第百六十三話 青光
「てめえ……、まだ生きてやがったのか……」
ルークは、先ほどの爆発によって負傷しているヴァルナスを睨めつけていた。
その瞳に潜むのは、憤怒。
仲間を殺した奴がまだ死んでいないのならば、仇を討つしか考えられない。
それが、死んでいった仲間に対する唯一の救いと信じて。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
全力で、ルークがヴァルナスに挑む。
そんなルークに対して、ヴァルナスは面倒臭そうに視線を向ける。
「あぁ!?」
そして。
「邪魔だ、消えろ」
ルークはヴァルナスに顔を掴まれ、そのまま地に押し潰された。
一撃だった。
ほんの一瞬で、勝敗が決したのだ。
力量差がありすぎて、闘いにすらなっていない。まるで人間がアリを踏み潰すかの如く、ヴァルナスはルークを潰したのだ。
あまりに残酷で、非情で、どうしようもない現実。
「ヴァルナス……ッ!」
酷すぎるその現実に、キリエは凄まじい憤りを感じていた。
なぜ、何の躊躇もなしに命を奪える?
なぜ、こんなにも楽しそうに笑える?
ヴァルナスの考えていること、思っていること全てが理解できない。
自らの意志で戦の渦中に足を踏み入れ、己の死と隣接することすら楽しんでいる。
ヴァルナスにとって命を賭した闘いとは、趣味でしかないというのか。
もしそうだというのならば、
「ここで、止めなくちゃ……!」
どんな手段を用いてでも、ヴァルナスを倒さなくてはならない。
「エレシス!!」
唐突に、キリエが彼の名を叫んだ。
いつもとは違うキリエの雰囲気に、エレシスは動揺しながらも真剣に尋ねる。
「……何ですか?」
「あの技で、相対する能力者同士の勝負をしてみない?」
「あの技、ですか……」
その時、エレシスの翼が青白く輝き出した。
「また爆発させてしまうかもしれませんが、ひょっとしたら……」
続いて、エレシスの右手も青白く輝き出す。翼の方の輝きとは比べ物にならないくらい、眩しい輝き――。
「試してみる価値はありますね」
エレシスの大技であり、十二奥義の一つでもある氷龍砲。
絶大なる氷の力が、放たれようとしていたのだった――。