第百七十九話 キリエの提案
ここは、アンゲルスの秘密基地内。
ランツァ達が入ってきた頃には、すでにエレシスとアキが皆を説得中だった。
「あ……先輩、こっちです!」
ランツァ達が来たことに気づいたエレシスは一旦説得するのを中断し、大きく手を振っていた。
それを見たランツァ達は、急いでエレシス、アキと合流する。
「皆、何て言ってるんだ?」
ランツァは合流するとすぐにそう尋ねた。実際にどの程度反対されているのか、詳しく知りたかったからだ。
彼の質問には、アキが答える。
「皆、反対だと言っています……。いくら説得しようとしても、中々耳を貸してくれないんです……」
特に、とアキはさらに付け加える。
「悪魔は反対だ、と……」
やはり、種族に対する偏見が一番の問題なのだろうか。
そうランツァは思った。
とはいえ、ランツァ自身も悪魔は敵視している。もしランツァが反対している者達の一人だとしたら、悪魔がアンゲルスに加わることを許せるだろうか。
おそらく、それは無理だろう。
なら、一体どうすれば皆を説得できる?
「アキ。一つだけ、私に案があるんだけど……」
そう、キリエが言った瞬間だった。
今まで少し騒々しかった周囲が、一瞬にして静まり返ったのだ。
無音。
本当に何も聞こえない時間が流れる――。
「え……!?」
そんな状況に思わず怯んでしまったキリエ。
「キリエ、その案ってのを皆に聞かせてくれよ」
と、誰かが怯んでいるキリエにそう促した。
「……わかったわ」
キリエはなんとか普段の調子を取り戻し、大勢の会議用に作られたステージ上に上がる。それと同時に、皆の視線が彼女一点に集まった。
そして、キリエがその案というのを皆に打ち明けようとする。
「たった今、私が思いついた案を説明します――」