第百四十三話 補助能力の追撃
決勝戦が始まってから、初めてのランツァチームの攻撃。
チームのリーダーであるランツァが、渾身の力でボールを投擲しようとする。
「うおおおおおおおおおおおッ!!」
響き渡る雄叫び。
ランツァは、金髪の男ただ一人だけを睨めつけていた。
そんなランツァに、金髪の男は恐れを抱いていた。先程までは自信に満ち溢れていた、彼が。
だが、そんな事ランツァには関係ない。
容赦なく、ランツァの反撃が金髪の男へと襲いかかる。
即ち、現状では全力のランツァのボールが、放たれたのだ。
対する金髪の男は、受け止めようとはしなかった。そうするのは危険だと、判断したために。
ならば、残された手段は一つ。
――そう、避けるしかない。
反射的にそう考えた金髪の男は、横方向にボールを回避する。
その時、金髪の男の視界に、何かをしようとしている少女の姿が入った。
不敵に笑う、レリアの姿――。
片手を肩の高さまで上げ、微量の力を解き放っていた。
「補助能力」
誰にも聞こえないくらい、小さく呟く。
直後、ボールの軌道が変わった。
「――――ッ!?」
息を呑む金髪の男。
漸く、レリアの狙いを理解したのだ。
ランツァのボールを避けた直後の彼の体勢では、即座に回避行動を取る事は不可能だ。その事に気付いたレリアは、補助能力でボールのベクトルを補助する。そして、無理矢理金髪の男の方へと軌道を変えたのだ。
果たして、その追撃は金髪の男の腹部に命中し、彼を外野へと強制移動させた。
「畜生……ッ!」