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騎士③

 一悶着あった後に、アレンと四人の騎士達は、見回りを再開したが、当然ながら雰囲気は最悪だった。

 

 アレンは、背後から突き刺さる視線を感じていたが、まったく相手にしない。日夜アンデットを相手取るアレンにとって、この程度の刺々しい視線など物の数ではなかったのだ。



 見回りを再開して、10分ほど経ったときに、アンデットを発見した。数は3体、スケルトンだ。発生して間もないのだろう、辺りをきょろきょろと見回している。おそらく生者を探しているのだろう。

 『アンデットは生者を憎む』それが、常識であったが、アレンの解釈は少し異なる。アレンの解釈では『生者を求める』だ。生者を求めるのは、自らが失った生命のきらめきを取り戻したいがためと、アレンは考えている。まぁ、アレンの解釈が常識と異なろうが、生者を襲うことに変わりがないために、こちらとしては滅ぼすという手段をとるしかないのだ。


 アレンは、四人の実力を確かめる必要からスケルトンの3体のうち、1体を四人にまかせ、自分が2体のスケルトンを斃すことを考える。その旨を伝えると、四人の近衛騎士達は明らかに不満そうであった。

 スケルトンは、アンデットの中でも最弱と言われる。実際に四人は他の場所で発生したスケルトンを何度も斃している。しかも、一人で数体のスケルトンを相手にして勝利をおさめてきた。というよりも勝利と言うことが馬鹿らしくなるほど、四人にとっては作業のようなものだった。

 そんなスケルトンを、相手に4人で一体に当たれと言うのだ。これが侮辱でなくて何なのか!!という思いが四人の心に生まれる。しかし、異議を唱えることは出来ない。先ほどのアレンとのやりとりから、アレンはとりつく島もなく逆らった者を帰すことを学んでいた。ゆえに、四人はアレンが自分たちをいびっていると結論づけていた。しかし、そうではないことを四人は後に理解することになる。


「あなた達四人は、向かって右端のスケルトンを斃してください」

「・・・わかりました」


 至極、不機嫌な声でウォルターは応える。おそらく腸は煮えくりかえっていることだろう。しかし、アレンはまったく取り合わない。

 いつもなら、見つけた瞬間に走り出し、アンデットを屠るのだが、今日はそうはいかないので、ゆったりとスケルトンへ向かい歩き出した。


 数歩進んだところで、スケルトンもこちらに気付いたらしい。何かに操られたような歩き方でこちらに向かってくる。アレンは剣を抜き、戦闘態勢に入る。他の四人もそれぞれ武器を構え、スケルトンに向かっていく。

 

 ウォルターとロバートは片手剣と盾、ヴォルグは両手剣、ヴィアンカは長剣だ。全員とも剣に何らかの魔法が施されている。通常の剣とは明らかに違う。近衛騎士の装備はやはり他の騎士団よりも優遇されているらしい。


 互いの距離が詰まっていく。距離が3メートルを切ったときに、ウォルターは一気に間を詰め、スケルトンに斬りかかる。あっさりと切り捨てることをウォルターも他の三人も予想した。スケルトンは左手でウォルターの剣をガードする。ガードした左腕ごと切り捨てるつもりだった。しかし・・・


 ガギィィン!!


 ウォルターの剣は、スケルトンのガードを切り落とすことが出来なかった。驚愕の表情を浮かべるウォルター、反撃とばかりにスケルトンが右で殴ってきた。スピードはなかなかだったが、ウォルターは盾で余裕をもって防いでから反撃を打ち出すつもりであった。だが、スケルトンの殴打をウォルターは受け止めることができなかった。すさまじい衝撃が盾に打ち込まれ、こらえることが出来ずに後方に吹き飛ばされる。ウォルターの盾は一撃でひしゃげていた。

 3人の近衛騎士も驚愕する。アレンの油断しないように念押しした理由を理解した。あれは、気にくわない我々への侮辱ではなく、純粋な警告だったということを。


 ヴィアンカは、アレンに視線を移す。このスケルトンは異常だ。もしアレンが相手にするスケルトンがこのスケルトンと同様なら危ないと思ったのだ。


 しかし、ヴィアンカは驚愕する。アレンが苦もなく一体のスケルトンを袈裟切りして、核を切断して斃し、もう一体の胸に剣を突き立てていた。どちらのスケルトンもガラガラと崩壊する。スケルトン2体を斃したアレンは剣を鞘におさめ、こちらに視線を移す。


(まさかアインベルク卿は、私達に異常なスケルトンを押しつけ、自分は通常のを斃したの?)


 ヴィアンカがそう反射的に思ってしまうほど、あっさりとアレンはスケルトンを屠ったのだ。


「ヴィアンカ!!いくぞ!!」


 ロバートがヴィアンカに声をかける。彼らもこのスケルトンが強敵だと言うことを感じ、四人で連携して斃すことにしたのだ。


「ヴォルグは右に回り込め!!ヴィアンカは後ろだ。俺とウォルターは前で叩くぞ」

「わかった」

「わかったわ」


 四人はロバートの作戦通り、スケルトンを囲む、盾を持つ、ロバートとウォルターが口撃を引きうけ、ヴォルグとヴィアンカが攻撃するつもりだった。



 四人の戦いを見ていたアレンは・・・


(なんだ?弱すぎるだろ?これで近衛騎士?散々偉そうにしていたくせに、この体たらくとは、あの自信はなんだったんだ?)


 かなり、近衛騎士の実力にガッカリしていた・・・。


 ヴォルグは両手剣を振り下ろし、腕を切断しようとしたが、ガギィィン!!という音が響き切断できない。

 ヴィアンカも長剣を振るい頸部を切断しようとするが、ガギィィン!!とこれまたはじかれる。

 ロバート、ウォルターも剣を振るうが、スケルトンの骨を切断することがどうしてもできない。


 スケルトン自体の動きがそれほど速くないために、相手の攻撃を避けるのは容易だったし、反対に自分たちの攻撃は当たるがダメージを与えている様子は全く見られない。


(まったく、じれったいな。4人もいて誰一人、スケルトンの骨を切断できないのか?近衛騎士では一体どんな訓練内容をしているんだ?)


 アレンのいらだちは募るばかりである。まだ見回りは始まったばかりである。最初の段階でこんなに時間をとられるとたまったもんじゃないというのがアレンの正直なところである。


(大体、斬撃が雑すぎる、体捌きも駄目だ。おそらく基礎訓練を真剣にやっていないな)


(ああ!!今絶好のチャンスだったろ?なんで、そこを狙うんだ?)


(息が上がり始めている・・・これ以上は危険だな)


 アレンはテクテクと四人とスケルトンの戦いの中に入っていく。剣やスケルトンの攻撃が入り乱れる中を何でもないように入り、スケルトンの前に立つ。剣を抜くと同時に、スケルトンの右脇から左鎖骨まで切り裂く。途中にあった核を切断し、スケルトンは黒い靄をまき散らしながら崩れ去った。


 四人の騎士達は、自分の目が信じられなかった。自分たちがあれほど手こずり、攻撃が一切効かなかったスケルトンを、アレンはただ剣を一振りしただけで斃してしまった。


(アインベルク卿は私達に異常なスケルトンを押しつけたわけじゃなかったの・・・)


 その事に気付いたときにヴィアンカは愕然とした。アレンと自分たちとの実力差を思い知らされたのだ。

 



 アレンは、何事もなかったように四人に告げる。


「次、行きますよ」


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