表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンゲルス  作者: Leone
第一章 ヒーローの帰還
2/229

第一話 日常その一

 二〇XX年、近未来。科学技術はあまり進歩していない、近未来だ。

 リヒト国という国がある。

 今は八月二九日。

 この国では、四季があるため夏の太陽が朝早くから照りつける。誰も、こんな暑い一日を望んでいないのに。

 「うぁ……」

 と、軽く欠伸をする少年が一人。

 その少年の名は、ランツァ・ジェルン。黒い髪に黒い瞳といった姿をした少年。髪型は普段は少し逆立てているが、寝起きのためか、今はボサボサだった。服装は学生のためか、夏用の半袖カッターシャツに、制服ズボンに着替えている。夏休みだろうが何だろうが、彼の学校の規則では制服でいなければならないとのこと。年齢は十七歳で、高校二年生。ちなみに、誕生日は六月十三日。

 今は夏休みの終盤である。

 そして、彼は残り少ない休みを堪能するべく、できるだけ早く起きようと思う。

 しかし、先ほど言ったように、灼熱の中で逆に寝られている方が不思議なのだ。

 そのあまりの暑さのせいか、ついつい悪態をついてしまうランツァ。

「クソあちいな……」

 それを聴く者が一人だけいた。

 ランツァの親友、ウィリアム・ヘルスだ。青い髪に青い瞳をしている。髪型はツンツンした感じの髪型だ。年齢は十六歳と、ランツァよりも一歳年下の……とはいえ、同じ高校二年生なのだが。誕生日は、十一月三日。そして、なぜそのウィリアムが彼の悪態を聴いていたのかというと……。

 実は、ランツァは今、学生寮にいる。夏休みにも拘らず。

 その理由は、「家のこと」と彼はいつも言っていた。

 そして、ウィリアムはランツァを一人にしては悪いと思い、いつもこの学生寮の同じ部屋にランツァと一緒にいるのだ。

 その時、ウィリアムはこう言った。

「ほんと、暑すぎるよな……。心が折れちまいそうだぜ。さらに、この高校、ユースト高校は夏休みの課題という名の悪魔が多すぎる……。この世界は、泣き面に蜂でできてんのか? って言いたくなるよ」

「お前、まだ課題終わらせてないのか? それはまずくないか?」

「これでも頑張ってんだぞ。つーか、この高校、マジで鬼高校だろ」

「……でも俺は終わってるぞ」

「…………」

 沈黙。

 そして、

「はあ? 冗談だろ? 俺、お前がそんな頑張ってるとこ、見た事ねえ。一体、いつどこで……」

「お前が寝てる時に、だけど」

「畜生。裏切り者めえ」

 よくある枕投げというやつが始まる。

 だが、ウィリアムは決して本気で怒っているわけではない。少しふざけているだけなのだ。

 そして、二つしかない枕を投げ合っていると、ウィリアムの方の枕がランツァに当たった。

 ちょうど、顔面に。

「っつ~。やりやがったな」

 もちろん言うまでもないが、ランツァも本気ではない。

「てめえはこんなことしてないで、さっさと課題をやるんだよ!」

 言いながら枕を投げるランツァ。

 だが、それはウィリアムが少し首をかしげるだけで、回避される。

「ん~。遅いぞ、ランツァ君」

「……上等じゃねえか、おい」

 もう一つの方の枕を摑み、ランツァはウィリアムに向かって投げつける。

 すると、今度は命中。

 と、思ったらぎりぎりのところで、腕で防がれた。

「当たれよ!」

 笑いをこらえながら、ランツァは言う。

 一方、ウィリアムは、

「当たったら、痛いだろ」

 と、普通すぎる返事をしたのだ。

「やめだ、やめ! こんなことするよりも、本気でさっさと終わらせろよ」

「まあ、面倒なことになるしな。やらなかったら……」

「……なあ、一つ質問してもいいか? やらなかったこととか、あるのか?」

 いかにも、面倒になることを体験したように話すウィリアムが気になって、そんな質問をするランツァ。

「まあ……、一度だけな」

「一体、どうなったんだ?」

「堂々と話せる内容じゃないから……」

 先ほどまでとは違い、真面目な顔で返答するウィリアム。

 それを見て、ランツァはこれ以上は深入りしない方がいいと判断し、こう答えた。

「わかった。俺も無理には聞かない。別に聴く必要はないからな。ただ単に、興味があっただけだから」

 それは自分自身にも言っているように聴こえた。

 ウィリアムにだけではなく。

「んじゃ、俺は出てた方がいいのかな?」

「別にいてもいいけど、そっちの方が助かるのは確かだな」

 机に向いながらウィリアムはそう言う。

「……素直じゃねえな」

 それはいてほしいのか、それとも出ていた方が助かるということに対してなのか……。

「ランツァこそ、はっきりしてないよ」

 そう彼は呟いた。

 少し笑って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ