第百二十九話 雷龍の極大金槌
「潔いな……。俺は好きだぜ、己の弱さを理解できる奴はよ……」
トルスはそう言うと同時に、再び雷龍に変身して力を解き放つ。
彼の全身から発せられ、バチバチと音を鳴らす雷。
アランは戦闘態勢に入ったり、腰に差してある剣を抜いたりしなかった。
本当に生きる事を諦め、死を受け入れようとしているのだ。
「……アラン・イルス、何か言い残す事はあるか?」
「……いや、ない……」
「そうか……」
トルスが、全身を覆う雷を右腕だけに集中させ、高く掲げる。
「全てを破壊する雷を統べし龍よ、我が前に在る悪を滅したまえ」
右腕だけに集中した雷が増幅し、同時に黄金の輝きも増す。まるで、太陽のような眩しさだ。
「雷龍の極大金槌――ッ!!」
トルスの右腕が振り下ろされる直前――右腕に集中していた雷が放出され、巨大な雷の金槌が創造される。
金槌の頭の部分が、龍の頭になっている金槌。
そして、遂にトルスの右腕は振り下ろされ、宙を切った。それに従って、金槌も同じように振り下ろされた。
ただし、金槌はアランを頭上から襲いかかるように――。
直後、閃光と爆風、そしてあらゆるものを消し飛ばす力が、その場を埋め尽くした。
変身能力をもつ悪魔、アラン・イルス抹殺。
立ち入り禁止区域侵入者、アグウィス・ファイ・インヴィクター、アラン抹殺の際に逃亡。
後に、ヴェルーダ、リネア、シエンスが到着し、トルスと共に帰還。
これは人間の裏組織――即ち、科学側の記録によるものである。