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補充Ⅰ⑤

いつもの倍近くになりました。二つに分ける事も考えたのですが、試しにこのまま上げてみます。

 制圧はあっさりと終わった。


 あまりにもあっさりと終わったために、アレン達は逆に不安になったぐらいである。元々、質の悪い盗賊を遠慮なく使い潰せる駒にするのが目的だったが、カースヴァンパイアがかしらとする吸血鬼の盗賊団だというので、戦力的に期待できると思っていたのだが、ふたを開けてみれば人間のならず者達となんら変わりなかった。


 アレン達からすれば、まことに期待はずれな盗賊団だったのだが、こればかりは盗賊団だけに責任を負わせるのは酷というものだろう。

 なぜなら、アレン達の戦闘力が高すぎたからだ。アレン達からすれば吸血鬼の盗賊団も人間の盗賊団も相手にならない事に変わりなかったのだ。もし、同じ人数で吸血鬼の盗賊団と人間の盗賊団が戦えば、吸血鬼の方に軍配が上がることだろう。


 アレンは戦闘を終えて、すでに駒となった者達を呼び寄せ、倒れてこんでいる盗賊達を建物外に集める。


 数は17、その中には盗賊団のかしらも含まれている。男達は自分達が決して敵わなかったかしらがあっさりと敗れていることに驚愕する。

 アレン達が強いのはわかっていたが、あまりにも強すぎたため、逆に正確に把握できていなかったのだ。ところが、自分達にとって強さ、恐怖の体現していたかしらがあっさりとやられていたため、アレン達の強さ、恐ろしさをようやく実感したのだ。


「おい、お前ら」


 アレンの声かけに駒となった男達はビクッと震える。アレンはその様子を見ても何ら驚かない。駒がいくら恐れようと正直、何とも思わないのだ。


「こいつらに水をぶっかけて目を覚まさせろ。時間を無駄にさせるな」


 アレンの言葉を聞いて、何人かの男達が水を汲みに走る。おそらく、彼らの中で最も真摯な態度で応じた命令であっただろう。もはや、アレン達の言葉に反抗する事は考えるだけで恐ろしかった。


「アレン、これからどうする?」


 レミアがアレンに尋ねる。


「そうだな…」


 アレンが言葉をにごす。とりあえずはこいつらを新しい駒にして、ジャスベイン家に連れて行く。そして、駒として国外に連れて行く許可をもらう。その際に、ジャスベイン家といくつかの条件を話し合うことになるだろう。

 話し合う条件は、逃げ出した場合 (可能性はほぼゼロ)の罰則や、日頃の扱いなどだだと思う。何しろ、アインベルク家に送り込まれてきた暗殺者などと違って、こいつらはエジンベート王国のお尋ね者どもだ。それなりの手続きがいるのは間違いない。


「とりあえす、事務処理をしなくちゃいかんな。そういう面ではこの駒達は面倒くさい奴らだな」

「そうね、それじゃあ、ルカ=エリオンは私が捕まえてこようか?」


 レミアがもう一人のターゲットであるルカ=エリオンの捕縛について述べる。レミアなら問題なく捕縛することが出来るだろう。だが、アレンはその要求を断る。


「いや、俺に行かせて欲しい」

「アレンが一人で行くの?」

「ああ、直にあって駒にするか、雇うか決めたいと思う」

「ようするに面接するわけね」


 アレンは直にルカ=エリオンとやらの人物を図るつもりだった。といっても、盗賊の協力者の傭兵とのことで、大して期待していない。

 たとえどのような理由があろうとも犯罪者に協力して不幸を量産するような奴にアレンが高い評価を下すことは考えづらかった。


「ああ、ルカ=エリオンがどんなご高説をたれてくれるのかちょっと楽しみでもある」

「それを論破したいというわけね。あんまりいじめちゃ可哀想よ」


 レミアが笑いながらアレンに言う。


「まぁ、善処するさ。さて…」


 水を汲んできた男達がアレン達の元にやってきたため、そこで、話を一旦きり、アレンは男達に命令する。


「そこで寝ているクズ共に水をぶっかけて目を覚まさせろ」


 一辺の慈悲も感じられない声に男達は顔を青くして気絶している男達に水をかける。水をかけられた男達は気絶から覚めたようだが、アレン達にやられた傷が痛むのだろう。途端にうめき声を上げる。

 痛みで動けない男達に、アレンの容赦ない声がかけられる。


「目が覚めたかクズ共、俺はアレンティス=アインベルク、ローエンシア王国の男爵だ」


 アレンの自己紹介に男達は敵意を向ける。自分達を痛めつけた者達に対して向ける目としては普通の事であるが、この場合は悪手以外の何物でもない。なぜならアレン達は敵に対しては一切容赦しない。特に無辜の者に害を与える強盗、盗賊などの犯罪者に対してはさらに容赦するつもりはない。


「お前らは今この時より、俺の駒となる。いっとくが、これは覆らない。ジャスベイン家からの許可もすでにもらっている」


 男達が反応するよりも早く、アレンは絶望そのもの言葉を紡いでいる。


「お前らのようなクズに反省など必要ない。被害者への謝罪も必要ない。なぜなら、お前らには何の価値もないクズだからだ。そのクズのお前らの謝罪なんかに何の意味がある?お前らの謝罪は被害者にとって、ただひたすら不快なものだ。ならお前らはひたすら納得のいかない惨めな死を味わうだけしか、被害者の溜飲をさげる方法はない」


 アレンのあまりな言い分に男達が反論しようとするが、アレンがすさまじい殺気を男達に放ったことで言葉は封じられた。男達が今まで感じたことがないようなすさまじい殺気、死を身近に感じるほどのものである。


「俺達がクズなのは認めるが、お前はそんなに偉いのか!?」


 かしらがアレンに向け叫んだ。それに対して、アレンの返答はナイフの投擲である。アレンの投擲したナイフはかしらの右太股に突き刺さる。


「がぁぁぁっぁ」


 かしらの絶叫が周囲に響く。容赦なくアレンは痛みに呻くかしらにもう一本のナイフを投擲する。今度は左腕にナイフが突き刺さる。

 新たな絶叫が響くが、アレンの目に一辺の慈悲も感じられない。ひたすらゴミを見る目だ。


「誰がしゃべって良いと行った?さっきも言ったろ。お前らは単なる駒だと」


 アレンはどこまでも容赦なく男達に接している。


「ぐぅぅ…」


 かしらは刺さったナイフを引き抜く。その目には敵意があるが、同じくらい恐怖の色が浮かんでいる。アレンの態度から話し合いなど最初から考えていないことは明らかであったし、先程のすさまじい殺気は未だに消えていない。


 その時、アレンだけでなく周囲にいる少女達からもすさまじい殺気が放たれる。アレンだけでなく周囲の少女からも同等の殺気が放たれた事で、男達の心は完全に折れる。


「ようやく自分達の立場がわかったようだな」


 アレン達が放っていた殺気は消えたが、震えは一向におさまらない。ただひたすらガタガタと震えがとまらない。


「それじゃあ、フィアーネ、頼む」


 アレンの呼びかけにフィアーネがにこやかに笑い、魔法陣を展開させる。


 アレン達は盗賊団を取り逃がすことなく全員を駒とすることが出来たのだ。




------------------


 ルカ=エリオンはいつものように酒場で酒を飲もうとしていた。しかも、今日は命の危険もなく金が手に入る事が確定するという喜ばしい日だった。


 どこかの貴族の令嬢がわずかな供回りで、わざわざ不幸になるために盗賊達が根城にしている森の中を通っていく。自ら不幸になりたいというアホを売るのにルカとしては何ら躊躇がなかった。


 ましては盗賊に情報を売ったのは貴族だ。貴族がどんな酷い目に遭おうがルカは構わない。


 ルカは貴族が大嫌いだった。


 別に貴族に家族を殺されたのでも、愛した女を奪われたわけでもない。あの苦労知らずでのうのうと生きている姿を見ると反吐が出る。たまたま貴族に生まれただけで、楽に生きれる奴らが心底憎たらしかった。


 ルカはそのため、たびたび貴族の情報を盗賊に売った。大抵の盗賊は数回、貴族の情報を売ると会わなくなった。国から討伐されたり、害した貴族の血縁者が雇った傭兵などにより殺されたりしたためだ。


 今回、このジャスベイン家の領地に流れ着き、新たな盗賊に出会い、様々な情報を盗賊に売った。ルカが売った情報の報酬として少なくない金をもらい、今や立派な副業となっている。


 今回の貴族令嬢を売った金もかなりのものになると思われるため、つい口元が緩んでしまう。


「よぉ、ルカ、ご機嫌だな」


 ルカに声をかけてきたのは傭兵仲間のアジスとカルムだ。この二人もルカ同様に美味しい情報を盗賊や犯罪組織に売りつけることを副業としている。


「ああ、今日の仕事でたんまり金が入る予定なんだよ」

「ほぉ~どっちだ?」


 アジスがニヤニヤしながら聞いてくる。ここでいうどっちとは「傭兵稼業」か「情報屋稼業」かという事だ。


「裏の方さ」


 ルカが答えると、アジスとカルムはニヤっと嗤い、ルカに酒をねだる


「ほぉ~あやかりたいね~」

「一杯おごってくれや、兄弟」

「ああ、いいぜ」


 ルカは快くアジスとカルムに酒をおごるために店員を呼ぶ。店員に酒とつまみを注文する。しばらくして注文が届くと三人は小規模な酒盛りを始めようとする。


「ルカ=エリオンさんですか?」


 そこに、ひとりの男が声をかけてきた。年の頃は二十歳にはまだとどいていない、少年と呼ぶ方が相応しいだろう。スッキリした容姿をした男だが、見覚えはなかった。


「なんだ、坊や?」


 訝しげにルカが声をかけてきた少年に問いかける。少年はニコリと嗤いルカに返答する。


「いえ、ルカさんにお礼を言おうと思って声をかけさせてもらいました」

「お礼?」


 思わぬ言葉にルカは警戒感を強める。見ず知らずの少年にいきなりお礼などと言われれば、何かしら裏があると思うのは当然だった。

 少年はにこやかに笑い、ルカに話を続ける。


「ええ、あなたのおかげで、私は今日、何と駒を33も手に入れました。しかも、さらに3つも駒が手に入る予定なんですよ」


 少年の言葉はルカ達には意味がわからない。駒とは何の事だ?俺に何の関係がある?いくつかの疑問が生じるが、少年に聞くのは何故だが戸惑う自分がいる。自分が何かとんでもない事に巻き込まれている予感がしている。


「駒?何の事だ?」

「私は今、魔族に狙われておりましてね。それに対処するための駒が必要で、このエジンベートに来たんですよ」

「魔族?対処?」

「ええ、そのへんの魔族なら警戒するような相手ではないんですが、今後、どんな奴が出てくるかわからないので、念のために使い勝手の良い駒が必要だったんです」

「それと俺に何の関係があるんだ?」


 ルカの声が険しくなる。わけのわからない事をいうこの少年に苛つきを隠せなくなってきたのだ。


「だから、お前が盗賊を紹介してくれたおかげで、あいつらを駒に出来たって言ってんだよ」


 少年の口調が突然変わる。ルカに対する挑発的な口調だ。


「お前がわざわざ盗賊に情報を売ってくれたおかげで、大分手間が省けたんだよ」

「てめぇ…何者だ?」

「ああ、俺はアレンティス=アインベルク、ローエンシアの国営墓地の墓守だ」

「墓守だと?」

「ああ、お前は盗賊の協力者だが、役に立ったから特別に駒にするか、使用人にするか確かめようと思ってな」

「てめぇ、俺を甘く見るなよ」

「ああ、ついでにそっちの二人も駒か使用人か選ばせてやる」


 アレンはアジスとカルムにも冷たく言い放った。


「な…」

「てめぇ…」


 二人の声が自然と低くなる。


「何をそんなに不機嫌になってんだ?おまえらの売った人達は、選ぶ事すら出来なかったんだぞ」


 アレンの言葉にルカはふんと鼻で笑う。他の二人も同様だ。


「だからなんだ?そいつらが弱かっただけのことだろうが」


 ルカは嘲るようにアレンにいう。


「お坊ちゃんにはわからないだろうけど、世の中は弱肉強食なんだよ」


 ルカの言葉に、二人が同調する。


「決定だな…」


 アレンの言葉に三人は目を細める。


「お前らは駒決定だ。使い潰すことにした」

「あん?」

「まさか、自分達で駒になっても構わないというとは思わなかったな」

「?」

「弱肉強食…そのフレーズが出ると言うことは、お前らは自分が肉になる事も当然、想定してるんだろうな?」

「あ?」

「お前らにとって弱肉強食は真理なんだろ?じゃあ、お前らよりも遥かに強い俺のために喜んで肉になると言うことだろ?お前ら如きが強者の顔をするなよ。本業で成り上がることが出来ないから、人を不幸にする情報を売って日銭を稼いでいるだけのクセして強者面するのは止めろよ。こっちが恥ずかしくなる」


 アレンの挑発は止まらない。三人は当然ながら、反論しようと口を開きかける度に、アレンが『黙って聞いとけクズが!!』と一喝するので、三人は喋れない。いや、封じられていた。

 

「さて、お前らが本業で成り上がれない程度の腕前ということはわかってる。一体どれほど弱いのか確かめておかなくてはならないな。ああ、安心しろ俺は手加減はわりと得意な方だ。蚊を潰さずに叩くことも最近では失敗しないからな」


 お前らなど蚊と大差ないというあまりの侮辱に三人は色めき立つ。


「てめぇ黙って聞いてれば!!」

「ガキが痛い目みねぇとわからねぇらしいな」

「調子にのるなよガキが!!」


 三人の傭兵の怒気に周囲の者達の会話は止まる。いや、もうずっと前に止まっていたのだが、三人が怒気を発し始めたので、どんどん物見遊山的な空気になっていく。


「まぁ、ここで騒ぎを起こすと店に迷惑かかるから外でやろうか?」

「後悔すんなよガキが!!」

「ぶっ殺してやる」

「いい度胸だな」


 アレンと三人は店外で決着をつけることになった。



 店の外に出たアレン達は道の真ん中で対峙する。ただ事でない雰囲気に周囲に人が集まり始める。もちろん、酒場にいた者もこの喧嘩を見ようと野次馬の中に含まれている。


「おい、ガキその腰に差したもの使ってもいいぞ」


 アジスが嘲るようにアレンに武器の使用を勧める。


「まぁ、俺らは使わねえがな」


 カルムがこれまたわかりやすい挑発を行う。周囲からは年端もいかぬ少年を三人のならず者が襲っているように見えるだろう。


「ほぉ~いいのか?それじゃあ、お言葉に甘えて」


 一方アレンがそんな美味しい条件を出されて飲まないわけがない。アレンは躊躇いなく剣を抜く。アジスとカルムは正直あてが外れた事に舌打ちする。本来このようなあからさまな挑発を行えば、むきになると思ったのだが、アレンはあっさりと美味しすぎる条件をのんでしまった。


「さて…始めるか」


 アレンは静かに言うと、すさまじい殺気を三人に放つ。その殺気のすさまじさは三人が今まで体験したことのない、圧倒的な恐怖を三人に与える。今まで幾度も戦場に出たが、そんなものは、お遊びだったと思わされるほどの殺気だ。


 あまりの殺気に三人は動けない。


 死の恐怖に三人は囚われてしまい、動けなくなってしまった。物語などではここで、相手が降参を促し、戦いは終わるというのがお決まりなのだが、アレンは降参を促したりはしない。

 むしろ、三人が恐怖に縛られ動けない事をこれ幸いと攻撃を開始する。


 アレンの動きは洗練されたものだった。音を発することなく一瞬で間合いをつめ、剣を振るう。

 最初にアレンの剣に切り裂かれたのはアジスだ。死の恐怖のために動けないアジスの両太股をアレンの剣が切り裂いたのだ。足を切られたアジスは蹲った。まるで罪人が悔いて首を差し出すような格好だ。アレンは容赦なくアジスの顔を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたアジスは空中で一回転し、地面に叩きつけられる。

 人間だったら即死だっただろうが、吸血鬼だったのが幸いしたのかアジスはかろうじて生きている。だが、それが幸か不幸かは周りの者には判断できない。


 動けないアジスが容赦なくやられた事で、ルカとカルムは明らかに狼狽する。アレンは剣の切っ先をカルムに向ける。その意図は明らかだった。その意図を察したカルムの顔色は一気に青から白に急激に変化する。


「ま、待って…」


 カルムの言葉が終わる前にアレンはまたも動く。カルムは手を前に出し、アレンに攻撃を待ってもらおうとしたが、アレンはまったく心動かされることなくカルムの右手首を容赦なく切り落とす。

 カルムの切り落とされた右手首が地面に落ちるまでのわずかな時間にアレンは剣の柄でカルムの頬を殴りつける。形容しがたい音とともにカルムは吹っ飛ぶ。その際に血と歯、牙を撒き散らして飛んでいくところから、これからの食事の楽しみが半減した事は間違いなかった。


 ルカはここに来て、ようやく動けるようになる。仲間二人が容赦なくやられた事で、ルカは『動かなければやられる』と踏ん切りがついたのだろう。最も、アレンがルカの覚悟を知れば、『今更、遅い』と見下す材料にしかならなかっただろう。


 ルカは腰に差している剣を引き抜き、アレンに斬りかかる。アレンは剣を振るいルカの右手首を切り落とす。ルカのふるった剣は切り落とされた右手首と共に明後日の方向に飛んでいく。周囲の野次馬達はさすがは吸血鬼と言ったところか難なく躱す。


 自分の右手首が切り落とされた事に気付いたルカの口から苦痛の声がもれる。が、すぐに苦痛の声はかき消えた。アレンが左手でルカの襟をつかみ、自分の側に引き寄せる。引き寄せたルカの顔面にアレンの右肘が叩き込まれる、またも形容しがたい音が鳴り響く。よほどの音だったのだろう、周囲の野次馬がビクッとした仕草を行ったのがその証明となるだろう。


 顔面に肘を叩き込まれたルカはその場に膝から崩れ落ちる。


 圧倒的な実力差だった。周囲の野次馬達もあまりの実力差に、やられた三人に同情したほどだ。


 ほどなく野次馬の中から、治安維持部隊が出てくる。周囲の野次馬達はアレンが治安維持部隊に拘束されると考えていた。そして、先程見た戦闘力から抵抗すればどれほどの被害になるかと心配になったが、それは杞憂だった。


 治安維持部隊の隊長と思われる男が、アレンに一礼したからだ。


「アインベルク卿、ご協力感謝いたします」


 周囲の野次馬達は事の成り行きを見守っている。


「これで、領内を騒がせていた盗賊団の関係者はすべて捕縛する事が出来ました」


 やけに大きい声で治安部隊の隊長はアレンに告げる。もちろん、事前に打ち合わせした結果だ。


 もし、ここまでの騒ぎを起こしておきながら、アレンに何もとがめがなければジャスベイン家の統治に不安が出る者が出る者が出るかも知れない。ところが、治安部隊への要請があったということにすれば、一応の筋が通るわけだ。もちろん、『なんで治安部隊が見ず知らずの男に協力要請するんだ?』という疑問は出るだろうが、何もしないよりかはマシというわけだ。


 ルカ達三人は治安部隊に連行されていく。この後、取り調べを受けてアレン達に駒として引き渡されることになっている。


 アレンにとって恋人が三人できるという予想外のことがあったが、とりあえずエジンベートでの目的は十分に果たした。


 これから色々やることはあるが、目的を果たした以上、ほっとしたのも事実である。


 そして、もう一つの大きな案件が残っているが、それはローエンシアに帰ってからだ。



 もう一つの大きな案件に不安はあるが、とりあえず今日は帰ろうとジャスベイン家にアレンは向かう。ジャスベイン家で待つ三人の恋人の顔を思い浮かべると自然と足が速くなるアレンであった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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