第百四十話 幕を開ける決勝戦
「両チーム、中央へ」
審判は試合を開始させるために、彼らをコートの中央へ集めていた。
「それではこれより、決勝戦を行ないます。気をつけ、礼!」
向かい合う両チーム全員が、揃って礼をする。
ランツァは顔を上げ、金髪の男を睨めつける。
「絶対に勝つ!」
「ふん、やれるもんならやってみろ」
金髪の男もランツァに劣らないくらい鋭い視線で睨めつけていた。
「あまり挑発するなよ」
コフィは呆れたような表情で、金髪の男が挑発するのを止めさせる。
少しおとなしくなった金髪の男が、声を低くして言う。
「最初のボールは、俺が取るからな」
「……好きにしろ」
コフィのその言葉を聞いた瞬間、金髪の男はにやりと笑みを浮かべていた。
その笑みは、ランツァチームの者達に妙な寒気を感じさせた。
しかし、誰一人臆する者はいなかった。
金髪の男が天使や悪魔、科学側の能力者のいずれでもないという保証はない。強者ではないとは言い切れない。それでも、彼らは臆さなかったのだ。
己と仲間を信じて――。
「では、両チーム一人ずつ、中央へ」
審判がそう言うが早いか、金髪の男がセンタージャンプサークルへと足を踏み入れる。
対するランツァチームからは……
「俺に任せろ」
リーダーのランツァが、金髪の男との勝負に挑む。
ランツァがセンタージャンプサークル内に入ると同時に、金髪の男が彼に話しかける。
「悪いな。先手は俺達がもらうぜ」
「……相当自信があるみたいだな。だが、簡単に先手をやるつもりはないからな」
苦笑を浮かべながら、そう言ったランツァ。
そして、審判がボールを高く上方へ投げながら、よく響く声で言い放つ。
「決勝戦――始めッ!!」
八高対抗戦、フェルムボール。その決勝戦が、遂に幕を開けた。