第百八十三話 アクセラ・ロイド
「フフフフ……」
不気味な笑い声と共に、廃れた建物の屋上から屋上へ次々と駆け抜けていく人影が一つ。
「あいつらも連れて、ティナに会いに行くのが楽しみでならんな」
そんな独り言を呟いた直後、
「ん……?」
視界の端に、妙な集団を捕らる。それとほぼ同時に、人影は移動するのを中断した。
「おいおい、なぜ奴らがここにいる?」
訝しげにその一行を見つめ、ほんの一瞬だけ思考を巡らせる。
そして――
「見つけてしまったからには、捻り潰すしかねえよなぁ……」
再び、人影が動き出す。
一方、その妙な集団では――
「……誰かに、見られてる気がする」
その中の一人――ランツァが見られていることに気づいていた。
だが、
「当然だろ。ここは敵地なんだからさ」
ウィリアムはランツァの言葉を軽んじ、ガルメラとジェネスの二人もあまり警戒することはなかった。
それでも、ランツァだけは妙な胸騒ぎを感じ、常に周囲を警戒していた。
それなのに、ランツァは気づくことができなかった。
「おい」
背後にいる、男の存在に――。
「テメェら、ここで何してやがる?」
背筋に悪寒を感じながら、ランツァは声のする背後に視線を向ける。
そこには、紫の髪、同色を基調とした貴族服、真紅のサングラスをかけている男がいた。
少し遅れて、他の三人もその男に視線を向けた。
その時だった。
その三人が驚きのあまり、ハッと息を呑み、
「アクセラ・ロイド……!!」
三人同時に、男の名を口にしていた。
「アクセラ・ロイド……? まさか……!」
ランツァは、その名前を耳にしたことがある。
そう、アクセラ・ロイドとは――
「加速を称する、レギオンの王……!?」
かつてランツァ達と闘った、ギャリアスやブラックなどが所属するレギオンの王の名である。