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試験②

「いよいよ明日か…」


 アレンと三人の婚約者達がアインベルク邸に設けられたサロンにおいて、歓談をしている。

 

 ここでいう『明日』とは、アディラを魔神が顕現した場合に戦闘に参加させるかという確認、言わば試験である。


 正直な所、王女であるアディラには、魔神との戦闘に参加してほしくは無いのだが、婚約者の中で自分だけがアレンの仕事で役に立てない事になってしまうアディラの心境を思うと頭ごなしに否定するのは躊躇われた。

 

 それにアレンは、アディラが婚約者となって、武術関連の修練をいかに真剣に行っているかを知っている。ここでアディラを戦いから除外すれば、それは彼女の努力を踏みにじる事になってしまう。それが、貴族として王族を守るという事から考えれば、間違っている事は十分承知している。

 だが、守られるだけの存在となったアディラから、一体どれほどの輝きが失われることだろうか。それを思うと、どうしても頭から否定する事は出来なかったのだ。


「そうね…」


 フィアーネの声も心配そうだ。


「アレン…ところで、アディラの合否の基準は?」


 レミアの言葉にアレンは答える。


「基準は簡単だ。アディラの実力が俺達の足手まといになるか、ならないかだ」


 アレンの言葉は冷たいものに思えるが、実際はそうではない。もしアディラの実力が足手まといになるものであれば、そちらの方がアディラを傷つける事になる。もし、アディラの実力が伴わないときには、アレンはきっぱりと『不合格』を言い渡すつもりだった。


「アディラの実力はすでに近衛騎士を撃破するものと聞いている。だが、相手は魔神だ。それだけでは力不足の可能性が高い」

「そうね…」

「でも、アディラの動き見た? あれは相当の修練を積んでいるわよ」

「確かに、アレンさんやフィアーネ、レミアには遠く及ばないけど、実力的に足手まといになるレベルじゃ無いと思います」


 フィリシアの言葉に、アレンを含めた全員が頷く。アレン達もアディラの実力が決して低いとは思っていないのだ。


 だが、アレン達は知らなかったのだ。


 アディラの本当の実力を…。



-----------------------


 翌日になって、アディラがアインベルク邸にやってきた。もちろん、アインベルク邸にやってきたのは、アディラだけではない。いつもの護衛兼侍女のメリッサとエレナはもちろん、兄であるアルフィス、そして護衛の近衛騎士四人である。


「あれ? あなた方が今回のアルフィス達の護衛ですか?」


 アルフィスの護衛の近衛騎士は、アレン達に弟子入りした、ウォルター、ロバート、ヴォルグ、ヴィアンカの四人だった。


 この四人は、確実に功績を重ねており、王族の直接の護衛に選抜されるぐらいになっていた。

 

「「「「はい!!、今夜は勉強させていただきます!!!!」」」」


 四人は声を揃えてアレンに一礼する。護衛の仕事のはずなのに、本人達はアレンの戦いから何かしら学ぶつもりのようだ。もちろん、王太子であるアルフィスと王女であるアディラの護衛を放り出すつもりはまったくないが、アレンの戦いを見られるのは四人にとっては大きな収穫だったのだ。


「アレン、アディラの護衛には俺もつくから、アレン達はいつも通りにやってくれ」


 アルフィスがアレンに言う。アルフィスとすれば、アレンの仕事の邪魔をする事だけは避けたかったのだ。


「もう!!お兄様!!今日は私の試験なんだから、アレン様達がいつものようにやられたら、試験にならないじゃない!!」


 アディラがアルフィスの発言に頬を膨らませる。その様子があまりにも可愛らしいため、全員の頬が緩みそうになった。


「そうだな、すまんすまん」


 アルフィスは口ではそういうが、顔が笑っているために本気で誤っているようには見えない。


「アレン様、それで、私の合格の条件を教えていただけますか?」


 アディラの言葉にアレンは答える。


「ああ、俺達の足手まといになるか、ならないかが基準だ。さしあたって、アンデッドを20体斃せれば足手まといでないという証明になるかと思う」


 アレンの言葉を聞いて、近衛騎士達四人は絶句する。自分達が初めてこの国営墓地のアンデッドと戦ったときは四人がかりで一体のスケルトンを斃すことが出来なかったのだ。いくらなんでも王女であり戦いとは無縁の世界に生きてきたアディラにとって難易度が高すぎると思ったのだろう。

 だが、アディラはニコリと笑い。アレンの出した課題を了承する。


「解りました。アレン様、アンデッド20体ですね!!」

「ああ」

「そうそう…アンデッドなら何でも良いんですか?」

「ああ、種類は問わないからとにかく20体だ」

「もし、今夜の見回りで20体出なかったらどうなります?」

「その時は次回に持ち越しだな」

「解りました」


 アディラの声は明るい。やるべき事が解った以上、アディラは悩まないのだ。



 

 そして、見回りの時間になった。


 アレン達一行は、国営墓地に向かって歩き出す。


 アレン達はいつもの格好、アルフィスは、皮鎧に身を包み、長剣を携えている。近衛騎士達の四人は支給された騎士団の武装、侍女兼護衛の二人は、皮鎧に身を包み、メリッサは剣、エレナは杖と剣で武装している。


 そして、アディラは皮鎧を身につけ、右腰に矢筒を付け、矢は50本ほど、左腰には、普通の剣よりわずかに短い剣を差しており、左手には弓を持っている。


「ねぇ、アディラの武器は弓なの?」

「うん、剣もナイフも一応使えるけど、弓が一番得意なの」

「私達はみんな近接戦闘が得意だから、弓がつかえるのは魅力ね」

「へぇ~遠距離かぁ、アディラが参戦してくれたら助かるわね」

「アディラ、がんばってくださいね」


 フィアーネ、レミア、フィリシアがアディラを励ます。同士達であり、将来の家族達に励まされ、アディラのやる気は高まった。


「おい、アレン」

「なんだよ」

「お前、アディラの弓の腕前知ってるか?」

「いや、普段の動きとかから剣、格闘関連の腕前は解ってるんだが、弓の腕前は見たこと無い。アルフィスは?」

「俺は話を聞いただけだが、すごい腕前とは聞いているが、実際見た訳じゃないからな本当の所はわからん」


 アレンとアルフィスは言葉を交わす。アディラの修練は知っていたが、弓の腕前だけは普段の動きからは察する事が出来なかったのだ。実はアレンもアルフィスも弓術は、手解きレベルで止まっているために判断の素養がなかったのだ。


 そんな事を話していると、一行は国営墓地に着き、門をくぐった。




 後に『月姫げっき』と呼ばれる事になるアディラの初めての戦いであった。




 上げてしまった以上、もう引き返せません!!


 厳しいツッコミはご遠慮くださいwww

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