第百二十三話 第二形態
「何だ、それは……ッ!?」
距離を取ったトルスは、驚愕の表情を浮かべたまま、硬直してしまっていた。
その原因は、アグウィスの身体から発せられているもの。
それは――
「何って、『雷』さ」
色は違うが、トルスと同じ雷だ。青白く輝いているそれは、アグウィスの全身を覆っている。
「……てめえ、ふざけてんのか? ものまねなんかしやがって……」
「別にまねをしているわけじゃねえよ。偶然、俺の第二形態が雷だっただけだ。どうしても嫌なら、第三形態になってやろうか?」
「……いや、いい。今のてめえを見てると、無性に腹が立って仕方ねえ。そのままの状態で、ぶち殺してやる!!」
「だから、まねなんかしてねえって!」
アグウィスの言葉はトルスに届くことなく、戦闘が再開される。
雷の尾のようなものをたなびかせ、トルスは一瞬でアグウィスの目の前まで迫る。そして、雷を纏う拳を再び放とうとする。
「パルス」
その時、アグウィスの姿が何の前触れもなく消滅した。
「――ッ!?」
敵を見失ったトルスは、愕然としながら攻撃を止めざるを得なかった。
「どこへ行きやがった……」
そう呟きながら、周囲を見回す。
だが、アグウィスの姿は見つからない。
「ちっ……面倒な事しやがって……」
トルスが舌打ちをし、悪態をつく。
その直後、背後からバチバチという嫌な音が聞こえた。
すぐさま、トルスは振り返ろうとする。
しかし、トルスが振り返るよりも先に、何者かの拳が彼の顔面を襲った。
地面に向かって吹き飛ばされるトルス。
その勢いで、派手に破壊音を立てながらアスファルトの地面が粉砕される。同時に、粉塵が宙を舞い、トルスの姿を隠す。
「それともう一つ」
トルスを吹き飛ばした何者かが呟く。
「言っただろ? 万に一つも、お前は勝てねえって」
再度そう告げたその者の名は――アグウィス。