第一話「現状確認~0歳」
僕の拙い知識では、脳の形成の約四分の三は、出生後に行われる、と記憶している。
裏を返せば、四分の一は出生前に完成しているのだし、さらに言えば残りの四分の三は、環境と経験に呼応した成長をするはずだ。
身体機能などを考え、生まれたばかりを例外としても、幼い子供になんらかの手段で知識や経験を詰め込むことができれば、その時点でその子供は、『環境と経験に照らし合わせた大人』になるのではないか、と思っている。
専門的な知識がないので確かなことは言えないが、少なくとも、『今の僕はそういった存在』ではないだろうか。
(生まれてから未だ一ヶ月ではあるが、思考が単純にしか動かなくて困るな)
その理由も簡単にだが推測はできる。それは単純に脳の形成が足りない所為だろう。空腹や排泄の不快感が直接感情を動かし、抑制することが出来なかったり、二つ三つと複雑な思考や意識をすると、途端に頭が痛くなる。将棋やチェスで例えれば、『一手先までは考えられるが、二手、三手先は考えられない』状況である。
精神は身体に引きずられるものだ。如何な知能を持った人間とて、強制的に抑制されれば、打つ手はない。
だから、そう。
今は自分が輪廻転生に近い状況になっていること。
自分と同じ母親と父親と、同じ名前をつけられた赤ん坊であるということ、其処までしか考えることができない。
(それでも、こんなアドバンテージを逃す手は無い)
確か、出後十二ヶ月で、健康な青年と同程度の脳になるはずである。
そして、脳の神経接続のピークが三歳。そして十歳ほどまでにそれを対応、及び成長させていく。
十一歳ほどから不要な部分が退化し、必要な部分がさらに特化し効率化されるはず。
どうせなら、これを最大限にいかすべきである。
一気に考えるのはとてもじゃないが、無理だったのだ。ここまで考えるのに長い期間をかけて、ゆっくりと考えをまとめていった。
とりあえず、今は母乳を摂取し、排泄物を処理してもらう。
こういうときだけは、深いことを考えられない自分にホッとした。
ギルドカードの説明とかと、同種の内容ッスな。
ちなみに脳の内容はほとんどうろ覚え+直前に調べたネット知識なので、あまり信じないでください。