第百七十二話 王の城へ
「さて、どうするか……」
アザルドにいるヴァルナスは、そう呟きながら、これからどうするかを考える。
「先代の王が殺されて、あいつがアグウィスを探しに行って……。それからあいつがどうしてるのか、知らねえんだよな……」
そう。実はフレディが今どこにいるのか、ヴァルナスは知らないのだ。
では、なぜアザルドに来たのか。
それは、フレディが悪魔であるため。悪魔なら、普段はアザルドにいるだろうという単純な思考が原因で、ヴァルナスはここにいるのだった。
フレディがここにいるとは限らないことくらい、ヴァルナス自身わかってはいるのだが。
とはいえ、闇雲に探すよりかは幾分かマシなはずだ。
「よし。それじゃあ、城にでも戻ってみるか」
城というのは、破壊を称するレギオンの王が住んでいる城のこと。
即ち、ティナの城のことである。
破壊のレギオンにとっては最大の拠点でもあるティナの城になら、ひょっとしたらフレディがいるかもしれない。
僅かでもフレディがいる可能性のある場所なら、絶対に行って確かめておくべきだ。
ヴァルナスはそう考え、地面を力強く蹴る。
すると、その場から消え去るが如く、ヴァルナスは凄まじいスピードで移動を始めた。
ティナの城までの距離は非常に遠く、決してすぐに辿り着けるような所にあるわけではない。
だが、ヴァルナスはほんの数秒で辿り着いていた。
「当たりか、はずれか……」
城門を前にして、小さく呟くヴァルナス。
悪魔が来たことに気づいた門番二人の内一人が、ヴァルナスのもとへ駆け寄る。
「何か用か?」
一瞬、間が空いた後、ヴァルナスが口を開く。
「フレディの野郎を知らねえか?」
「なっ……!」
ヴァルナスの言葉を聞いた途端、門番の表情が驚愕と憤怒に変わった。
「フレディ将軍に対して、そのような言葉遣いを……!」
「うるせえ。さっさと答えろ」
ヴァルナスもまた、苛立ちを隠せずにいた。
「……フレディ将軍なら、玉座に座っておられるそうだ」
「――――ッ!?」
今、何て言った……?
フレディの野郎が、玉座に座っているだと……!?
別にティナの席など、どうでもいいのだが。
しかし、玉座に座るということは、王に対する反抗と言えるのだ。
「面白ェことしやがる……」
クックッと笑いながら、ヴァルナスは城門を押し開けて、城内へと入っていった。