第百三十五話 魂胆
「あり得ねえ……ッ!!」
ランツァは目の前で起きた出来事を信じられず、ただ驚愕し、それを否定していた。
「俺の……ボールを止めやがった……」
ランツァは大天使をも超えた存在。ただの人間が、ランツァのボールを防ぐ事など、まずあり得ない。ランツァが手加減をしているとはいえ、受け止められるなどあり得ない。
「おいランツァ……。お前、手加減し過ぎてないよな?」
焦りの表情を浮かべるウィリアムが、そう問いかけた。
「当たり前だ……。あいつ、ただ者じゃねえぞ……」
「だったら、もう遊んではいられないわね」
そう言いながら、先頭に移動するキリエ。
「漸く……本番か」
赤髪の男がそう呟いた直後。
「いくぜ、お前ら」
相手チームの反撃が開始する。
「来るぞ!」
その一言で、ランツァは全員に厳戒態勢を促していた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッ!!」
凄まじい雄叫びを上げて、赤髪の男がボールを放つ。
狙われたのは――先頭のキリエ。
「それが普通よね……」
キリエは右に回避し、問題なくやり過ごそうとする。
だが、そう簡単にはいかなかった。
ボールの軌道上に、外野の大男が現れたのだ。
大男はボールを受け取り、すぐにキリエに向かって投げようとする。
赤髪の男の狙いは、これだったのだ。
わざとキリエに回避させ、次の攻撃を回避できない体勢に陥れる。いくらキリエでも、この状態から大男のボールを回避するのは不可能だ。
「キリエッ!!」
それを察して、動き出すランツァ。
しかし――間に合わない。
「もらったぁ!!」
大男のボールが、キリエを襲う――。