第百六十五話 デビルハンター
(…………何かが、おかしい)
一人エレシスは心の中に、妙な違和感をいくつか抱えていた。
それは己の必殺技を意図も簡単に消滅させたティナのことであり、今になって割り込んできたことでもある。
そして、
(先が、見えない……)
エレシスの能力、未来予知が使えないことであった。
エレシスは氷の奥義を習得しているため氷の力も扱えるのだが、天使本来の能力は未来を知ること。
その力が、なぜか使えないのだ。
理由はわからない。わかっていれば、今すぐにでも解決しようとしているだろう。このままにしておくことなどできるはずもないし、かといって原因がわからなければ軽はずみな行動はできない。
(一体、どうすれば…………)
葛藤に悩まされているエレシスに気づくこともなく、
「キリエ、わたくしのお願いを聞いてくれるかしら?」
ティナがキリエに問いかけていた。
「お願い……? 私に何をしてほしいって言うのよ」
「別に難しいことじゃないわ。とっても簡単なことなんだけど、その前に――」
そう言いながらティナはゆっくりと視線をキリエから外し、三人の人間達を視界に捕らえる。
科学側の能力者、コフィ達である。
「……なんだよ」
僅かに警戒心を露にするコフィ。
キリエもまた、ティナが言おうとしていることに嫌な予感を覚えていた。
さらに今、未来が見えないエレシスでさえ、コフィやキリエと同じように感じていた。
そしてその予感は、的中する。
「その前に、あなた達三人には死んでもらわないとね」
冷たく、言い放たれた言葉。
それは、人間であるコフィ達の死を意味していた。
ティナがゆっくりと、手にしている大鎌を振り上げながらコフィ達に向かって歩み寄る。
「ク……」
その時、
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
甚だしく、高らかに笑うコフィの声が響き渡った。
「この俺達を殺すつもりか!? いや、殺せるつもりでいるのか!? 笑わせんな! 誰に向かって言ってんのか、わかってんのか、あぁ!?」
己の胸に親指を突き立てて、傲岸不遜なコフィがある秘密を明かす。
「俺達は、数多の能力者を従えている第二位の能力者、トルス様によって選ばれたデビルハンターなんだよ!」
雷龍であるトルス・Dに選ばれた者達だということを――。