第百五十五話 ヴァルナス戦、開幕!!
――俺達も、手を貸そうか?
キリエは耳を疑った。
コフィは、確かにキリエに向かってそう問いかけたのだ。
おそらく科学側の能力者であるコフィが、敵である大天使のキリエに。
だからこそ、キリエはその言葉を信用できなかった。
しかし、キリエは心の奥底で、彼らに助けてほしいと願っているのも事実だった。
敵の――ヴァルナスの強さを知っているが故に、自分一人だけではどうしようもないことを悟っていたのだ。
――天使よりも先に、悪魔を滅ぼせ。
コフィ達のやり方が、本当にその言葉通りなら――
「一時休戦、ってことでいいのかしら?」
今だけは、頼ってもいいかもしれない。
「そういうことだ」
コフィがそう返答したのと同時に、闘いが幕を開ける。
まず最初に動いたのは、赤髪の男だった。
「間開放!」
凄まじい速度でヴァルナスの前まで移動しながら、右手を強く握り締める。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
赤髪の男の雄叫びに気圧されたのか、ヴァルナスはただ目を見開くだけだった。
そう。決して、赤髪の男の攻撃を避けようとはしなかったのだ。
ヴァルナスはこのまま渾身の一撃をくらい、吹き飛ばされる。皆がそう思った。
だが、実際は違った。
赤髪の男の拳は、確かにヴァルナスの顔面に直撃している。なのに、ダメージを受けているはずのヴァルナスが笑っている。
その表情には、余裕だけが存在していいたのだ。
「間開放ってのは、この程度か?」
「――――ッ!!」
瞬時に身の危険を察知した赤髪の男は、反射的にヴァルナスから離れる。
(無傷……だと!?)
あり得ない。
将軍に匹敵するほどの力をもつ間解放で、ダメージを与えられないなんて……。
「何かの……悪い冗談だろ……?」
声が震える。
圧倒的な力量差が、赤髪の男に恐怖心を抱かせているのだ。
そんな赤髪の男を、ヴァルナスは楽しそうに見ながら言い放つ。
「手ェ出すなよ。こいつら全部、俺の獲物だからな!」