第百四十二話 ランツァVS金髪の男
「……まあいい。隙だらけだって事がわからねえなら、直接その身に教えてやる」
金髪の男が呆れたような表情を浮かべ、溜息までついていた。
ランツァは思う。彼の口調や態度から察するに、その言葉は本気で言ったのだろう、と――。
「……やってみろよ」
危険は承知している。だが、それでもランツァは退かなかった。
彼の実力に興味があったからなのかもしれない。あるいは己の実力を、もっと知りたかったからなのかもしれない。
翼なき、今の実力を――。
「ランツァ……」
不意に、背後からキリエの不安そうな声が聞こえた。
ボールを持っている金髪の男を警戒しながら、視線をキリエに向けるランツァ。
「大丈夫さ。あいつのボール、絶対止めてみせるからよ」
直後、目にも留まらぬ速さで、金髪の男がボールを投擲。
狙いはもちろんランツァだった。
両足を肩幅程度に広げ、力強く踏ん張るランツァ。
ボールがランツァの体に衝突した瞬間、全身を揺さぶられる。
嫌悪感に襲われながらも、ランツァはボールを逃さないよう、必死に両腕で包み込んでいた。
そのおかげで、漸くボールの勢いが消滅する。
その光景を見て、金髪の男は息を呑む。
「俺の、ボールを、止めただと……!?」
途切れ途切れのその言葉は、僅かに震えていた。
彼の心中は、絶対的な自信から驚愕と恐怖へ変貌を遂げていたのだ。
「確かに、隙だらけだったはずなのに……」
「うるせえよ。お前が見誤っただけだろ? 現に、こうして俺はお前のボールを止めたんだからな」
ランツァはそう言いながら、ボールを持つ右手を振りかぶる。
「さて、反撃開始といこうか」