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呪珠②

 いつもの戦い方と異なっているので、グダグダという印象になっているかも知れませんが、ご了承ください。

 アレン達が物陰に隠れながら侵入者に近づく。


 残りのアンデットを送ったところ、同じ場所で倒されているところから、移動をしていないようだ。


 向こうがこちらの動きを掴んでいる可能性も十分にあるが、とりあえずアンデットが倒された場所まで行ってみることにしたわけだ。


 

 十分に注意深く近づいているところに、スケルトンソードマンとアレン達は遭遇した。アレンとフィリシアは剣を抜き、一気に斬りかかる。


 最小の動きと音でスケルトンソードマンをアレンとレミアは葬る。アレンがスケルトンソードマンの剣を持つ右腕を切り落とし、フィリシアが胸の核を剣で貫く。一糸乱れぬ連携のもと、スケルトンソードマンは消滅していく。


「ぎょぎょぎょげぇぇぇっっぇぇ!!!!」


 アレンとフィリシアの耳に不快な声が入ってくる。


「…しまった、フィリシア、失敗だ」

「これは迂闊でした」


 二人は失敗を悟った。声の主は【クライ死霊レイス】だ。このクライ死霊レイスは、自然発生する死霊レイスと違って、死霊術によって生み出された死霊の形をした瘴気である。


 【クライ死霊レイス】は戦闘用ではなく、侵入者を知らせる警報装置の様なものである。紐に引っかかれば鳴る鳴子のようなもので、今回の場合、スケルトンソードマンが紐で【クライ死霊レイス】が鳴子にあたる。


 どうやら、相手は先程のスケルトンが自然発生したものではなく、召喚されたものであることを気付いていたため、予めアンデットを召喚していたらしい。


「フィリシア、どうやら相手はかなりの術士のようだぞ」

「そうですね、こちらが情報を用と動いていると同様にあちらも探っているとは…」


 アレンは一時撤退か勝負か迷う。一時撤退すればこちらが安全を確保し、また準備をする事もできるが、それは悪手であるとアレンは考えた。こちらが準備をするというのなら、当然あちらも準備を整えるだろう。

 この瘴気の満ちる国営墓地で、瘴気を大いに活用する死霊術の使い手が次の一手を打つ可能性があるのは危険だと判断せざるを得なかった。


「フィリシア、しょうがない。この段階では真っ向勝負しかない」

「しょうがありませんね。これ以上、後手に回るわけには行きませんので、勝負に出ましょう」


 アレンとフィリシアは真っ向勝負に出ることにする。


 【クライ死霊レイス】を剣で切り裂き、耳触りな言葉を止めると。アレンは両手を胸の前に掲げ、瘴気を集める。拳大の瘴気の塊が5つ生まれた。それからすぐに拳大の瘴気の塊は膨張し、人型へと姿を変える。女性の姿に妖精のような羽を付けた等身大の彫刻、『闇姫』だ。


「いけ!!」


 アレンの声に、闇姫達は四方へと飛ぶ。目的は周囲に展開しているであろう、敵の召喚したアンデット達だ。

 アレンの予測ではこのあたりに放たれているアンデットは非常に弱いだろう。ただし、【クライ死霊レイス】とセットになっているはずだ。おそらく術者の近くにはそれなりのアンデットが配置されていることだろう。


 もはや奇襲は出来ない以上、先手を打つ必要があった。


 アレンは再び両手を胸の前に掲げ、瘴気を集め始める。拳大の瘴気の塊は再び膨張し、人型へと姿を変える。

 人型となった瘴気はアレンの身長よりも頭一つ分高い、均整のとれた体格をしており、全身鎧に身を包み、身長以上の斧槍ハルバートを持っている。


「アレンさん、これなんです?初めて見ますがアンデットじゃないですよね」

「ああ、これはさっきの闇姫達と同様、俺の作った彫刻だ」

「名前はあるんですか?」

「ああ、とりあえず『くるい』って名前にした」

「狂って禍々しいですよ」

「まぁ、こいつは闇姫と違う点があってな」

「?」

「こいつ、最初に出した命令を達成するまで手当たり次第に敵味方関係なく攻撃する」

「どうして、そんな危なっかしい設定にしたんです?」

「いや、こいつ、元々、撤退用に作ったんだ。こいつが暴れている間に逃げ出すのが、元々の使い方なの」

「それを相手にぶつけるという事ですか?」

「ああ、おそらく上位のアンデットが相手の周囲にいることだろうから、そいつらを少しでも弱らせてくれればいいと思ってさ」

「まぁ…かなり有効な手段だと思いますけど、なぜ一体だけなんです?」

「実はさっき、闇姫を五体作ったろ、そしてここでもう一体作った」

「なるほど、一度に製作できる彫刻は6体が限度というわけですね」

「ああ、それ以上になるとコントロールがきかなくなるんだ」


 アレンが言うと、フィリシアも納得したようだ。


「行け!!魔術師を斃せ!!」


 アレンが命令を下すと、狂は一声雄叫びを上げると斧槍ハルバートを頭上に掲げ、突っ込んでいく。


「ぎょぎょげぇぇぇっっぇぇ!!!!」

「ぎょぎょぎょげぇぇぇっっぇぇ!!!!」

「ぎょぎょぎょげぇぇぇぇ!!!!」

「ぎょげぇぇっぇぇ!!!!」


 周囲の至る所で、クライ死霊レイスの叫び声が起きている。どやら闇姫達が周囲の弱いアンデット達を駆除しているようだ。


「さて、とりあえず一手を打ってみたけど、上手くいくかな?」


 アレンは独りごちる。


「アレンさん…」

「わかってる」


 フィリシアの声にアレンも剣を構える。アレンとフィリシアはいつのまにかデスナイト6体に囲まれていたのだ。

 ここまでアレンとフィリシアの二人に気取られることなく接近を許すと言うことはありえないことだった。恐らく相手はアレン達の周囲にデスナイトを召喚したのだ。最初のスケルトンソードマンを斃した場所にアレン達がいることを読んでデスナイトを召喚したのだ。


「やれやれ…済まないフィリシア、俺のミスだ」


 アレンは、闇姫と狂を作成し放つという攻撃を行ったが、反撃を想定していなかったのだ。アレンは自分の迂闊さに自分で自分に腹が立った。自分の迂闊さがフィリシアを危険に陥らせたことが許せなかったのだ。


 もちろん、アレンとフィリシアにとってデスナイト6体など片手間に倒せる相手であるのは間違いない。だが、今回はたまたまデスナイトだっただけで、ここに遠距離で攻撃する術であったら、もしくは自分達では対処できないようなアンデットだったら自分だけでなくフィリシアの命を失わせる結果になったかも知れない。


 そのアレンの想いをフィリシアは正確にわかっていた。


 フィリシアは静かに微笑みアレンに優しい声で言う。


「ふふ、アレンさん、あなたのミスをフォローするのが私、いえ私達の役目ですよ。私は愛する方に頼られるのは嬉しいです」


 『愛する方』と言われ、アレンは急に気恥ずかしくなる。もちろんそれ以上に嬉しいという気持があった。


「フィリシア…」

「アレンさん…」


 二人の甘い世界が展開されそうになったが、状況がそれを許さなかった。デスナイト6体が突っ込んできたからだ。


「もう!!せっかく良い雰囲気だったのに!!」


 珍しくフィリシアが怒ったような声を上げる。だが、状況を考えればデスナイトに囲まれている状況で甘い雰囲気をだす、アレンとフィリシアの方こそ責められるべきだろう。


 フィリシアは剣を抜き、向かってくるデスナイトの二体を斬り結ぶことなく核を切り裂き消滅させる。


 消滅させたデスナイトに見向きもせず、残りのデスナイトを駆除にかかる。振り下ろされるデスナイトの剣をフィリシアは最小限度の動きで躱し、同時に突きを放つ。フィリシアの突きは正確にデスナイトの核を貫き、デスナイトは消滅する。


 フィリシアの攻撃は止まらず、次のデスナイトを剣ごと叩き斬る。当然核を狙っての斬撃だったのだが、デスナイトは防御のために剣で受けたのだ。だが、理不尽としか言えないようなフィリシアの斬撃は剣ごとデスナイトを両断する。


 フィリシアが四体のデスナイトをほとんど一呼吸で斃したときに、残りのデスナイト2体はアレンが斃していた。


 アレンは、フィリシアがデスナイトをあれだけあっさりと斃す、フィリシアの技量に素直に感嘆した。


「フィリシア、いつもよりも剣の冴えがすごかったな」

「早く斃せば、ひょっとしたら続きができるかなと思ったんです」


 フィリシアの返答にアレンは苦笑する。フィリシアと甘い空気になるのは珍しかったので残念なのはアレンも同じだった。が、状況的にそれは後回しにせざるを得なかった。


「まぁ、とりあえず続きは後でということで…」

「はい、もちろん冗談ですよ」


 アレンの問いにフィリシアは恥ずかしそうに笑う。



 現段階で相手の一手を払いのけ、こちらの一手は継続中だ。まだリードをしているよなとアレンは思い、次の相手の攻撃を避けるために移動することにした。


 ちょっと戦闘がいつもの爽快感がないかもしれませんが、感覚的には『空母戦』のような感じで書いています。といっても最終的には直接対決になるつもりなんですけど、だったらさっさと直接対決しろやという厳しいツッコミはご勘弁ください。

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