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アンゲルス  作者: Leone
第三章 八高対抗戦
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第百六十六話 勧誘

「トルス、ねぇ……」

 どこか呆れているような、そんな口調でティナが呟いていた。

 一体、何がおかしいというのか。

 科学側で第二位の能力者ということは、その実力は間違いなく化け物クラス。その化け物に選ばれたということは、相当強い者達であるはずなのに……。

 少し馬鹿にしているようなティナの態度が、キリエには全く理解できなかった。

 まるで、自分の方が優れているとでも言っているかのように。

 傲慢な態度を取られたコフィは、静かな憤りを露にする。

「じゃあ、お前は何なんだよ。まさか、一国の王女様とでも言うのか?」

 嫌みを込めて、ニヤリとしながら冗談半分で問いかけるコフィ。

 対するティナは、そうね、と言いながら少々考えて訂正を加える。

「一国じゃないけど、レギオンの王よ、わたくしは」

 直後、時が凍結した。

 誰もすぐには何も言えず、ただ心の中でティナの言葉を否定し続けた。

 信じたくなかったのだ。

 アグウィスを除く全ての悪魔の中で、トップを争う者達の一人がここにいるということを。

(なんで……ティナが、王…………!?)

 キリエは、王が目の前にいるという恐怖に押し潰されそうになりながらも、ある疑問に至る。

 王であるティナが、何をキリエにさせようとしているのか。

 おそらくティナのほうが、キリエよりできることは多い。それでも、キリエにできてティナにできない何かがあるのだろう。

 一体、何をティナは望んでいるのだろうか。

「さてっと――」

 右手に握られている鎌を一振りして、ティナはコフィ達に問いかける。

「王だということを知りながら、まだ強気でわたくしと闘うつもりかしら?」

「……チッ」

 劣等感を強く噛み締めて、コフィはこう返答するしかなかった。

「退かせてもらう……」

 悔しいが、コフィはティナに敵わないと悟っていた。

 どんなに運が良かろうが、王に勝てることなど決してあり得ないのだ。ティナが嘘をついているという可能性もあるが、闘って得られるものは命を賭けるほどのものではないだろう。

「賢明ね」

 ティナはにっこりと微笑みながら言い、さらに続ける。

「別にわたくしはあなた達の命に興味はないわ。わたくしとキリエの話さえ聞かなければ、殺したりしないから安心して」

「…………そうかよ」

 最後にそう言い残して、コフィ達三人は消えるように猛スピードでこの場を去って行った。

 そしてすぐに、ティナがキリエと向かい合う。

「単刀直入に言うわ。キリエ、わたくし達と手を組んで」

「……え?」

 あまりにも唐突すぎるティナの言葉は、キリエの頭の中を真っ白にさせていた。

「何を……言ってるの?」

「わたくし達と手を組んで! これは命令よ、キリエ」

 手を、組む……!?

 つまり、悪魔の仲間になれと言っているのか。

「そんなこと、できるわけがないじゃない……!」

「もちろん、ずっと仲間になるわけじゃないわ。一時的に手を組むだけ……。わたくしだって嫌だけど、これには理由があるのよ……」

 本当に悩んだ末に手を組むことを選んだ、ティナの想い。キリエはそれを強く感じていた。

 お互いに、手を組むことをどれだけ嫌っているのかを理解しているが故に。

 でも、

「一時的だとしても、私は嫌よ……」

 キリエは、はっきりと反対の意志を示した。

 しかし、ティナは一歩も譲らない。

「だから、これには理由があるのよ。それに、手を組むのは『アンゲルス』のためにもなるのよ?」

「私達のためにもなるって、どういうことよ? なんでそんなこと、敵同士なのに……」

 全く、意味がわからない。

 敵の利益になるようなことを、自ら行なうなんて。

「どうしても手を組みたいなら――」

 その時、体育館の外から青年の声が聞こえた。

「まずはその理由ってやつを言えよ」

 遂に、ランツァ・ジェルンがレリアの力によって復活したのだった。

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