第百二十六話 不明朗
「なぜ、てめえがここにいる?」
トルスは突然現れたヴェルーダに驚きながら、そう尋ねた。
「理由くらいわかるだろう。トルス、お前がこんな所で暴れているのを、止めるために来たんだよ」
当然の事のように、ヴェルーダは答えた。
しかし、
「違うな」
アグウィスはヴェルーダの言葉を否定した。
「トルスが暴れるのを止めるってのは、筋が通っているように思えるかもしれねえが、本当の理由はそれじゃねえ……。俺に聞きたい事があるんだろ?」
ヴェルーダは暫く沈黙して、重い溜息と共に問いかける。
「アグウィス……、平和主義のお前がなぜ、トルスと闘ったんだ?」
「科学側を、従えるために闘ったんだよ。ソールが動き出した以上、協力してくれる奴がほしいからな……。それじゃあ」
今度はこっちの質問だと、アグウィスは続ける。
「悪魔のお前が、こんな事を聞いてどうするつもりだ?」
口の端を吊り上げて、妙な事を言うアグウィス。
「な、何を言ってんだ? 俺が悪魔だって? そ、そんな事、あるわけないだろう……」
「おい、アグウィス……。ヴェルーダが悪魔って、どういう事だ……!?」
ヴェルーダは視線を彷徨わせ、トルスは嫌な予感を覚えつつ愕然としていた。
そして、アグウィスは苦笑を浮かべながら、怪しそうなヴェルーダを指差して言い放つ。
「ヴェルーダに化けた悪魔だろ、お前は」