為す術無く砕かれていく。


 一振りで数体のスケルトンソードマンが砕け散り核を踏みつぶされる。


 散開したゴルヴェラ達はアンデッド達を蹂躙しながら固有の武力を振るう。生ある者であればゴルヴェラの戦いぶりを見てひるんだことであろう。だがアンデッド達はその定義に当てはまらない。


 アンデッド達はただ召喚者の命令に従いゴルヴェラに向かっていった。


 完全にゴルヴェラ達がばらけ、互いが互いを支援できなくなった距離になった段階でアレン達は動く。各個撃破の条件が完全に整った以上、この機会を逃すような呑気な者はアレン達の中にはいない。


「フィアーネ…行くぞ」

「ええ」


 アレンとフィアーネは一体のゴルヴェラに狙いを定めて走り出す。他の仲間達もそれぞれ狙いを定めた相手に向かって走り出した。


アレンとフィアーネが狙いをつけたゴルヴェラは両手に鞭と呼ばれる打撃武器を持ち、足で巧みに騎乗した魔獣を操っていたゴルヴェラだ。このゴルヴェラの名前は『クルゴムド』、両手の鞭を使って敵を撲殺する戦い方を得意とする。


 もちろんアレン達はこのクルゴムドの名前も知らないし能力も知らない。ただ一番初めにアレンの目にとまっただけの事だった。


 クルゴムドの方も自分達に向かってくるアレン達を見つけたのだろう。ニヤリと残忍な嗤いを浮かべアレン達の方へ魔獣を走らせる。途中にアンデッド達が立ちふさがるが、アンデッド達は向かってくるクルコムドの進行をまったく妨げることは出来ない。文字通り蹴散らされたのだ。


「フィアーネ…出来るだけあいつには苦しんでもらおう」


 アレンは走りながらフィアーネに提案する。その提案は慈悲深い者、騎士道精神に溢れる者であれば嫌悪感を示すような提案である。


 だが、フィアーネは快諾する。アレンが提案した意味を理解していたからだ。アレンが提案した理由はクルゴムドを苦しませて討ち取ることにより他のゴルヴェラの注意、怒りを自分に向けさせるためである。そうすれば、他の仲間達の危険性はぐっと減り、動きやすくなると考えたからである。


「フィアーネには悪いが付き合ってもらうぞ」

「勿論。私はどこまでも付き合うわよ!!」


 フィアーネは艶やかに笑う。例えそれが他の婚約者であっても答えは変わらない。その事をアレンは確信している。


「よし、じゃあやるか!!」

「うん♪」


 フィアーネが答えた時にはクルゴムドが騎乗した魔獣の口がアレンの目前に迫っている。アレンはその魔獣の牙を横に跳び躱す。そこにクルゴムドの鞭が振り下ろされる。アレンは剣でその鞭を受け流すが、魔獣の駆ける速度に加えクルゴムドの膂力が加わり、威力を流しきる事が出来なかったため、少し手がしびれてしまった。


 クルゴムドは魔獣を足で操り振り返るとアレンとフィアーネに残忍な嗤いを向ける。


 露骨な嘲りを受けてアレン達は不愉快になるがクルゴムドは魔獣を突っ込ませることはしない。

 訝しげに思っていた所、クルゴムドの方からアレン達に声をかけてきた。


「人間如きがやるではないか」

「いや…これぐらいで褒められても…なぁ?」


 アレンはクルゴムドの言葉に呆れたかのような声でフィアーネに言う。


「ええ、あの程度の攻撃ぐらい普通に躱せるわよね。ひょっとしてゴルヴェラって弱いのかしら?」


 フィアーネも首を傾げながらアレンの言葉に返答する。これはもちろん、クルゴムドに対する挑発だ。


 アレン達にしてみればこの挑発に相手が乗ろうが、乗るまいがどっちでも良かった。だが、どちらにしても気分を害するだろう。それが表面上にでなくてもだ。


「人間如きがこの俺を侮辱するとは身の程を知れ!!」


 クルゴムドの声にアレンとフィアーネは肩をすくませる。口から出た言葉はまたしても挑発であった。


「それで?お前は誰なんだ?まさか俺がお前を知っているなどという妄想にひたってると恥をかくぞ」


 アレンの再びの挑発にクルゴムドは口を開く。


「なぜ俺が貴様ら如きに名乗らねばならんのだ!?」

「いや…名乗る気が無いならそれでいいよ。お前の名前なんかに価値なんて無いしな」

「何ぃ!!」

「だって、お前すぐ死ぬだろ?」

「な」

「お前如き俺一人でも十分なんだが、ここにはフィアーネもいるからな。どう考えても負けはない」

「人間如きがゴルヴェラである俺に勝てるとでも思っているのか?」

「俺にそんなセリフを吐いた連中はすでにみんな土の中だ。お前もどうせそのクチだろ」

「俺を人間如きと同じに見るなよ」

「そうは言っても…」


 アレンの言葉の途中でフィアーネがナイフをクルゴムドに向け投擲する。クルゴムドは右手に握る鞭で投擲されたナイフを弾く。


 その事にフィアーネは落胆しない。なぜならフィアーネの目的はクルゴムドへダメージを与えるのが目的ではなかったからだ。フィアーネの目的はアレンから一瞬でも意識を逸らすことであったのだ。


 アレンはその狙いを察しており、フィアーネがナイフを投擲した瞬間にはもうアレンは動いていた。


 一瞬でアレンは魔獣の眼前に到達するとそのまま剣を突き刺す。アレンの剣は魔獣の体を突き抜け、クルゴムドの腹部を貫くはずであった。だが、クルゴムドはかろうじて左手に握る鞭でアレンの突きを弾く。


 貫かれた魔獣はすでに絶命しておりクルゴムドは地面に降り立つ。


「やってくれたな」


 クルゴムドの顔に明らかな憎悪がやどる。その顔を見てアレンはニヤリと嗤うと距離をとった。


「呑気にくっちゃべってるから大事なペットが殺されるんだよ。マヌケ」


 アレンの声にクルゴムドはさらに憤る。


「大体、俺がお前と喋る事自体が何らかの意図に基づいて行うべきものだとわかりそうなもんだろうが」

「何?」

「どうやらお前は根本的に勘違いしてるようだな」


 アレンの言葉にクルゴムドは訝しげな表情を浮かべた。


「理解力の無い奴だな…お前はこの場を狩り場だと思ってるんだろ?」

「…当然だ。ゴルヴェラである俺達に嬲り殺されるのが貴様らの運命だ」

「そんな浅はかな考えしか持たないからお前らは負けたんだよ」

「なんだと?」


 クルゴムドはアレンの言葉に違和感を感じる。今、この人間は『負けた』と言わなかったか? 『負けるのだ』ではなく、すでに確定しているような言い方にクルゴムドは僅かながら動揺する。


「わからないのだろうな…お前らはすでに負けているという事を…」

「ふざけるな人間如きが俺達ゴルヴェラを殺せると思っているのか!!」

「ふざけてなどいないさ…これからの戦闘はただの答え合わせだ」


 アレンはクルゴムドに向け言い放った。


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