表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンゲルス  作者: Leone
第一章 ヒーローの帰還
6/229

第五話 日常その五

 ウィリアムが寮に戻ってきたのは、八月三十一日。夏休み最後の日だった。

 そして、開口一番、

「死ぬううううううぅぅぅぅぅ……」

 などと、言ったのだ。

 当然、ランツァはウィリアムに何があったのか、巨人に何をされたのか、知りたがっていた。

「一体、何が起きたんだ?」

 ドサッ、と倒れこんで、ウィリアムはその質問に答える。

「昨日からずっと巨人に働かされてた。主に始業式の準備を。一秒も休まずに……。最悪だ。巨人もずっと見張ってたけど、一体どんな神経してんだよ」

 拷問だった。

 比喩などではない。本当に拷問をされたのだ。

 しかし、彼は結構余裕があるようにも見えた。それは、一度罰を受けているためか、あるいは彼もただならぬ神経をしているためなのか。

「それにしても、お疲れさん。でも、流石にもう罰はないだろ?」

「それがな……ないんだよ」

 どうやら、思考回路までもがやられてしまっているらしかった。

 そして、そのままウィリアムは意識を失った。

「おい、これって誰か呼んだ方がいいのか、

それとも……」

 彼は迷った。

 しかし、答えはすぐに出る。

 誰かを呼ぼう、と。




 どういうわけか、ウィリアムは目が覚めた瞬間、巨人を見る。

「は……?」

 間が少し空く。

 その隣には、ランツァがいた。一体、何がどうなっているのやら……。

「大丈夫か?」

 ランツァが心配そうに声をかけてきた。

「ああ、多分……。てか、何で巨……いや、先生が?」

 そして、ふとあることに気が付く。

 保健室のベッドで寝ていたのだ。

「……?」

 疑問ばかりが浮かんでくる。

 その疑問にはランツァが答えた。

「実は、お前が帰って来た後、気絶してな。俺が誰かを呼びに行った時、ちょうど先生に出会って……。それで、事情を軽く説明した後で、ここにお前を連れてきた、ってわけなんだ」

 何となくだが、状況がわかってきた。

 そして、ウィリアムは意外な言葉を受け取る。

「すまなかったな、無理をさせて。少し度が過ぎていた。本当にすまない」

 あの巨人が頭を下げたのだ。

 それはおそらく誰も見たことなどなく、そして、彼らが初めてなのだろう。

 それに対して、ウィリアムも意外なことを言った。

「いや、いいんですよ。俺があれをやらないなんて、言ったから……。多分、逆の立場なら二度目は簡単には許さない。でも、先生はあえてそんなに厳しくしてなかったみたいですし……」

 彼も彼なりに、反省しているようだった。

「それじゃあ、お前はちゃんと休んで。で、俺と先生はとりあえずここから出ますか。いると、ゆっくり休めないだろうし」

 そう言って、二人は保健室から出て行く。

 残されたのは、ウィリアムと、今まで会話には加わることをしなかった保健室の女性の先生だけ。

 その保健室の先生は彼らがいなくなってから、ウィリアムに話しかける。

「調子はどう?」

「上々です」

「そう、よかったわね。まあ、ただの睡眠不足みたいだから、たいしたことはないみたいだけど」

「そうですか……」

「ゆっくり休んで、早く元気になってね」

「有難うございます」

 そして、彼は深い眠りにつく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ