第百十四話 Keep Out
『Keep Out』
その言葉が刻まれているテープが、至る所に貼られている。
それを見てアグウィスは立ち尽くし、溜息をついていた。
「仕事熱心にも程があるだろ……」
悪魔の将軍が全力で闘ったのだ。それ故に、被害は絶大なもののはず。そんな場所を、ほんの数時間で立ち入り禁止にしてしまうとは……。
「こりゃあ、絶対に奴らが絡んでいるな」
奴ら――それは、科学側の猛者達の事だ。
「まあ、用があるのは奴らなんだけどな……。別に、あいつが死んだ場所に興味があるわけじゃねえから、逆に絡んでいなかったら、ここまで来たのが無駄になっちまうしな」
アグウィスは独り言を呟き、テープを握って引きちぎった。
彼は何の躊躇いもなく、立ち入り禁止の場所に足を踏み入れた。
――その時だった。
「困りますね、そんな事をされては……。ここは立ち入り禁止ですよ?」
背後から声がした。
アグウィスは振り返り、声の主である、黒のスーツに同色のサングラスをかけている男に問いかける。
「いつから俺の背後にいた?」
「そんな事はどうでもいいでしょう。速やかにここから立ち去りなさい」
しかし、男にはアグウィスの質問に応じる気など微塵もなかった。
「断る、と言ったらどうするつもりだ?」
「力ずくで排除します」
この俺を殺す、か……。笑わせる。
アグウィスは堪え切れない苦笑を浮かべながら、男を見据える。
「その言葉、後悔するんじゃねえぞ!」
直後、アグウィスの手刀が牙を剥いた――。