第百十五話 チーム決定!
「さて、それぞれの競技のチームを決めるぞ」
休憩時間が終わり、担任がクラス全員にチーム決めを促していた。
「ではクラス代表、前に来てチーム決めをしてくれ」
担任はそう言うと、教室の隅へと移動した。
同時に、クラス代表の男女二人が教壇の上に立つ。
「それじゃあ、まずはサッカーから。出場したい人は挙手して」
何人かが手を挙げる。そして、それを代表が数える。人数不足なら挙手した者は出場決定で、オーバーなら一先ず保留。後で、くじなどで決めるといった方法でチームを決めていく。
いくつかの競技名が言われたところで、遂にあの競技の名がランツァの耳に届けられる。
「そ、それじゃあ……フェルムボール」
競技名を聞くが早いか、キリエは挙手した。
それを見た者達は、予想通りの表情を浮かべていた。
――そう、恐怖の表情を。
例外なのは、彼女の正体を知っているランツァ達――そして、ティナくらいだった。
そんなティナに気付いたランツァはふと思った。なぜ、ほとんど顔色を変えないのか、と。
……まさか、キリエの正体を知っているのか? いや、それはないだろう。もしティナが悪魔か天使なら、本能でその正体を知る事ができる。だから、ティナはそのどちらでもないと思う。なら、キリエの正体を知っている事はまずないだろう。ティナが科学側の者なら話は別だが。
おそらくティナはまだ、フェルムボールの恐ろしさについてあまり理解できていないのだろうと、ランツァは考える事にした。
そして、キリエの後に続くように、ウィリアムが手をゆっくりと挙げた。
「俺も出る」
凝結した思いを悟らせるその言葉は、周囲の者達を驚愕させた。
仕方ねえ……。返答する暇もなく休憩時間が終わったけど、誘われたし、出るとするか。
「俺も」
ランツァも挙手し、フェルムボールに出場する事を決めた。
「私も出るわ」
同様に、レリアも挙手をした。
あと一人……ティナはというと……。
「私も……出ます」
手を挙げて、ティナはそう言った。
その時だった。
危険だとか、怪我するだけでは済まないだとか、彼女の身を案じるそういった言葉が、次々と発せられていた。特に、男子から。
だが、ティナの意志が曲げられる事は決してなかった。
「大丈夫です。こう見えても私、結構自信あるんですよ」
無駄だと判断したのか、フェルムボールに出場しようとするティナを止めようとする者はいなくなった。
「そ、それでは、フェルムボールは、ひ、一チーム五人なので、け、決定とします」
震える声で、チームが決定した事を告げる代表。
こうして、フェルムボールに出場するチームが決まった――。