第百五話 おかしな集団
「クソッ!」
突然、ランツァが地面に向かって拳を放ち、悪態をついていた。
「何なんだよ、ソールの野郎……」
「嘆いていても仕方ないわ。これからどうするか、考えましょう」
「……そうだな」
キリエの提案に、ランツァは頷いて同意を示した。他の皆も、ランツァと同様に首肯する。
「まずは、強い仲間を集めるべきだろうな」
これはガルメラの意見だ。
「でも、そんな簡単には集まらないわよ。天使の数自体が、かなり少ないからね」
「そんな事言ってもよ、やるしかねえだろ」
「同感ですね」
エレシスが淡々と、そう言った。
「もし必要でしたら、僕はアンゲルスに加わりますよ。ソールがアンゲルスにいない今となっては、断る理由もありませんし」
さらに、さりげなくそんな事まで言っていた。
「本当に!?」
予想外な事に、キリエはエレシスの言葉に釘付けのようだった。
「はい。ただし、僕が気に入らないと思ったら、その時は即、抜けさせてもらいます」
「マジかよ……」
ランツァも信じられないといった様子だった。
「おい」
その時、ウィリアムが何か照れ臭そうに頭を掻きながら、ものすごい事を口にする。
「俺も、アンゲルスに入れてくれないか?」
……お前もかー!!
心強い事ではあるのだが……、ウィリアムには少し問題がある。
「でも、あんたは科学側の人間でしょ?」
その問題を、レリアが確認するように言った。
「ああ……。だけどよ、別に科学側の人間だからって、アンゲルスに移っちゃいけないわけじゃないだろ?」
ごもっとも。
でも、それはつまり……
「……裏切るの?」
科学側を裏切る事になるのではないだろうか。
「……いや。本来、科学側の敵は悪魔だけだ。天使は人間よりも悪魔になる可能性が遥かに高いって言われているから、天使も殺す奴がいるっていうだけだからな。別に、天使は俺達の敵っていうわけじゃないんだよ。実際に、天使が悪魔になった例は、今のところは一つもないしな……。まあ、確かに敵視している奴の方が多いけど……。昔の俺を含め……。要は、俺は科学側を裏切るつもりはないけど、アンゲルスには加わりたいって事だ」
「……そう。なら、いいんじゃないかな? キリエはどう思う?」
レリアは、この場にいる者達の中で一番偉いキリエに、判断を預ける。
「そうね……。いいわ、二人共アンゲルスに加わって、力を貸してちょうだい」
「おう!」
「はい」
こうして、ウィリアムとエレシスはアンゲルスの一員となった。
天使と悪魔、さらに人間まで……。まったく、おかしな集団だ。