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喜色

ちょっと短めです

 タタタタタタッ……バン!!


 アディラは、王宮の自室に飛び込み、そのまま自分のベッドにダイブする。


 ボフン!!と柔らかいマットがアディラの体を受け止める。



 先ほどのアレンとの茶会を終え、アレンを見送ると、アディラは自分の部屋に駆け込んだのだ。自室までの道で口元を隠していたのは、ついつい口元が緩んでしまうからだ。


 ベッドの上で、アディラはクッションを胸に抱き、転げ回った。


「くふふふふふふふふ~やったわ♪ アレンお兄ちゃんにアディラと呼ばせることができたわ♪」


 アディラはニマニマととても王女とは思えないほど緩んだ表情を浮かべていた。アディラにしてみれば男爵家を継いでから、アレンは、公私の区別なく『王女殿下』と呼ぶようになったのだ。いくら昔のように『アディラ』と呼んで欲しいと頼んでも頑として聞かなかったのだ。

 その頑固なアレンに『アディラ』と呼ばせる事に成功した、この事実はアディラにとって勝利以外の何物でもなかったのだ。


 アディラはアレンの性格を熟知している。アレンの行動原理の一つに論理的な思考を好むというのがある。別の言い方をすれば理屈っぽいともいえる。

 なら、理屈で『アディラ』と呼ばせるようにすればいいのだと考えたアディラは、作戦を練った。その作戦がアレンに、何とか『公私の別』というキーワードを使わせるというものであった。


 あとは先ほどの会話の流れに持って行くことで、認めさせたというわけだ。


「まだよ!!アディラ!!この程度で満足しちゃダメ!!」


 転げ回っていたアディラはガバッと頭を上げて宣言した。


「お兄ちゃんの隣の席に私が座るのが私の目指すゴールよ!!」


 今のところ、アレンに女性の影はない。だが、それは、アレンの魅力に気付いていないにすぎないのだ。だったら早い者勝ちでさっさとアレンの隣に座ってしまえば良いのだ。


「いいのお兄ちゃん……私、お兄ちゃんが私のことどう思っているか知りたい」

「ああアディラ……もう俺は、自分に嘘をつくことはできない」

「お兄ちゃん……。まさか……それって……」

「ああ、俺はアディラ、お前を誰よりも愛している」

「お兄ちゃん……嬉しい」

「アディラ……」


 アディラはベッドでもだえながら、一人二役でアレンからの告白を熱演している。はたから見ると、なんか残念な王女様である。


 そんな寸劇から一転……


「ぐへへへへへ~」


 と笑いながら、ベッドを転がる。


 絶対に人に見せれない状況である。


 


 アディラがフィアーネの存在を知るのは、これからすぐの事である。


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