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第三話「下地作り~3歳」

 ところで、着地点であったり、目標地点というものを作るのは大切なことだと、考える。


 母のいなくなった居間で、柔軟体操をしながら思考を続ける。


 仮に将来ボクシングの世界チャンピオンになりたいのであれば、今するべきは柔軟体操ではなく、走りこみやシャドーだったりするだろう。それも、ライト級なのかヘビー級なのかで分かれる。ライト級なら柔軟でも走りこみでも正解だろうが、ヘビー級ならば今から身長や体格、骨格といった部分を強化する方針でいかなければならない。ヘビー級は神に認められた体格を持つ者だけが昇れる場所だと何かの漫画で読んだ気がする。


 つまり、何が言いたいのかといえば、折角二度目の人生としてのアドバンテージがあっても、きちんとした着地点や目標地点を定めなければ、結局は同じことの繰り返しになってしまう可能性があるということだ。


 ファンタジー系の、剣と魔法の世界などの中世世界観への転生ならばなんら問題はないだろう。例外を除けば、誰しも冒険者になりたいと考え、それならば幼少の頃から身体訓練を詰むことによって、その世界の文化レベルにもよるがそれは相当なアドバンテージになる。


 しかし、あくまで今の現状は、現代日本。


 前の生にて、何も考えず、目的も持たずに生きた結果は、フリーター二十八歳独身運転免許書無し健康保険書無しの年金未払い男となるのだ。


 ましてや、『それも悪くないと考える思考』を持って。


「恐ろしい話だ……」


 三歳児には不釣合いな、あまりにも哀愁の漂う表情で身震いを起こす。


 もちろん、目標を持たずにいたところで、前の生よりは良い生活を遅れるかもしれない。


 しかし、それでも同じ人生を歩んでしまう気がする。


 『したいことがない』から『まともな職場』を選ぶことが出来ず、『まともな職場』ではないから、『まともな収入』を得ることが出来ず、『まともな収入』がないから、『まともな人生』を送ることが出来ない。


 『したいことがない』は、『守りたいものが無い』でも、『夢を持っていない』でも、小さい場面を当てはめれば『裕福な暮らしには興味が無い』でも、『友人と遊ぶためのお金を稼ぐ必要はない、遊ばなければ良いだけだからから』でも同じだ。


 そういったものがなければ、人は結局腐ってしまう。


 何故なら今の日本は、月十万の稼ぎのフリーターでも、そこそこ生きていくことが出来るようになっているから。


 そして、気が付けばそれでいいやと、不満を抱えながらも、漫然と生きていくことになる。


 ならない人間もいるかもしれない。


 しかし、なる人間は確実にいる。


 鳴海玖未という存在が、それに当たるのだ。自分で言うのもなんではあるが、自分の人生に対して相当だらしない人間なのだ。


 アドバンテージを生かせば良い大学や職場には行けるだろうが、それでもすぐに嫌になってしまうだろう。嫌になってしまう自信がある。


 そのための、目標、着地点決め。


 まずは、『どう生きる』か。そして『何をして生きるか』を決めなければならない。


 いまだ、答えは見えない。


 小学校に入るまでには、決めようと思う。


 その間は、広く浅くこの体を成長させていこう。


 誰もいない、静かな居間。小さい体で柔軟体操を続ける。幼い体で筋トレは身長の成長を阻害すると聞いたことがある。実際、背が低い男性というのは、思いのほか支障が大きい。服のサイズだとか、女性受けだとか、色々な面で。一応前回の身長は百七十五センチという、恵まれた身長だったので、今回も問題はないはずではあるが。


 次に、カラオケ対策に発声と音程音域の練習。これは非常に大事だ。一度人生を経験したからわかる。カラオケを楽しめないものは、人生も楽しめない。一概にはもちろん言えない。しかし、多くの人は頷く筈だ。


 そして、母に頼んで買ってもらった絵の具で絵を描く。前の生でずっと絵を描いてみたいと思っていたのだ。そう思ったの二十歳ぐらいのことで、しかし物臭さな気持ちは『今更絵の練習はじめてもな』とどうしても思ってしまった。物事を始めるのに年齢は関係ないとは言うが、だからといって、そうだやってみよう、と思える人間は多くない。


 今だ下手ではある。まさしく子供の書く絵なのだが、母も父も手放しで褒めてくれるので、モチベーションは非常に高い。


 後は、楽器だ。ギターかピアノかサックスかベースかと、色々と悩んでいて今だ手は出せていない。楽器は高価だ。今の自分がねだれば買ってはくれるだろうが、もしこれじゃない、となった場合、次の楽器に手を出そうとしても、どうせそれも飽きるんだから、となって買ってくれなくなる可能性がある。うちは裕福ではないのだ。


 考えてみる。


 フュージョン、ロック、ジャズ、プログレ、クラシック、ポップス、と、こんなジャンルを並べればこんな順番で好きだった。まぁ、こうして考えれば大きく分けてジャズ方面が好きなんだろう。


 そう考えればピアノが無難かもしれない。しかし、サックスも捨てがたいな、と思う。


 ピアノは習いにいって、サックスは将来自分で買うという手もある。


 二度目の人生で一番のメリットは、お年玉を不要なことに使わなくて済むという点だ。


 何度、トレーディングカードゲームにお年玉を使っていた過去の自分を殴りたいと思ったことか。


「よしよし、なかなか構想が決まってきたなぁ」


 子供特有の高い声で、子供らしくないことを言う。


 こう考えれば、感性系の物事に執着している自分がいることに気が付く。


 前の人生ではほとんど関わっていないというのに。


 これが、あるいは人生の指針、目標になるかもしれない。


「クミ君~、ただいまぁ~」


 ガサガサと音を立てながら、母が帰ってきた。


 ピアノの教室に通いたいというのは、どういった拍子で言えばいいものだろうか、と考えながら玄関へと母を迎えにいった。

 

フリーター二十八歳独身運転免許書無し健康保険書無しの年金未払い男


↑もしこの話を高校生だったり中学生で見ていたのなら、このことについて是非コメントを通してでも聞いてほしいし、機会があれば、自分の親に尋ねてほしい。


本当に将来が変わるから。

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