第百八十二話 提言
滅びた都市とも言えそうな場所に、四名の若者達がいた。
ここは、悪魔の棲まう世界――アザルド。
ランツァ達は何か有益な情報を得るために、この世界に来ているのだ。
「相変わらず、ゾンビでも出てきそうな所だな」
と、ウィリアムは思ったことをそのまま声に出していた。
その感想に対して、ガルメラが脅かすようにこう囁く。
「実際、ゾンビは存在するんだぜ……? 俺も一度だけ出遭ってしまったことがあるんだけどよ、ありゃあ化け物だぜ。いくら攻撃したって、絶対に死なねえんだからな……」
悪役でも演じているつもりなのだろうか、ヒヒッと不気味な笑い声まで漏らしたガルメラ。
「マジかよ……」
ガルメラの言葉を信じたウィリアムは、震える声でそう呟いていた。
だが、そこでジェネスが真実を告げる。
「ゾンビなんていないよ……」
それを耳にした直後、ウィリアムの口がポカーンと開く。
一方で、ランツァは最初から全くゾンビを信じていなかったため、ジェネスの言葉に驚かされることはなかった。
ガルメラは――
「俺だって、ゾンビなんて信じてねえぞ~……?」
先程とは真逆のことを口にしていた。
「ったく、冗談きついぜ」
少し笑いながらそう呟いたのは、ウィリアムである。
決して怒ることなどなく、むしろこの状況でこのような会話をできたことが嬉しいのだ。無論、ランツァも例外ではない。
だが、彼らはここへ話をするために来たわけではない。
目的を見失わないように、ランツァが他三人を仕切る。
「そろそろスイッチを切り替えて、先へ進もうか」
「どこか行く宛でもあるのか?」
この世界についてあまり知らないため、目的地があるとは思えない。そう考えたからこそ、ウィリアムはランツァに問いかけた。
ランツァは彼の問いに対して、
「いや……」
そう答えただけだった。
だったら、とガルメラが皆に提案する。
「運がいいのか悪いのか、あまり遠くねえ場所に王の城がある。そこへ行かねえか?」
「王の、城…………」
その言葉を聞いただけで、ランツァはそこがどれだけ危険かを悟った。
故に、ランツァはガルメラの提案に反対しようとするが、
「わかってる」
ガルメラのその一言によって、遮られた。
「危険なのは重々承知の上だ。だがな、目的地も何もなしに辺りを彷徨くよりは、遥かにマシなはずだ。俺には、この方法しか思いつかねえんだよ」
ガルメラの考えは、間違っていない。
たしかにただ歩き回っているだけでは、何も得られない可能性の方が高い。その上、この世界に長く滞在することになる。危険を犯したくないならば、最短の手段を選ぶ以外にないのかもしれない。
「わかった。そこを目指そう」
ランツァは意を決して、ガルメラに案内するよう視線で促す。
「俺について来な」
歩み出す一行。
「ところで、どの王の城なんだ?」
ふと、疑問に思ったことを述べたウィリアム。
少し間を置いて、ガルメラが重い口を開く。
「元、俺の主――ディレ・ディオスの城さ」