第百二十五話 底知れぬ雷龍
「最大戦力だと……? まるで、今まで本気じゃなかったみたいじゃねえか……」
アグウィスが苦笑しながら言った。
「まあ、流石にアレは危険だからな……。下手をすれば、この街を消しかねないくらいだからな」
トルスの目は本気だった。
この街を消しかねないほど危険だというのは、決して嘘ではない。そう、彼の目が告げていたのだ。
「……面白い。見せてみろよ、その力を」
アグウィスはそれを悟っているにも拘わらず、トルスを挑発していた。
絶対に勝てる自信があるからなのだろうか。
トルスはその挑発に乗って、叫ぶように言い放つ。
「この俺を怒らせた事を、悔いるがいい、アグウィス!!」
トルスの背中にある黄金の翼が大きく羽ばたき、暴風が発生する。
その時、アグウィスはある異常な出来事に愕然とする。
「何だ……そりゃあ……!?」
トルスの力が、爆発的に膨れ上がっているのだ。
それは留まる事を知らずに上昇し続ける。流出した力の奔流が、アグウィスを驚愕させる。
「……流石は第二位……。それなりに化物って事か……」
しかし、アグウィスの表情にはまだ余裕がある。彼も、トルスと同様に何かを隠し持っているのだろうか。
それが、第三形態なのだろうか――。
「アグウィス、この程度で驚いてもらっちゃあ困るな……」
トルスが口の端を歪めて、唐突に恐ろしい事を言い放つ。
「俺の実力は、まだまだこんなもんじゃねえぞ」
トルスの力は、留まる事なく上昇していく。
――――そのはずだった。
「やめろ、トルス」
何者かが急にトルスの背後に現れ、彼の肩を掴んで言った。
トルスは驚愕とも恐怖とも言える表情を浮かべていた。やがて、雷や力が徐々に静まっていく。翼や鱗が少しずつ透明化し、元の人間の姿へと戻っていく。
トルスは振り返り、背後にいる者の名を呟く。
「ヴェルーダ…………」