第百六十八話 再び、アザルドへ
「この僕が、獲物……!?」
恐怖と驚愕が、ジェネスを押し潰す。
エストの言葉からは、嘘は感じられない。故に、どうしようもないくらいに恐いのだ。
「ジェネス、しっかりしろ!」
「ランツァ……」
ランツァのおかげで、どうにか正気を取り戻せたようだが、安心するのはまだ早い。
なぜジェネスが狙われているのかは謎だが、問題なのはアグウィスに狙われているということ。
数多の悪魔を統べる王すらも超え、誰もが最強と呼ぶアグウィスに――。
しかし、それが最大の問題ではない。
最大の問題は――
「俺達だけじゃ、護れないってことか……」
アンゲルスの者達だけでは、アグウィスに対抗できないということなのだ。
「だから、お前らと手を組んだ方が良い、か……」
確かに、悪魔側と協力すればアグウィスに対抗できるかもしれない。
即ちそれは、仲間の命を救うことを意味する。だが同時に、敵の復讐に手を貸すことにもなるのだ。
(復讐、か…………)
その行為が、何を生むのかをランツァは知っている。
――復讐は、新たな復讐を生む。
負の連鎖。悪循環。
消えることのない憎しみは、誰も望まない。
なのに、そんなことのために手を貸すのは愚の骨頂。
でも――
「わかった。手を組もう」
仲間を失うわけにはいかないんだ。
「――王よ」
「わかってる……」
何かを促すエストに対して、ティナがその一言だけで応じていた。
「あなた達を信頼して、案内するわ」
「案内するって……どこに?」
唐突すぎて、ティナが何を言っているのか理解できないでいるランツァ。
「わたくしの城に」
ティナの城――つまり、破壊を称するレギオンの王の城に。
ティナの作り出した赤い扉の中へ入り、彼ら全員は城を目指して悪魔の住む世界――アザルドへと足を踏み入れたのだった。
第三章、漸くです……orz
更新スピードが遅くて本当にすみません。
それでもここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます><
次章は少し時間が戻りますが、出来る限り面白くしていきますので宜しくお願いします。
※第三章の続きは、おそらく第五章になります。(それまで続きは楽しみにしていてくださいm(_ _)m)