第百十二話 ボウリングボール<フェルムボール
「一応、説明しておくべきか……」
おもむろに、担任は説明をしようとする。
フェルムボールについて――。
「基本的なルールはドッジボールと同じだが、ボールが特殊な物でな……。重量が十キロもあるボールを使って、ドッジボールをする。それが、フェルムボールという競技だ」
十キロのボール。ボウリングボールの中で最も重い十六ポンド、つまり約七キロのボールよりも重いというのか。
そんな物を人に向かって投げれば、間違いなく怪我人が出るだろうに、なぜそんな競技をするのを許されているのだろう。
「フェルムボールは、ある伝統に繋がっているからね」
ティナがそんな疑問をもっているのでは……。キリエはそう考え、独り言のように然りげ無く、ティナに教える。
「別に強制参加じゃないし、やりたいならそれで構わない、っていう事になってるのよ。ただし、相応の運動能力を認められていないと参加はできないけどね」
「まあ、君にはあまり関係のない事だろうが……」
担任はそう言い、教卓を両手で叩き、
「そろそろ休憩時間だが、その後でスポーツ大会――つまり、八高対抗戦で行なわれるそれぞれの競技のチームを決めるぞ」
教室に響き渡る、張りのある声で言い放った。
「オーッ!!」
妙にハイテンションなウィリアム。本当に楽しみにしているみたいだ。
「まずは予選を通過しないとな……。問題はそこから先だからな」
……予選?
ウィリアムの言葉にティナは軽く首を傾げたが、気付いたのは近くにいるランツァとレリアだけだった。