補充Ⅰ④
今回は2話同時投稿でしたので、昨日の続きは前話になります。
作戦変更が告げられてからのフィアーネ達の切り替えは早かった。
アレンが男の両足を蹴り砕き、顔面に容赦のない蹴りを見舞ってから、数瞬の自失から戻る間もなく男達は、三人の美少女達に容赦ない攻撃を受けている。
一人の男は、フィアーネに肋骨を折られ蹲っているところに容赦ない蹴りを見舞われ、宙を舞った。
一人の男はレミアの双剣に腹を刺し貫かれた。
一人の男は、フィリシアの剣により、左手首を切り落とされ、右太股を剣で刺し貫かれた。
三人はアレンが『遠慮する必要はない』といったが、ここで命を奪うつもりはなかった。この男達は戦闘力、人格的にもまったく見るべきものはない存在だったが、元々、駒として使おうとしていた者達だ。生かしておけばアレンの役に立つかも知れないと思い、三人は手加減をしているわけだった。
ただ、その手加減のレベルが『とりあえず生きとけばいいや』というものだったため、男達にとっては何ら慰めにはなっていなかった。
「お前達は逃げる奴がいないか見張れ!!もし逃げれば貴様らにそれなりの罰を加える」
アレンの声が男達の耳に届く。男達は契約によって完全にアレン達の駒と化している。アレン達の不利益になる事は出来ないようにしている以上、男達が自ら盗賊達を逃すという事はありえない。
「さっさと行け!!」
アレンの叱咤に男達は行動を開始する。自分達のアジトだ。当然、どこから逃げるかなどというのは知ってて当然だ。逆に言えば、どこで見張れば良いかもわかっているのだ。
アレンが簡単すぎる指示を出したときには、すでに三人にやられた盗賊達が横たわっている。
ほんのちょっと目を離しただけで、三人はもうすでに建物内に入っていた。建物内から悲鳴、絶叫が響いているので、間違いがないだろう。
アレンも自分も建物内に入ろうとしたところ、二階から一人の盗賊が投げ出される。男は当然、受け身もとれずに地面に叩きつけられる。
「うわぁ~、もう制圧しそうだな」
アレンがそう独りごちたのも仕方がない。男達が配置につくまえに全てが終わってしまいそうな勢いだった。
「いかん、いかん、俺もいかないと」
アレンは、少し間の自失から自分を取り戻し、建物内に突入する。
建物内に入ったアレンが見たものは、荒れ狂う暴風に徹底的に破壊された室内と苦痛にうめく盗賊達だった。
「た…たす…」
「いてぇ…いてぇよぉ…」
「が…がが…」
アレンは苦痛にうめく盗賊を無視し、戦闘が可能なものを探し始める。
廊下を進んでいるとどこからか殺気がする。アレンはその気配を察知すると壁に拳を叩き込んだ。アレンの拳はアジトの壁を貫通した。アレンの拳に板を打ち抜いた感触とは別の生き物を殴った感触が伝わる。
拳を壁から引き抜くと、気絶した男が隠し部屋から転がり出てきた。気絶した男が隠し扉を押して出てきたのだ。アレンは男が出てきた隠し部屋を見ると、その隠し部屋は人一人がようやく隠れられるぐらいの部屋だった。他に誰もいないことを確認すると、気絶した男の両足を念のためにアレンはへし折っておいた。
その痛みのために男は意識を取り戻したが、アレンはもう一度顔面を踏み砕き、もう一度気絶させる。
アレンが先を進もうとしたときに、怒号が聞こえる。
しかし…
「てめぇ!!こんな事し…がぁ!!」
あっさりと怒号が中断されたところから、三人のうち誰かにやられたのだろう。声にした方に進むとそこにいたのはフィアーネだった。
「フィアーネ」
アレンが声をかけるとフィアーネは嬉しそうにこちらに向かってくる。一体どれほどの盗賊達を斃したかはわからないが、息一つ乱していないところを見ると、まったく問題ないようだ。
「アレン、一階はもうほとんど盗賊はいないわよ」
フィアーネの声にアレンが「そうか」とだけ答える。
「ボスのカースヴァンパイアはどこにいるのかしら?」
「う~ん、逃げたかな?」
「といっても、周囲は駒達が見張ってるんでしょう?今のところ、逃げたという報告はないからまだいるんじゃない?」
「ぎゃああああああああ!!」
二階の方で絶叫が聞こえる。レミアかフィリシアが盗賊をまた片付けたらしい。二階の制圧も間もなくだろう。
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レミアは二階の部屋に入り、一人の男と対峙している。レミアの足下には一人の盗賊が切り刻まれ血だまりの中に倒れ込んでいる。やったのは当然、レミアだ。レミアは容赦なく襲ってきた盗賊を返り討ちにして部屋の主と対峙しているわけだ。
男は黒髪、黒目の身長190センチほどの長身の男だ。粗末な皮鎧を身につけているところから、盗賊である事はまず間違いない。問題はどの程度の地位にいるかだ。
「てめぇ、何のつもりだ!!」
男がレミアに怒りの声を上げる。その声は気の弱い者ならば気力が折れるかのような荒々しいものであったが、レミアにとってはただうるさいだけの声であり、恐れるに足りないものである。
「え~と、あんたがボスのカースヴァンパイア?」
正直、レミアは問答無用で片付けようともしたのだが、こいつがボスの場合には探し続けることになってしまうので、一応聞いてみたわけだ。
「ああ?てめぇ俺様を知らねえってのか?」
男がドスの聞いた声でレミアを脅しにかかる。この言葉を聞いた段階で、レミアはこいつが目的のカースヴァンパイアであると確信する。となると、さっさと片付けることにする。
「俺様がこの盗賊団の頭だよ」
男は呑気にもまだ、会話を続けるつもりらしい。だが、レミアはそんな話に付き合うつもりは全くないので殺気を隠す。
男は、レミアから攻撃の気配を察する事ができなかったため、話を続けようと口を開く。
男が口を開いた瞬間、レミアは動く。
一瞬で間合いを詰め、レミアは斬撃を頭を名乗る男に斬撃を見舞った。まだ、会話を続けるつもりだった頭は、完全に不意をつかれる。
レミアの双剣はまず頭の顔面を狙う。頭はレミアの斬撃をかろうじて躱す。だが、レミアにとって顔面への斬撃は囮だ。レミアの目的は体勢を崩す事だ。それはあっさりと成功し、頭は顔面への斬撃を避ける事に意識を取られてしまい、レミアの本命である足への斬撃を躱すことは出来なかった。
シュパ…
静かに肉を切り裂く音が室内に響く、レミアの剣が頭の両太股を切り裂く。足を切り裂かれた頭の口から絶叫がほとばしる。
「ぎゃああああああああ!!」
レミアは絶叫を放つ頭に一言、「うるさい」と言い放ち、飛び膝蹴りを頭の口に見舞う。
形容しがたい音を響かせ、頭は口から血と歯、牙を撒き散らしながら横転する。
「はが…はが…はが」
頭は口を押さえ、なにやら呻いている。だが、レミアに攻撃の手を緩めるという選択肢はない。
レミアは、倒れ込む頭の胸を容赦なく踏み砕いた。
ゴギィィィィィィィィ!!
部屋の中に頭の肋骨が砕ける音が鳴り響く。カースヴァンパイアであってもレミアの容赦ない攻撃には耐えることが出来なかった。
頭はレミアに肋骨を踏み砕かれたことで意識を手放した。
こうして呆気ないほど、カースヴァンパイアを捕らえることにアレン達は成功した。
なんか、流れが悪かったですね。ちょっと反省してます。




