第四話 日常その四
八月三十日。
あのハプニングがあって、その翌日。
「また今日も暑いな~」
そんなに急に気温は変わらないとは思いつつも、ランツァは少しだけ期待していたのだが。
「ほんと、いっつも暑いって言ってる気がする……」
しかし、決してそんなことを言ったからといって、涼しくなるわけではない。当たり前のことだが。
それでも、言わずにはいられない。
「あっち~」
その時、ふとウィリアムの頭の中に、とある最高の案が浮かび上がる。
その案というのは。
「なあ、暑いからカラオケに行かないか? 向こうになら、クーラーあるし。ていうか、何でこの学校の寮にはクーラーがセッティングされていないのだ? それ自体が理解不能なんだけど……」
「おい、いろいろ言いすぎて、何が一番伝えたいのかわかりずらいんだけど……」
「えっとだな……。俺が言いたいのはカラオケに行かないか、ってやつ」
「ん~、確かに涼しいが、本当にお前はあれをやらなくていいのか?」
あれ、というのは課題のこと。
ウィリアムはもうやらないと言ったが、実際はどう考えているのだろうか。
「別にあれなら多分大丈夫だ。一度、あったわけだし。うん、心配は御無用」
その時、不幸なことにも部屋の前を通る誰かがいた。
先生が。
しかも、担任。
さらに、皆から怖いと恐れられている男性教師。
理由は、あまりにもムキムキすぎる筋肉を有しているから。
そして、そのせいなのか、通称「巨人」となっている。
これはもう、逃れることは決してできないだろう。聴こえていたら話だが。
「……」
ウィリアムは無言になっていた。
そして、扉が開かれた。
それは彼らの部屋の扉であり、地獄の扉でもあった。
「ウィリアム君! それなら、今すぐ罰を始めようか」
巨人は無理矢理ウィリアムの襟首を摑み、寮の中を引きずっていく。
「やめてくれええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
彼はランツァのもとから、強引に連れ去られていった。
巨人の罰とは一体――。