第百四十四話 横槍
「ナイス、レリア」
ランツァが親指を立てて言った。
その彼に、レリアは笑顔で応える。
「ありがと」
ランツァとレリアの見事なチームプレイで、相手チームは残り四名。外野には金髪の男がいる。
そして、ボールは相手チームの一人、赤髪の男の手中にある。
その男がボールを人差し指の上で回転させながら、コートの中央へゆっくりと歩み寄ってくる。
「いやあ、中々手痛い反撃だったな。正直、この俺でも対処できるかどうか……」
そんな事を呟く割には、彼の表情は楽しそうに見える。まるで、強敵に出遭う事を望み、それが叶ったかのように。
「お返しに、俺の全力を見せてやるよ」
赤髪の男がボールを右手で握りしめ、一度深呼吸をする。
「人体強化」
「なッ……!?」
ランツァはその言葉を知っているが故に、息を呑んだ。
そう、ウィリアムと同じ……。
「まさか……俺と同じ強化型の能力を……?」
ウィリアムの言葉に対して、赤髪の男は不敵な笑みを浮かべる。
そして、コートの中央にいる赤髪の男が、遂にボールを放った。
狙われたのは――レリア。
「敵討ちするっていうの!?」
即座に、レリアは補助能力をボールのベクトルに使用する。
マイナスの力を、ボールのベクトルに与えるために。
即ち、減速。
そうする事で、レリアはボールを確実に受け止めようとしたのだ。
だが、
「そうはさせない」
途中で邪魔が入った。
相手チームの内野――黒髪の男が、横槍を入れてきたのだ。
「…………!?」
何をされたのかはわからない。黒髪の男は指先一つ動かしていない。しかし、不思議な事に、レリアは何一つ行動できなくなっていた。
何一つ――。
「レリアッ!」
ウィリアムが急いで助けようと手を伸ばすが、間に合わない。
――ボールを、止められない。
誰にも邪魔されなくなったボールは、勢い良くレリアに襲いかかった。
そして、ボールが床上に落ちた。
容赦なく、レリアにアウトを宣告するのだった。