第百七十七話 大きな戦争
「心の準備はいいかしら?」
アンゲルスの秘密基地への入り口である魔法陣を前にしてそうランツァ達に問いかけたのは、キリエだ。
彼女の質問に対して、皆が胸を張って答える。
「ああ、大丈夫だ」
と、ランツァ。
「俺もだ」
ウィリアムもランツァと同様に答えた。
そして最後に、レリアが締め括る。
「仲間がいれば、恐いものなんて何もないよね」
レリアの言う通り、誰一人として臆する者などいない。
たとえアンゲルスを抜けることになろうとも、信頼できる仲間がいてくれればそれでいいのだ。
最悪の場合、アンゲルスの天使達に敵視されるかもしれない。
しかし、そうなってしまったとしても、仲間がいればどんな困難だって切り抜けられる。
そう信じているからこそ、彼らは強く歩み続けられるのだ。
「それじゃ、皆を説得しに行こっか」
キリエがそう言い、彼女から順にアンゲルスの秘密基地内へと入って行った。
その頃――。
悪魔の世界――アザルドで、妙な動きがあった。
「ロイド様ぁ、ロイド様ぁ!」
アザルドのどこかにある巨大な城の中で、八歳くらいの女の子が誰かを大声で呼んでいた。
「ロイド様ぁ、どこにいるのー?」
探している人物が見当たらないのか、城内を走り回る女の子。
暫くすると、
「ロイド様はティナ様のお城に行ったそうですよ」
その女の子に気づいた老人が、ロイドと呼ばれている者が今はここにいないことを知らせる。
「そうなの……」
どこか残念そうな顔をする女の子。
「何をしに行ったの?」
「う~む、たしか……これから大きな戦争が起こりそうだとか言っていたような気が……」
「大きな戦争……?」
「うむ……」
一体、その『大きな戦争』とは何を意味しているのか?
ロイドという人物は、その意味を知っているのだろうか?
女の子と老人にとっては、今はまだ全てが謎に包まれているのであった。