第百十三話 水を向けるキリエ
休憩時間、ランツァ達五人は教室内の一箇所に集まっていた。五人というのは、ランツァ、キリエ、ウィリアム、レリア、ティナの事だ。
「予選ってのは……」
そこでランツァは、ティナの脳裏に浮かんでいるモヤモヤとしたものを除去してやろうとしていた。
「各学校内で、競技別にトップのチームを決めるものなんだ。学年別にはせずに、全校生徒でそれぞれの競技のトップを決めるんだ」
「結局はそのトップの奴らで、他校と競争するのさ」
ウィリアムが補足説明をする。
彼らが言ったように、八高対抗戦で競い合うのは各高校の代表なのだ。つまり、その代表になれなければ、他校のチームと闘う事ができないのだ。だからウィリアムは、予選を通過しないといけないと言ったのだ。
「そういう事だったんですね……。では、皆さんはどの競技に参加するつもりなんですか?」
八高対抗戦について大体の事を理解したティナは、今度はランツァ達が参加する競技について尋ねた。
「俺は……まだ決めてないんだよな」
苦笑しながらランツァはそう答えた。
「私もまだ決めてないよ」
レリアも、ランツァと同じように答えた。
「俺はな……」
と、ウィリアムが参加したい競技の名を言おうとする。だが、
「フェルムボールよね」
それをキリエが、あの危険極まる競技名で遮った。
「んなわけあるか! 俺は……」
ウィリアムはとにかく否定しようと試みたのだが、キリエの妙な視線に気圧されて口を噤んでいた。
フェルムボールと言う事を願う。そして、言わなければどうなるかわかっているんでしょうねという様な、威圧感たっぷりの視線だった。
そんな緊張を一人抱えながら、ウィリアムは口を開く。
「でもまあ、フェルムボールもスリルがあっていいかもなぁ~」
強引に意志を曲げられたのが丸見えの口調ではあったが、ティナは全く気付いていない様子だった。
「へ~、そうなの。実は私も、フェルムボールに出たいって思ってたのよね」
なら、とキリエは恐ろしい事を付け加える。
「あなた達三人も、一緒にフェルムボールに出ない?」