表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: くるくる

今見えている世界の色が正しいとは限らない。

 鏡子は常日頃考えていた。

「自分」という存在の不確かさを。


 流れる朱が一日の終わりを告げる。誰もいない教室で、鏡子は椅子に腰掛けていた。ただぼんやりと外を眺める。朱を写すレンズは蒼を帯び、やがて紫へと。

 学生にとって、放課後で一日が終わる。いつも交わす、また明日の呪い。ここから逃れられない、逃さない。そんな呪いも交わさなければ意味がない。

 来ることがない明日、それは「死」を意味するのではないのか?

 鏡子は常日頃それを考えては紫になる。


「ねえ?紫の鏡って知ってる?」

 終わりを告げる教室で、クラスメイトが口にしていた噂話。二十歳まで「紫の鏡」という単語を覚えていると死んでしまう。そんな怖くもなんともない噂。鏡子はその単語を思い出すたびに震えていた。

 紫な自分。

 不確かな自分。

 そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。


 友人に言われたことがある。

「紫って高貴な色なんだよ。冠位十二階、あれの最上位は紫だし、ローマ帝国皇帝の礼服も紫だったんだって。キリストが死んだ時も、紫の衣を纏っていたんだって」

 最上とは、もう先がないことだ。即ち終わりなんだと、鏡子は考えた。


 鏡子は席を立っていた。よろよろした足取りで向かう先は、女子トイレ。

 化粧鏡を恐る恐る眺める鏡子の眼は、やはり紫だった。

 

 

他の色に染まった鏡子も存在してるんだと思うし、この作品を読んで下さったあなた自身も他の色がある、もしくはあったと思います。

機会があれば、他の色でも書いてみたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ