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勇者⑪

結局、この『勇者』長くなりました。


よろしくおつきあいください

 ドルゴート王国の元勇者一行がアレンの部下となった。次の日、やはりというかなんというか、アレンに四人は突っかかっていったのである。


 四人にしてみれば、まったく納得しない流れであったのは当然で、アレンに従うつもりは一切無かった。


 最初は逃亡も考えたのだが、それでは腹の虫が治まらないとアレンに勝負を申し込んだのだ。


「アインベルク!!貴様は俺達を汚い罠に嵌めた。そんな男の下で働くのはまっぴらだ」


 ジェスベルがアレンに高々と宣言する。ちなみにここはアインベルク邸にあるアレンの執務室である。

 昨日、フィアーネが身元引受人となった事もあり、昨日はジャスベイン家に泊まり、本日、四人はアインベルク邸に連れてこられたのだ。


「ふ~ん」


 アレンは書類を作成しており、ジェスベルの言葉にいかにも適当という返事を返す。それがジェスベル達四人の怒りを増大させる。


「貴様!!その態度は何だ!!」

「貴様のせいで俺達がどうなったか知ってるだろう!!」

「あんたのせいで私達は捕まったのよ!!」

「我々に勝てないからといってあんな卑怯な手を!!」


 四人がアレンの執務室で喚き散らした。アレンにしてみれば四人の存在は『わざわざ、ちょっかいかけてきて返り討ちにあったマヌケ』というものだったが、四人にとっては到底、受け入れることは出来なかった。


「フィアーネ、こいつらの身元引受人になってくれてありがとう」

「いいのよ、アレンのためだもの♪」

「ああ、それにしてもこいつら俺より年上のはずなのに頭が悪すぎるな」

「うん、私もここまで悪いとは思ってなかったわ」


 四人が喚き散らしている中、当たり前のように会話を進める二人にさらに四人はヒートアップする。


「貴様!!無礼にもほどがあるだろ!!」

「そうよ!!無視してんじゃないわよ!!」

「無視するな!!」

「我々を無視して只で済むと思ってるんじゃないでしょうね!!」


 正直相手するのもアホらしいのだが、ほっとくと永遠に喚き散らしそうだったので、ものすごく嫌だったが相手をしてやることにする。


「それで?」


 アレンの冷たい目が四人に注がれる。その冷たい目は四人の怒りを冷めさせるものがあった。


「俺と勝負しろ!!」


 ジェスベルがアレンに宣言する。


「勝負?」


 アレンの呆れている声が執務室に響く。実際にアレンは呆れていた。この期に及んでだこいつらは自分の置かれている立場が分かっていないらしい。フィアーネが身元引受人にならなければこいつらは今でも牢の中だ。フィアーネが身元引受人になる条件は、「アレンへの臣従」だったはず、にも関わらずこの態度だ。こいつらはフィアーネの不興を買い身元引受人を止めてしまえばまた牢に逆戻りという事を分かってるのだろうか?

 

 そんな事はつゆ知らず、ジェスベルはニヤリと嗤いアレンを挑発する。


 その様子を見てアレンは・・・ピエロだと思った。自分の立ち位置を全く把握せず、自分の都合の良いように話が進むと考えている。年上ながらジェスベルの愚かさに哀れみをアレンは感じてしまう。


 周囲の連中は諫めなかったのだろうか?それとも諫めたけどこいつにそれを受け止めるだけの器がなかったのだろうか?


「--のだ!!」


 そんな事を考えている間にジェスベルは話し終えていた。自信たっぷりの顔をしている。そして、他の三人の顔も同様の顔だ。

 フィアーネは呆れていたが・・・。 


 アレンは、この自信たっぷりの顔を見ていて「聞いてなかったからもう一度言ってくれ」と言ったらさぞかし怒るだろうなと思っていた。本来であれば聞き返すことは相手の気分を害することになるので控えるのだが、こいつらには構わないだろうという気持ちが後から後から生まれてくる。


「ああ、聞いてなかった。もう一度最初から言ってくれ」


 アレンの言葉にジェスベル達の怒りはさらに増す。


「貴様!!いい加減にしろよ!!失礼にも程があるだろう!!」

「そうよ!!あなたのような卑劣な男にもジェスベルは正々堂々とした勝負をしてやると言ってくれてるのに!!」

「貴様は卑怯者の上に耳まで悪いのだな」

「あなたのような者が我々の上にあるなどあり得ません」


 再び喚き散らす元勇者一行の声を聞き流し、アレンはフィアーネに状況説明を求めることにする。


「フィアーネ、こいつらはさっきなんて言ってたんだ?こいつらアホだから話が通じん」

「えっとね、アレンと一対一で勝負しろと言ったのよ。そして自分が勝てばアレンが自分達の下につけと言ってる」

「はぁ?」


 勝負の件は一万歩譲って受けてやっても良い。だが、俺にこいつらの下につけ?そんな条件を出して受ける奴がいるのか?こちら側に何もメリットなんかないじゃないか。

 

 もう面倒だな・・・力ずくで黙らせるか。


 アレンは決心する。どんなアンデットが出たか知らないが、墓地の見回りであれほど消耗する程度の奴らがどこまで調子に乗ってるのだ?


「おい、クズ共」


 アレンの冷たい声に四人は黙る。


「お前らがどんな立場なのかまったく分かってないようだな。だが、お前らの理解力では万の言葉を用いても理解できないだろうから勝負してやる。ただし4体1、これが条件だ」


 アレンの言葉に四人は憤る。


「やはり貴様は卑怯な奴だ!!」

「そうよ、一対一で勝てないからって四対一なんて!!」

「ジェスベル!!俺にやらせろ!!こんなクズ、俺一人でぶっつぶしてやる!!」

「いえ、カルス、私がやりましょう。私の魔法なら簡単です!!」


「何を勘違いしている?」


「・・・?」

「え?」

「なんだと?」

「は?」


 アレンの冷たすぎる声が室内に響く。


「四対一の4はお前らだよ。貴様らごとき俺一人で十分だ。一対一を四回やるのも面倒だ。四対一なら一度で済む」

「な・・・」

「私達4人を一人で?」

「舐めやがって!!」

「バカにしてるのですか?」


 アレンの言い分に四人は怒りを露わにする。さらにアレンは続ける。


「お前達が勝てたら俺がお前らの下についてやろう。ただし、俺が勝てば俺はお前らを人間扱いしないつもりだ。使い潰すつもりでこき使ってやる」


 アレンの言葉から本気である事が十分に伝わってくる。だが、勇者として活動してきた自分達だ。アレンのような卑怯者に負けるはずがないという自信がアレンの言葉を軽い者と捉えさせる。


「ああ、いいぜ。こちらこそお前をこき使ってやる」

「良い度胸ね。あなた如きが私達に勝てるなんて笑えるわ」

「俺が一人で叩きつぶしても良いんだが、他の奴らもやりたいだろうからな、いいぜ」

「後悔させてあげますよ」


 四人は了承する。せっかく自分達が正職員になれたのに(自分から望んだわけではないが・・・)自ら奴隷の扱いを望んだ愚か者がそこにいた。


「そうか、では勝負は3日後だ。見たところ、武器、防具などは何もないようだ。3日で準備を整えろ。場所は当屋敷にある修練場だ。逃げたければ逃げてもいいぞ?」


「ふざけるな勝てる勝負を逃げる奴なんかいないだろう」


 ジェスベルの顔が卑しく歪む。よほど頭の中でアレンに酷い事をしているのだろう。その思考がただ漏れしている。


「そうか、なら三日後にここに来るが良い」




 アレンと元勇者一行の勝負が決まった。


 ジェスベル達にとって運命の分かれ道だったのだが、ジェスベル達はこの事にまったく気付いていなかった。



 あの時、気付いていれば・・・


 その事をジェスベル達は何度も後悔することになる。

いつも読んでくれてありがとうございます。


よろしければこれからも読んでいただけると嬉しいです

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