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アンゲルス  作者: Leone
第三章 八高対抗戦
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第百二十話 雷龍

「さてっと……。俺の力を、ほんの少しだけ見せてやるか」

 アグウィスは気怠そうに、空気の渦を纏っている右腕を振り上げる。

 それを見て、男が警戒体制を取る。

「俺の攻撃力と、お前の防御力、どっちが上なんだろうなぁ!!」

 男の腹部に目掛けて放たれた、アグウィスの拳。

 その拳を、男は右手で止めようとする。

 ――しかし、力の差は歴然だった。

 アグウィスの拳は決して止まることなく、男の右手ごと、腹部を破壊した。外部にとどまらず、内部、即ち骨や内蔵をも粉砕していたのだった。

 男が血を吐きながら、地に落ちていく。

「くッ……。申し訳ありません、トルス様……」

 そう言い残し、男は体を地に預けた。

「……まだ死んでねえみてえだな。俺は殺しが大嫌いだからよ、戦意を失ってもらえるなら、それがいいんだよな……」

 誰にも聞こえないほど小さな声で、アグウィスは呟いていた。

 アグウィスは最強の悪魔と言われているが、殺しを好まない、平和主義者でもあるのだ。

 それにしても、とアグウィスは思う。

「トルス……どこかで聞いたことある名前だな……。誰だったか……」

 空中停止しているアグウィスは、暫く記憶の中を探っていた。

 その時だった。

「俺を呼んだか?」

 突如、背後から聞こえた声。

 アグウィスは振り返り、トルスと思われる声の主を睨みつけた。

 金髪に黒のサングラス、白を基調とした上着をマントのように纏い、口に太い葉巻を咥えている男――。

 そして、アグウィスは何かを思い出したような表情をする。

「誰も呼んでねえよ。お前か……トルスってのは……」

「……そうだ」

 肯定する金髪の男。

「思い出したぜ……。科学側第二位の雷龍、トルス・D……」

 その時初めて、アグウィスはほんの少しだけ警戒をした。

 眼前の男に対して――。

「こんなとこで何してやがる、トルス?」

「それはこっちのセリフだろうが。アグウィス、てめえ、まさかブラックの敵討ちなんかをしてんじゃねえだろうな?」

 それを聞き、アグウィスが苦笑する。

「敵討ち? するわけがねえだろうが。まして、あの将軍のために動く悪魔がいるとでも思ってんのか?」

「いや。ただ確認しただけだ」

 次の瞬間、トルスの体から発せられた黄金の雷。それが彼の体を覆う。

「ただ確認しただけ、か……。それにしちゃあ、この俺と闘う気満々って感じだな」

 アグウィスから放たれる、力と殺気の奔流。

「悪魔のてめえは、俺達人間の敵だ。殺そうとしねえわけがねえだろうが」

 葉巻を咥えている口の端を吊り上げて、トルスがアグウィスに問いかける。

「これから死刑を執行する。何か言い残す事はあるか、アグウィス?」

「そうだな……。トルス、俺と組まねえか?」

「……何?」

 予想外の言葉に虚を衝かれて、トルスの表情から笑みが消えた。

「この世界の平和を護るために、この俺と組まねえかって言ってんだよ」

「……信用できねえな。てめえは悪魔だ。敵である人間の俺に向かって、組まないか、だと? ふざけんじゃねえぞ。まさかとは思うが、てめえがここにいる理由ってのは、俺達人間と組むためか?」

「ああ。お前も知ってるんだろ? ソールがアンゲルスを裏切った事を」

「……つまり、天使側の戦力は激減、悪魔側の戦力は上昇。それが理由で、戦争が激しくなる、か……。確かに、悪魔側にとっては願ってもいないチャンス……。なるほどな。そういう事なら、てめえが動き出したのもわからなくもない。だがな……」

 トルスは声を低くして、吐き捨てるように言い放つ。

「俺はてめえと組む気なんかねえ。この戦争がどうなろうが、知ったこっちゃねえ。俺はただ、てめえら悪魔を狩る、それだけだ!」

 凄まじい電力を誇る雷を、周囲に撒き散らすトルス。それが地面や建物の壁など、あらゆる物を黒焦げにし、粉々に破壊していく。

「やっぱりこうなっちまうか……。仕方ねえ……」

 アグウィスも力を開放する。

 漆黒のオーラが全身から溢れ出し、それが大気を揺らめかせていた。

 まるで、炎の熱によって揺らめいているかのような――。

「……流石だな。てめえがその気なら、この俺も手加減なしでいこうか」

 その時、トルスの体に異変が起きた。

 全身の皮膚が黄金の鱗に変わり、背中からは黄金の翼が生えてきたのだ。

『雷龍』

 それが科学側第二位、特殊型の能力者、トルス・Dの正体――。

「龍と化したこの俺の実力を、見せてやろう」

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