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告白②

 今回の話は急展開すぎます…。


 読者の皆様、がんばってついてきていただければと思います。

 来客者のベルノスの名前を聞き、フィアーネはしずかにため息をつく。


 その様子から、アレンはフィアーネが決して、来客者を好ましく思っていないことを察した。

 ということは、アレンと波長の合う人物の可能性は低い、もっと言ってしまえば嫌な奴の可能性が高いのだ。


「あの~公爵閣下、席を外した方が良くないですか?」

「アレン君、何を言ってるんだね? 君はフィアーネの恋人としてフォルドノイスと応対してもらうよ」

「え?」


 ジェラルの言葉にアレンが固まる。


 フィアーネの恋人?


 いや、確かにフィアーネの事は憎からず思っている。というよりも心惹かれているのは間違いない。しかし、すでに恋人として認定されているのには驚いた。


「ちょ…ちょっと待ってください」


 アレンが否定しようとして声を上げるが、ジェラルは意に介さない。いや、確かに人の話に耳を傾けるが、家族に対してのことになると解釈が飛躍的にあっちこっちに飛ぶのがジャスベイン家の家風なのだ。


「ああ、そうか、そういうわけか…」

「そうですよ、旦那様、いくらなんでも失礼ですよ」

「そうだよ父さん、アレン君が怒っても仕方ないよ」

「そうよ、お父様、いくらなんでもアレンだけでなく、レミア、フィリシアにも失礼よ」


 ジャスベイン家の中で一体どのような結論が出たのか、正直な所アレンにはわからない。だが、確実に論理が飛躍したことだけは理解していた。そして、その論理の飛躍の着地点がどこなのか知らなければならない。


「すまなかったね。アレン君、君とフィアーネを恋人なんて言ってしまって…」

「え?あ、はい、それはいいのです」

「そうか許してくれるか。さすがは我が義理の息子むすこだな」


 うんうんとなにかジェラルは納得したように頷いている。恋人どころでない、もはや認識的にはアレンは義理の息子となっていたのだ。


「え?」


 あまりの論理の飛躍にアレンは言葉を失う。ジャスベイン家の論理の飛躍はアレンの予想をはるかに超えていた。


「さて、アレン君、義理の息子の君に迷惑をかけて申し訳ないが、娘につきまとう彼に引導を渡してあげてくれないか?」


 ジェラルがさも決定事項のようにアレンに頼み込む。だが、大変盛り上がっているところに水を差すようだが、間違いをここで正しておかないとさらに困った事になるため、言わなければならない。


「あの公爵閣下、そしてご家族のみなさん、俺の話を聞いてください」


 本来であればもっと丁寧な言葉で話すのだが、動揺のせいだろうかつい素の言葉遣いが所々混ざってしまっていた。


「何かね?」


 ジェラルを始め、ジャスベイン家の面々はアレンの言葉を待つ。


「俺はフィアーネの恋人でも婚約者でも、ましては夫でもありません」


 アレンの言葉は当たり前の事実の指摘であったのだが、その事実は次のジェラルの言葉によってあっさりと切り捨てられてしまう。


「そうか…」

「はい、フィアー…」

「じゃあ、ここで婚約者とすれば解決だな」

「え?」

「旦那様、それではレミア嬢、フィリシア嬢もここで一緒にアレンさんと婚約ということにしてしまえばさらに良いですね」

「え?」


 ジェラルとフィオーナの提案にアレンは「え?」しか返せない。


「でもアディラ王女も婚約者となるのだから、ここで婚約させるのはまずいのではないですか?」


 ジュスティスの冷静な声が発せられる。しかも、出てきた名前はアディラだ。アレンは鸚鵡返しのように言葉を発した。


「え?」

「確かに、アレン君はローエンシア王国に所属してるから、アディラ王女との婚約を優先すべきか…」

「その辺のところはきちんとローエンシア国王と詰めないといけませんね。勝手に婚約させてしまえばやっかいな方向に行く可能性があります」


 確かにアレンが先にフィアーネと婚約し、後からアディラと婚約となれば色々とやっかいな事になりかねない。場合によってはアディラが婚約者のいる男性に手を出したふしだらな女性となってしまう可能性すらあるのだ。


「そうか…確かに…」


 ジェラルが呟く。どうやら納得したようだとアレンが安心しかけたが、味方だと思っていたジュスティスの次の言葉によってアレンは、ジュスティスが味方ではなかったことを思い知らされる。


「しかし、恋人なら法的に何の問題もないでしょう。レミアさんもフィリシアさんも良い機会だからここでアレン君と恋人になっといたらどうだい?」


 あまりと言えばあまりのジュスティスの提案である。この提案を聞いたとき、やはりこの一族はぶっとんでいるということを再確認した。


「いや、それはさすがに…」


 アレンが、ジュスティスの提案を拒否しようとしたが…


「そうね良い機会ね」

「こんな良い機会を逃すわけにはいきませんよね」


 当たり前というか何というか、レミアとフィリシアが同意の意向を示す。


「え?ちょっと…」


アレンの戸惑いの声を置き去りにレミアとフィリシアがアレンに問いかける。不安気な表情を浮かべて…。


「アレン…私じゃダメ?」

「アレンさん…。その…私もアレンさんの恋人にしてくれませんか?」

 

 レミアとフィリシアがすがるような目で見ている。このような目を向けられ断れるような事はアレンには出来ない。たとえ、どれほど間違ったことをしている、道徳上、問題のある行為であると理解していても、アレンには断ることはできなかったのだ。

 だが、ここまで来てもう誤魔化すことは出来ない。何が何でも自分に好意を向けてくれる少女達を幸せにするためにアレンは覚悟を決めた。


「レミア、フィリシア俺はお前達一人を選ぶ事はできない優柔不断な男だが、お前達二人を幸せにしたい。俺の恋人になってくれてありがとう」


 もはやアレン自身も何を言っているか自分自身わかっていない。文法が所々おかしいが、二人には伝わったと信じている。そして、覚悟を決めたアレンはレミア、フィリシアの次に言葉をかけるべき少女を見つめて言葉を発する。


「フィアーネ」

「は…はい!!」


 アレンのフィアーネの問いかけにフィアーネも緊張のためにどもってしまう。フィアーネの顔は熟れたリンゴよりも真っ赤になっている。その様子は可憐な美少女そのものであり、アレンの頬も紅くなるのを止めることはできない。

 恥ずかしい、だがここで引くわけにはいかない。


「俺の恋人になってくれ!!」

「うん」


 フィアーネの返答は短かった。だが、その表情は嬉しさを何万の言葉を用いるよりもアレンに伝えてくれた。

 

 その様子を見て、ジュスティスは声は嬉しそうな声を出す。


「さて、これで目出度く、フィアーネとアレン君が恋人なってくれたわけだ」


 ジュスティスの言葉はやっとまとまったかという感じだ。


「では、アレン君はフィアーネの恋人としてフォルドノイス君を追い払ってくれ」


 次いで発せられた言葉にアレンは来客者がいた事を思い出した。さっきまでの自分ならフィアーネに迫る者がいても根拠がなかった。だが、今は『成り立て』とはいえフィアーネの恋人だ。変な話ではあるが、アレンはこういう段取りを大事にするのだ。


「はい、わかりました」


 アレンの断言に、フィアーネはアレンの恋人になったのだという実感がわいてきた。


「ねぇ、アレン…」


 レミアがアレンに問いかける。フィアーネのために動く様子を見て、自分のためにも同じように動いてくれる事を信じてはいる。だが、レミアはアレンの口から直に聞きたかったのだ。


「フィアーネのような状況になれば私も同じように戦ってくれる?」


 レミアの問いかけにアレンは迷わず答える。


「当たり前だ。レミアお前も俺の大事なヒトなんだ」


 アレンの言葉は何よりもレミアが聞きたかった言葉だった。『嬉しい』レミアの心はその感情で埋め尽くされる。

 そして、アレンはフィリシアに視線を向ける。


「フィリシア、俺にとってお前も大事なヒトだ」

「はい!!」


 フィリシアの心にも『嬉しさ』が満ちていく。




 そして、三人の少女には、この嬉しさをもう一人味わって欲しい同志がいる。


「アレン、アディラにも私達と同じ喜びを与えてあげてね」


 フィアーネがアレンに伝えたのは、もう一人の同志についてだ。アディラだけが今、この嬉しさを味わっていない。そして、それを与えることが出来るのはアレンだけなのだ。


「わかってる。ローエンシアに戻ったら、すぐにアディラに伝える」


 アレンの言葉に三人は安心したように微笑んだ。


 本当はここで、恋人になる予定ではなかったんですが、勝手に自分の中で動き出してしまって、こういう形になりました。

 元々、目指すところがおかしな方向だったのだから、こういう風なぶっとんだ告白になっても仕方ないのかなと思います

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