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魔人⑤

 グダグダですがご容赦ください

「対策だと?」


 魔人エーケンは、訝しげに言う。


「ああ、お前は別に不死身じゃない。そう見せかけているだけだ」


 アレンは一切の動揺も見せずに魔人エーケンに言い放つ。だが、言葉の端々に『面倒くせぇ~』という感情が含まれていることをアレンの婚約者達は察している。

 フィアーネ達がそれを察したのは、アレンの事を理解しているという理由ばかりではなかった。フィアーネ達も同様の気持だったからだ。


「それにしても、お前はそこまで被虐趣味があったのか…。俺には理解できないな」


 アレンの言葉の意図を図りかねた魔人エーケンは目を細める。


「まぁ…いいか。時間がかかりそうだからな。早速始めるぞ」


 アレンの言葉を受けて、フィアーネ、レミア、フィリシアは戦闘態勢をとる。いや、正確には戦闘態勢を魔人エーケンに見せたと言うべきか。アレン達は魔人エーケンの気配を察知してから一切、戦闘態勢を崩していない。ただ、表面上見せてなかっただけであった。


「何回ぐらいかしらね?」


 フィアーネが面倒くさそうに言う。


「5回ぐらいで終わると楽なんだけど…」


 レミアは事も無げに言う。


「いえ…少なくとも十回はあると思いますよ。これでも魔人なんですから、最低限それぐらいやってもらわないと…」


 フィリシアの言葉は、完全に魔人エーケンを下に見ている言葉だった。


「まぁ、結構な術だろうから、そんなにかからないと思うぞ」


 アレンの言葉は面倒くさいので少しでも早く終わらせようという感情が間違いなく入っている。


「行け!!」


 アレンが一声かけると、周囲の5体のデスナイト達が、魔人エーケンに向かって走り出す。

 魔人エーケンは5体のデスナイト達を迎え撃つ。魔人エーケンにとってデスナイトなど相手にするのも馬鹿らしい程の相手だ。だが、アレン達の言葉に警戒心を強めた魔人エーケンは迎え撃つ事を選択したのだ。


 アレン達はその選択の誤りを嘲笑うかのように行動を開始する。


 フィアーネが横に動くと先程の凄まじい戦闘力を持っていることを身をもって知っている魔人エーケンはフィアーネに注意を逸らす。


 逸らした時間は一瞬だ。だが、その一瞬の隙がアレン達相手だと完全に命取りである。


 フィリシアが一瞬で間合いを詰め、魔人エーケンの喉に突きを放つ。意識を逸らしていた魔人エーケンはフィリシアの突きをまともに喉に受ける。喉に突き刺した剣をフィリシアは引き抜くと、フィリシアの剣は次の瞬間には魔人エーケンの心臓を貫いている。


 そこにフィアーネが飛び込み、魔力を込めた拳を人中という人体の急所に叩き込んだ。魔人エーケンは後頭部から頭の中身を撒き散らしながら、5メートル程の距離を飛んで、落ちる。


 奇妙なのは宙を舞っている間に、撒き散らした脳髄がまたも時間を巻き戻したかのように魔人エーケンの体に戻っていったことである。地面に落ちるまでのわずかな時間の間に、魔人エーケンは蘇生していたのだ。

 

 しかも、その際にフィリシアの貫いた喉と心臓の傷も塞がっている。


 不死身としか思えない魔人エーケンの復活劇だったが、アレン達に動揺はない。


「フィアーネ…吹っ飛ばすなよ。仕切り直しになるだろ」


 アレンがフィアーネを窘める。といっても、本気で怒っているわけでないのは明らかだった。もちろん、魔人エーケンへの皮肉のためである。


「ごめんなさい。まさか、また吹っ飛ぶとは思っても見なかったわ。私のか弱い攻撃で吹っ飛ぶなんて、見た目よりも随分とひ弱なのね」


 フィアーネの言葉にアレン達は苦笑で返す。いくら、相手を挑発するためとはいえ、フィアーネの攻撃を受けて吹っ飛ばない者がどれだけいるというのだろうか。


「ふん、貴様らでは俺を殺す事は出来ん残念だな」


 蘇生した魔人エーケンはアレン達を嘲る。だが、アレン達の中にその挑発に乗るような者はいない。

 魔人エーケンの意図は見え透いていた。つまり何度でも蘇り、こちらの戦意を削ごうというのが魔人の意図であるとアレン達は思っていた。


 元々、アレン達は魔人が一回斃されたぐらいで蘇るのは想定していたので、むしろ蘇らなかった方が驚いたことだろう。


 アレン達は、魔人の復活を、術によるものであることを想定している。おそらく絶命する瞬間に発動する類の術だ。最初の攻防で、アレン達がつけた順番とは逆の順番で怪我が消えていった事から、ひょっとしたら『時を巻き戻す』ものか『自分の身に起こったことを無かった事』にする術なのかもしれない。

 まぁ、そういう術が本当にあるのか分からないし、魔術とは突拍子もないものに思えるが、『ことわり』というものがあり、それから逸脱したものは存在しないのだ。


 だが、アレン達にとって、重要なのはそこではない。超高度な術であろうが、程度の低い術であろうが、術の発動には燃料が必要なのだ。魔術であれば魔力、アレンが多用する瘴操術では瘴気というように、絶対に燃料が必要なのは『ことわり』なのだ。


 要するに、魔人エーケンが絶命した瞬間にいくら発動する厄介な術であっても、魔人エーケンの魔力が尽きれば発動しなくなる。となれば、アレン達の対策とは脳筋さながらのものである。つまり、魔人が死ぬまで殺し続ければ良いのだ。


 また、デスナイトに刺し貫かれたケガが塞がったのは、傷の治りがほぼ同時だった事から単なる再生能力、もしくは治癒魔術であると思っていた。デスナイトを薙ぎ払ったあとに塞がったケガはほぼ同時に塞がったからだ。


「何度も何度も殺されたいなんて…本当にお前は自虐的だな。普通は一回で終えたいと思うものなんだがな」


 アレンの言葉に魔人は固まる。


「ああ、お前ら魔人って勘違いしてるよな」

「な、なんだと…」

「お前達は世界の『理』から逸脱した存在だと思っていると言う事だ」

「俺は人間を超えた存在だ!!」

「そう…魔人は『人間』を超えた存在と言えるかもな」

「そうだ!!俺は人間を超えたのだ!!誰も俺を殺す事は出来ん!!」


 魔人エーケンはアレンの言葉に過剰に反発していた。


 『なぜこの小僧達は俺を恐れないのだ』という思いが魔人エーケンから冷静さを失わせている。

 対してアレン達は冷め切った目を魔人に向けている。


「…はぁ、でも別にお前は『理』を超えた訳じゃないだろ」

「な…」

「お前が魔人となったのは儀式を行ったからだ。儀式によって魔人に変貌した。その儀式の根幹にあるのは魔術だ。つまりお前は人間の理から魔術の理へとシフトチェンジしただけなんだよ。加えて言わせてもらえば、生者の理からも逃れていない」

「…」

「死ぬんだよ。お前は人間と同じように生物である以上な。俺達は生者の理ではないアンデッドを相手にしている…そのアンデッドでさえ俺達は恐れない」

「…」


 アレンの言葉に魔人エーケンは答えない。いや、答えられない。


「その俺達が生者の理である魔人ごときを本当に恐れると思っているのか?」

「な…」


 アレンの言葉に魔人エーケンは絶句する。アレンの考えは異常と言って良いだろう。


『魔人』という存在はそんなに軽い存在ではない。だが、このアレンは「魔人も所詮は生物」と割り切っているのだ。


「さて…」


 アレンの言葉に魔人エーケンは身構える。


「対策と言うほどのものではないが、俺達のお前の蘇生能力への対処は『お前が蘇らなくなるまで殺し続ける』というものだ」


 アレンが魔人エーケンに発した言葉は、残酷なものである。魔人エーケンはまたも言葉を発することが出来ない。


「じゃあ…続けるか」


 アレン達はそう言うと、魔人エーケンへの攻撃を開始する。



 安易な引き延ばしと思われるかもしれませんが、ご容赦ください。


 まぁネタをひねり出すために、時間稼ぎの面があることも否定できない自分が悲しい…。


 ということで、厳しいツッコミはなしでお願いします。

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