まさ美と海里
桜の花びらがハラハラと舞い散る。
そんな桜の木の下で、私は幼馴染みの海里を待っていた。
(あの日も、こんな景色だったな…ーーーー)
『まさ美ちゃん、海里ちゃん…』
ふと思い出すのは、海里と共通の幼馴染みの嘉藤渉が最後に、私たちに言ってくれた言葉。
『またね』
さよならではなく、希望の言葉だった。
桜が咲き乱れている春…ーーーーー、
十年前のこの季節に私は初めて、友達との別れを経験した。
「おはよ、まーちゃん。」
ようやく玄関から出てきた海里が長い髪を靡かせながら私に微笑んだ。
「海里…、おそい」
「また思い出してたの?渉くんのこと」
海里が私の文句を華麗にスルーして、エスパー並みの発言をする。
「…―――まさか、もう10年だよ?」
「へぇ?10年も経つんだー、よく覚えてるね」
「…意地悪…」
私が敗北を認めると、海里が満足げに微笑んだ。
「まーちゃん、渉くんのこと大好きだったもんね」
「海里だって、好きだったくせに」
私が言うと、海里が微笑みで誤魔化す。
――――幼馴染みの嘉藤渉くんは、私たちの初恋だった。
でも、渉くんはもうこの町に居ない。
引っ越してから10年も経つのだから。
「早く行かなきゃ、学校遅刻しちゃうわ」
海里が腕時計を見て、わざとらしく言う。
「誰のせいよ!私は毎日待たされてる方なんだけど?」
こうして、高校生活初日も、マイペースな海里に振り回され、バタバタと登校することになりました。