第百四十七話 間解放の力量
「間解放、だと……!?」
ウィリアムは赤髪の男の言葉を耳して、ただただ驚くことしかできずにいた。
ウィリアムと同じ能力、人体強化のことに対してではない。その後に赤髪の男が呟いた、間解放という言葉にウィリアムは驚愕させられているのだ。
一方でランツァはこの言葉の意味を知らないがゆえに、頭上に疑問符を浮かべていた。
そしてその疑問符を消し去るために、ランツァはキリエに尋ねる。
「間解放って……何なんだ?」
「さあ……。私も科学側の能力についてはあまり詳しくないから……」
そう応えたキリエは、科学側の能力について詳しいであろうウィリアムへと視線を向ける。
ウィリアムはキリエの視線に気づき、ハッと我に返り息を呑む。
「悪い……、少し取り乱しちまったな……」
「……それだけ、彼は……」
キリエはその先を言わなかった。言う必要などなかったのだ。ウィリアムがこんなにも取り乱してしまっていたのを見れば、赤髪の男の実力がどれ程のものなのか、大体は想像がつく。
「ああ、確かにあいつは強い。俺よりも遥かに上だ。正直、俺達全員で挑んでも勝てるかどうか……」
そう告げたウィリアムの表情は、とても暗く、悔しそうだった。
まるで、この試合の敗者は自分達だと思い込んでいるような表情だった。
「間解放っていうのは……」
謎のその言葉の意味を、少し控えめな口調でランツァはウィリアムに尋ねた。
「……人体強化は、力量が大きく三段階に分かれているんだ……」
ほんの少し間を置き、ウィリアムは続ける。
「その三つは、始解放、間解放、終解放……。始解放は俺が使っているやつで、力量は言わなくてもわかるよな?」
「ああ」
短く返答するランツァ。
さらに、ウィリアムは続ける。
「次に強いのが、間解放だ。あいつが使っているのはこれで、力量は……悪魔で例えるなら、将軍クラスと同等か、それ以上だ」
「将……軍……」
ランツァはそれを聞いただけで、どれだけ赤髪の男が強いかを悟る。
――あのブラックと同等か、それ以上の実力を誇る、と。
「最後に……」
そして、ウィリアムは残された一つの情報を伝える。
「これは噂でしか知らないが、終解放の力量は、悪魔の王とほぼ同じらしい」
その情報が真実か否か。ランツァ達はまだ、それを知る術をもっていない――。