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騎士⑤

 ウオォォォォォ!!!!


 表れたデスバーサーカーはスケルトンではない。他のアンデットよりも大量の瘴気があつまり肉体を形成する。身長は2メートルを超え、筋骨逞しいというよりも筋肉が盛り上がっており、異常な発達を見せている。

 右手に刀身1メートルを超えるの分厚い剣を持ち、斬るというよりも重量を活かして叩きつぶす事を目的として製作されたかのようだ。左手には巨体の半分を覆うかのような巨大な盾がある。鎧は簡素なものであったが、分厚い筋肉と併せて相当な防御力があることが考えられる。


 デスバーサーカーを見て、四人の近衛騎士は、ガチガチと歯が鳴っていた。先ほどのスケルトンなどとは明らかに違う迫力、いや、死の予感を身近に感じたことで、本能が刺激されたのだろう。


 いくらなんでもこれは・・・とアレンを見ると、アレンは先ほどと同じように、剣を抜き、デスバーサーカーに向け歩き出した。その様子に四人の驚愕はさらに深まる。


(こんな化物相手なのに、アインベルク卿はさっきと変わらない・・・)

(まさか、この化物に勝てるというのか・・・)

(・・・まさか一人でやるつもりか?)

(せめて、助太刀を・・・)


 四人はまったく動くことどころか声を発することも出来ない。アレンはスタスタと先ほどと同じようにデスバーサーカーに近づく。奇妙な静寂が間が生まれていた。四人は固唾を飲んでアレンとデスバーサーカーを見る。


 奇妙な間を破ったのは、デスバーサーカーだ。巨大な盾を前面に押し出し、体を守りながら、突きを放つ!!アレンは突きを躱しながら、懐に入り込むと胴をを薙いだ。

 

 ガギィィン!!


 しかし、アレンの剣はデスバーサーカーの鎧に弾かれる。デスバーサーカーは、剣を振りアレンの頭を爆ぜようとする。それをアレンは、難なく躱すと距離をとり対峙する。


 わずかの攻防ではあったが、アレンは今回のデスバーサーカーの戦闘力の一端を把握した。剣の腕は悪くない、防御力は高い、アンデットのため恐怖を感じることはない。かなり厄介な敵だ。


 一方、四人はアレンとデスバーサーカーの攻防に見惚れていた。


(なんなのだ?ほとんど見えなかった・・・)

(あの巨体であの動き・・・だが、アインベルク卿はそれすら上回る動きだった)

(信じられん・・・なぜあんな動きが出来るのだ)

(すごい・・・私とほとんど年も変わらないはずなのに、どうやってあんな強さを・・・)


 両者の対峙は、アレンの動きによって破られる。デスバーサーカーはアレンの動きに合わせ、盾を構える。

 アレンは巨大な盾を死角にするため、右に動く、その時に一回転し、盾に斬撃を叩き込む。当然、盾を斬ることは出来なかったが、勢いをつけた斬撃の衝撃でデスバーサーカーは体勢を崩す。

 体勢を崩されたデスバーサーカーが立て直すわずかな時間に、アレンは剣を持つ右腕を肘から切断する。剣を握ったまま腕が落ちる、落ちた剣と腕は塵となって消滅する。次の瞬間、アレンは横蹴りを放つ!!まともにアレンの蹴りはデスバーサーカーの腹に決まり、デスバーサーカーは2メートル程吹き飛ばされた。


「すごい・・・」


 ロバートがアレンとデスバーサーカーの戦いを見て、簡潔な感想を述べる。いや述べたというよりも洩れたというのが正しいだろう。他の三人も声こそ洩れていないが同様の感想であった。


 デスバーサーカーは、よろめいたが、すぐに体勢を立て直す。アンデットであるデスバーサーカーには、痛覚も疲労もない。そのため、アレンが右腕を切り落とそうが、強烈な蹴りをみまおうが、平然としている。しかも、デスバーサーカーの切り落とされた腕が再生する。再生した腕には剣が握られており、先ほどのダメージは完全になくなったようである。


 四人の騎士達は、デスバーサーカーの腕の再生に動揺する。しかし、アレンにとって腕の再生は想定内というよりも当たり前の事なので、同様すらしない。


(う~ん、再生のスピードが早いな・・・地道にやるか・・・)


 アレンは、心の中でつぶやくと、デスバーサーカーへ一瞬で間合いを詰める。そこで、突きを腹に突き立てるが、鎧を貫くことは出来ない。表面に小さな傷が付いただけだ。デスバーサーカーは剣を横に払いアレンの首を刎ねようとするが、アレンは剣を下から突き上げ、剣を受け流した。剣を受け流したアレンは、そのまましゃがみながら、デスバーサーカーの右足を切りつける。防具の継げ目からアレンの剣が入り、右足を切り飛ばした。右足を切り落とされたデスバーサーカー倒れ込む、そこにアレンが剣を横に払いデスバーサーカーの首を刎ねた。右足と頭部が消滅する。


「「「「やった!!」」」」


 戦いを固唾を飲んで見ていた四人はほぼ同時に叫んだ。


 しかし、デスバーサーカーは、切り落とされた首と右足を再生させて、再びアレンを襲う。アレンはデスバーサーカーの剣の攻撃を受け流し、胴を薙いだが鎧の表面に傷は付くが、刃は通らない。


(う~ん、まだか・・・頭じゃなく左腕にすべきだったな)


 アレンは動揺することなく、効率的に行えなかった戦闘に反省する。


 デスバーサーカーは、剣を振りかぶり斬りかかる。アレンはその攻撃を躱すと同時にカウンターで右腕の手首から先を切り落とす。その勢いを利用して一回転し、延髄からデスバーサーカーの首を再び刎ねる。勢いの付いた剣はデスバーサーカーの巨大な盾の内側に当たって止まる。アレンは当たった反動で剣を掲げ、上段からデスバーサーカー

の左腕を切り飛ばす。


 再び、右腕、頭、左腕を失ったデスバーサーカーであったが、再び再生し、アレンに向け攻撃する。


(もういいかな?あと一回ぐらいやっとくか・・・)


 アレンは、念には念をといわんばかりに、デスバーサーカーの両手両足、頭を斬り飛ばす。また再生する。


 四人はその状況を見て、何度も再生するデスバーサーカーに絶望した表情を浮かべる。一方、アレンの表情に同様が見られないので、何か策があるのでは?という期待もしている。実際、アレンにとってデスバーサーカーの退治は順調に進んでいるのだが、それは正攻法とでもいうようなものであり、策と呼ぶにはふさわしくないものだった。


 アレンは、攻撃を躱すと胴を薙いだ。今度は、鎧を紙のように切り裂きデスバーサーカーを真っ二つに両断する。両断された下半身は塵と消え去った。アレンは腹ばいになった上半身の背中を踏みつける。剣を逆手に持ち、背中から剣を突き立てる。アレンの剣は鎧を貫通し、胸部にある核を貫いた。


 デスバーサーカーが苦悶の表情を浮かべるのを四人は目撃する。その苦悶の表情も崩れていき、デスバーサーカーは塵となって崩れ去った。


 四人とも呆然としていた。その自失からいち早く復活したのは、ヴィアンカであった。ヴィアンカはアレンに向かって疑問を呈する。


「アインベルク卿、教えてください。一体何をされたのですか?!!」

「何をとは?」


 意味の分からない問いかけをされたアレンは、素朴に返答する。そこに他の三人も自失から復活し、アレンに詰め寄る。


「首を刎ねても死なないデスバーサーカーを斃したではありませんか!!」

「そうです!!首、両腕、両足を切断してもすぐに再生するような不死身の化け物を斃したではありませんか!!」

「やはり、その剣に秘密が?アンデットを消滅させるための特別な秘密があるのでしょうか?」


 四人のあまりの剣幕にアレンもちょっと引き気味だ。


「「「「教えてください!!」」」」


 声を揃えて、アレンに懇願する。その様子を見て、アレンは正直困っていた。別に特別な事をしているわけではなく、当たり前の方法でデスバーサーカーを斃しただけなのだ。なんか特別な秘術を期待されても正直困るのだ。


「え~と、落ち着いてください、別に特別な事などしていません」


 アレンは、デスバーサーカーを斃した正攻法を伝えた。

 


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