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勇者⑩

かなり突っ込みどころの多い回となってしまいました。


厳しい突っ込みはナシの方向でお願いします。

 ドルゴート王国に勇者一行に関する噂が流れた。


 噂の内容は、『ローエンシアで犯罪行為を行い逮捕された』という噂を基本とし、犯罪内容は千差万別だった。


 いわく、殺人

 いわく、強盗

 いわく、婦女暴行

 いわく、麻薬取引


 最初はまさか自分達の勇者がと信じていたドルゴート王国の国民達も、ローエンシアが正式に抗議を入れた事が知れ渡ると、あっという間に勇者として相応しくないという意見が大半にのぼり、口汚く罵る者達が後を絶たなかった。


 その声の高まりに国もジェスベル達を切り捨てる方向に舵を切った。


ジェスベル達は、確かに優秀な人材だったが、替えの効かないというわけでなかったわけではなかった事、自分のおす勇者候補が勇者にするための上位貴族にいた事などの理由があった。


 そしてジェスベルの勇者の称号の剥奪と国外追放が決定された。カルス、ロフ、ドロシーも国外追放が決定されることになった。




-----------------


「はぁ・・・」


 ジェスベルはため息をつく。自分の勇者の称号が剥奪され、国外退去になったことが知らされたからだ。


 薄暗い牢屋の中で一人いると、いろいろな事を考えてしまう。


 なぜこうなったのか・・・。


 自分なりに一生懸命やってきた・・・危険な仕事を請け負いみんなを救った。勇者の称号を得てからもみんなを守るために頑張った。


 みんなの賞賛、感謝が気持ちよかった。名声が高まるうちにもっと名声が欲しくなり、ローエンシア王国の悪名高いアインベルク家に手を出した。そして、それが間違いだった事は今では十二分に理解している。

 自分がまさか犯罪者として扱われる日がくるなんてまったく考えてなかった。


 アインベルク家に手を出したことで、今まで積み上げてきたものがすべて崩れ去ったのだ。


 そんな事を考えていたところ、看守が格子の外から声をかける。


「出ろ」

「え?」

「ついてこい」


 看守に連れられジェスベルは歩く。


「ここだ」


 看守は扉をノックし、中から返事が返ると扉を開ける。ジェスベルには聞き覚えのない少女らしい声だった。


「連れてきました」


 看守は中で待っていた少女に声をかける。室内にはすでにカルスが待っていた。その少女はびっくりするぐらい美しい少女だった。顔の造形の美しさはもちろん、長い絹糸の様な銀色の髪、ルビーのような紅い瞳も美しいの一言だった。


「全員揃ってから話を進めたいと思いますので、もう少し待ってください」


 その少女はそう言うとついと視線をはずす。


 しばらくすると再び、ノックがされ、ロフとドロシーが入室する。


 全員が揃ったことを確認すると少女は話を始める。


「初めまして、私の名はフィアーネ=エイス=ジャスベイン。あなた方の身元引受人候補です」

「候補?」

「はい、あなた方の身元引受人になるかはこれから決めます」

「・・・」

「まず、あなた方は出る意思はありますか?」

「はい!!」

「当然です!!」

「勿論です!!」

「はい!!」


 四人は間髪入れずに答える。フィアーネはその意思確認をしてから、条件を提示する。


「そうですか、当然ですが犯罪者のあなた方をこのまま世間に解き放つ事はできません」


 犯罪者という言い方には抵抗があったが、ここで異を唱えて不興を買い、身元引受人を引き受けてくれなくなれば困るので、黙って従う。


「どうすれば・・・身元引受人となってくれるのです?」

「アレンティス=アインベルクへの臣従です」


 フィアーネの提案はあり得ないものである。自分達の積み上げてきたものをすべて壊し、追放にした男に臣従しろというのはあまりに酷い条件であった。


「どうですか?」

「断る!!」

「ふざけるな!!」

「そうよ!!なんであんな男に!!」

「貴様もあの男の手先か!!」


 口汚く四人はフィアーネを罵る。フィアーネはすさまじい殺気を放つ。


「あ・・・」

「うわ・・・」


 その殺気の恐ろしさに四人は罵る言葉を封じられてしまう。


「何を勘違いしているの?あなた方は自分の立場がまったく分かっていないようね」


 殺気を少しも緩めることなくフィアーネは冷たい声を四人に向け言い放つ。


「あなた方は不思議と思わないのですか?」

「何を?」

「普通、あなた方ほどの実力があればどこかの貴族がとっくにあなた方を囲い込むために身元引受人になっていたのではないですか?」

「・・・」

「にも関わらず、あなた方が捕まってから一月半で誰もあなた方を囲い込もうとはしていない」

「・・・」

「誰かが邪魔をしていると思わないのですか?」

「まさか・・・アインベルクか?」

「いいえ、アレンの爵位は男爵、他の貴族を押さえるのは不可能です」

「じゃあ、一体・・・」

「ローエンシア王国の王太子アルフィス殿下です」


 フィアーネの口にした人物は四人にとって想像の外にあった。なぜ一国の王太子が自分達の釈放の邪魔をするのか?


「アレンとアルフィス殿下は親友同士なのですよ」

「まさか・・・あの男が王太子に・・・」

「その通りです。アレンが王太子に頼んだのです」

「なぜ・・・」

「あなた達が条件を飲まざるを得ない状況を作るためです」

「・・・」

「この条件を飲まないのなら、これからもあなた方の身元引受人になってくれる人はいないと思ってください。何年もずっと牢につながれたいというのなら断っても構いませんよ。さぁ、どうします?」

「・・・分かった」


 ジェスベルがぽつりと受け入れる。それを皮切りに他の三人もフィアーネの提案をのんだ。


「よく決断しましたね。これからはアレンのために身を粉にして働いてもらうわよ」


 最後の方はフィアーネの素が出ている。交渉が終わったため、被っていた令嬢の仮面をいきなり外したのだ。


 こうして、ドルゴート王国の元勇者一行は、墓地管理の臨時職員から正職員となったのである。



読んでくれてありがとうございます。

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