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勇者⑫

 戦闘描写がかなりエグイです。

 そこの所を注意してお読みください。

 アレンと元勇者一行との勝負の日が来た。


 ジェスベル達は以前の装備と同等かそれ以上の装備に身を包んでいる。フィアーネが協力したという話だった。

 フィアーネ曰く、いざ勝負がついたときゴネるのを防ぐためらしい。どうやらフィアーネの中ではこいつらは都合が悪くなると約束を反故にする卑怯者という認識らしい。


 修練場の周りにフィアーネ、レミア、フィリシアがいる。どうやら元勇者一行がアレン相手にどれだけ持つかの賭をしているらしい。


 10分がフィアーネ、11分がレミア、15分がフィリシアらしいが、それはアレンには伝えていない。公正を期するためとのことからだ。

 ちなみに勝者はアレンと食事に出かける権利らしい。勝者がアレンと交渉する事になっている。


 修練場に元勇者一行とアレンが対峙する。


 双方、自分が負けるとはまったく思っていないために、余裕の表情だった。


「ふん、卑怯者の分際で良くも逃げなかったものだ」


 ジェスベルがアレンを挑発する。このような安すぎる挑発にアレンが乗るはずがない。この程度の挑発しか出来ないジェスベルに対してアレンは哀れむ気持ちで一杯だ。


「お前、語彙力が壊滅的にないな・・・もう少しまともな挑発出来ないのか?」


 アレンは正直な感想を言ったつもりだったが、ジェスベルはいきり立つ。どうやら意図せずしてアレンはジェスベルを挑発したことになった。


「勝敗は、降参するか、戦闘不能になるか、そして死ぬかだ」


 ジェスベルは勝手に勝敗の条件をつける。


「ああ、いいぞ。後でガタガタ言うなよ」

「ふん、それはこちらのセリフだ」

「ジェスベル、さっさとやっちまおうぜ」

「そうよ、このアホの吠え面を早く見たいわ」

「我々に勝てるなんて思い上がりであることを思い知らせてあげます」


 フィアーネが戦闘開始の合図であるコインを投げる。落下したときに戦闘開始だという取り決めだったのだ。


 チャリィィン・・・


 コインが地面に落ちる音が鳴り響き、戦闘が開始される。


 


 先に動いたのはアレンだった。予備動作などまったくなくカルスの間合いに飛び込み、顔面に肘を叩き込む。


 ゴギィ!!


 頬骨の砕ける音が辺りに鳴り響く。いきなりの攻撃にジェスベル達は行動できない。攻撃をまともに受けたカルスは、後ろに倒れ込む。どうやら意識を失ったらしい。


 『カルスがやられた』その事を理解し、三人は金縛りにあったように動けない。そこにアレンの容赦ない横蹴りがジェスベルに放たれる。

 ジェスベルはその蹴りを腹にまともにくらい、2メートルほど吹っ飛んだ。幸いにもミスリル製の鎧を身につけていたことでダメージはそれほどでもない。

 アレンは蹴り込んだ動きを利用してジェスベル方向へ踏み出すと剣を抜くと同時にジェスベルに斬撃を加える。

 狙った箇所はジェスベルの首だ。ジェスベルはなんとか顔を捻ってアレンに斬撃を躱すことに成功した。アレンはすかさず追撃を行う。ジェスベルはなんとか剣を抜き放ち、再び襲うアレンの剣を受け止めた。


 が・・・


 ジェスベルはアレンに吹き飛ばされる。アレンの膂力は凄まじくジェスベルでは止めることが出来なかったのだ。

 ジェスベルをはじき飛ばしたアレンは、二本のナイフを投擲する。投擲した相手は気絶しているカルスだ。

 倒れているカルスへのナイフへの投擲、ドロシーはそのナイフをはじき飛ばすため、ショートソードを抜き放つ。


 キン!!キィン!!


 ショートソードがナイフをたたき落とす金属音が修練場に響き渡る。そして間髪入れずドロシーの苦痛の声が響く。


「くぅ!!」


 アレンがカルスを狙ってナイフを投擲し、間髪入れず再びナイフを投擲していたのだ。アレンが狙ったのはカルスではない、アレンの狙いはドロシーかロフだったのだ。動けないカルスを狙えばドロシーかロフがかばうだろう。実は自分が狙われていると思っていないのだから、攻撃があたる可能性が高いとふんでの攻撃だったのだ。

 アレンの狙いは当たり、ドロシーの右太股、左肩に投擲されたナイフが刺さっている。ナイフの刺さった箇所から血が漏れ出している。


「ドロシー!!」

「大丈夫!!致命傷じゃない!!」


 ドロシーは気丈に叫ぶが声に苦痛がこもっている。


 アレンはそれを確認するとドロシーへと向かう『フリ』をする。ジェスベルはそうはいかないと不用意に近づこうと走り出す。その瞬間、アレンは重心を一瞬で後ろに移し、その反動のまま背後に飛ぶ、同時に回転し、背後に向かってくるジェスベルに斬撃を見舞った。


 キィィィィィン!!


 ジェスベルはかろうじてアレンの剣を受け止める事に成功する。アレンはすかさず剣を手放す。つばぜり合いが始まると思っていたジェスベルは突然消えた力のためつんのめってしまった。

 アレンがそんな隙を見逃すはずはない。ジェスベルの剣を持つ手を掴むと自分の方向へたぐり寄せる。バランスを崩していたジェスベルは抵抗することも出来ずにアレンに引っ張られる。アレンは手を離したがジェスベルの動きは止まらない。そこにアレンの肘が放たれる。


 ゴギィィィ!!


 アレンの肘がジェスベルの胸に叩き込まれる。アレンは肘に魔力を込めて放っていたためジェスベルの鎧を砕き、胸骨をも砕いたのだ。


「がぁ!!」


 ジェスベルの口から苦痛の声が上がった。ジェスベルはその場に倒れ込もうとするが、そこにアレンの容赦ない追撃が行われた。

 アレンが凄まじい威力の蹴りをジェスベルの腹に放ったのだ。2メートルほどの距離を飛んでジェスベルは地面に転がった。


 気絶はしていないようだが、ダメージは誰の目から見ても深刻だった。


 アレンはジェスベルの動きを封じた事を確認すると、バックステップする。着地寸前に体を回転させ、着地と同時にドロシー達に向かい走り出す。

 アレンの視線はロフに注がれている。その事に気付いたロフとドロシーは身構える。ここでロフがやられてしまえば治癒術を使える者がいなくなる。そうなれば完全に勝負はついてしまう。


 ドロシーはロフをやらせるわけにはいかないとショートソードを構えアレンに斬撃を見舞う。いつものドロシーの斬撃なら、アレンの注意を引けたのだろう。だが、先程のナイフによるケガのためかドロシーの動きはいつもより格段に劣っている。


 ドロシーの斬撃はアレンにかすることも出来ない。ドロシーのふるった剣の軌道上にはすでにアレンは過ぎ去っていたのだ。むなしくドロシーの剣は空を切った。


「ロフ!!」


 ドロシーが叫ぶ。ドロシーはロフがアレンに斃される未来を感じた。ロフは魔術師であり近接戦闘では明らかに他の三人よりも劣っていたのだ。とてもアレンの体術にあらがうことは出来ないと考えていたのだ。


 だが、アレンの狙いはロフではなかった。倒れ込んでいるカルスだったのだ。アレンの蹴りが気絶しているカルスを容赦なく放たれる。カルスは胸の辺りを容赦なく蹴られたことで3メートルほどの距離を飛び地面に着地するとそのまま転がった。


 ロフの注意がカルスに注がれた瞬間にアレンはロフに回転して裏拳を放つ。ロフはその裏拳を避けることが出来ずにまともに受けた。アレンの裏拳はロフの頬骨と歯の数本を砕きロフの口から血と共に飛び散らせる。

 アレンはそのままロフの右腕を掴む。その瞬間、ロフが自分で飛んだように一回転し地面に頭から落ちた。ロフはそのまま倒れ込んだ。そこにアレンが右足を上げ、ロフの胸を踏み砕く。


 ゴギィィィ!!


 またもや骨の砕ける音が修練場に響き渡る。


 ドロシーはその様子を見てガタガタと震えていた。


(何なのこいつ・・・。強すぎじゃない・・・)


 アレンの目がドロシーを視界に捉える。その瞬間ドロシーは死を直感する。ガタガタと震えが走り、恐怖のあまりショートソードを落としてしまう。腰が抜けたのかその場にへたり込んだ。


 アレンがこちらに向かってくる。


 とどめを刺しに来るのだ。その事を理解したドロシーは恐怖に怯えた目で叫ぶ。


「く・・・来るな!!」


 アレンは無視して近づいてくる。勿論アレンはことさらドロシーを痛めつけるつもりはない。だが『降参』しない以上、この場合、戦闘は続いているのだ。そうである以上、アレンは容赦をするつもりはまったくなかったのだ。


 ドロシーは恐怖のため降参という選択肢を忘れていたのだ。


「ひっぃぃぃぃぃぃいぃぃぃいい!!」


 音程の外れた声が修練場に響く。


「ドロシー!!」


 ジェスベルが立ち上がり叫ぶ。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ジェスベルが叫びながらこちらに向かってくる。そして、そのまま『天剛』を発動する。突然、速度が上がったことにアレンは不意をつかれ、ジェスベルの拳を受けてしまった。

膂力と速度が思いの外、上がっていたためアレンは拳を受けたが首を捻っていたためにダメージはそれほど重くない。


 ジェスベルはドロシーに頼りがいのある笑顔を浮かべ言葉をかける。

 

「もう大丈夫だ!!すぐに斃すからな」


 ジェスベルはそういうとアレンに飛びかかる。


 アレン対元勇者一行の戦いは最終局面を迎えていた。


いつも読んでくれてありがとうございます。

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