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アンゲルス  作者: Leone
第二章 仮初めの敵
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第百一話 姿なき悪魔の終焉

 聞こえる。

 私の名を呼ぶ声が――聞こえる。

 一体、誰が……。

「――――エ! ――リエ! しっ――しろ、キリエ!」

「……だ……れ……」

 目の前で必死に叫んでいる誰かがいる。この人は……誰……?

「おい、エレ――! はや――しろ!!」

「わかってま――! これでもい――でやってるんですよ!」

 他にも何人か人がいるみたいだ。でも、意識がはっきりしていないためか、言葉をうまく聞き取れない。

「う、ぐッ……」

 いや、それよりもこの激痛は何? 死ぬ程痛い。

 ……そうだった、なんで忘れていたんだろう。私は、あの聖なる剣に殺されそうになって……。

「しっかりしろ! キリエッ!!」




 どれくらい時間が経ったのだろう。気を失っていた私には、全くわからない。

 意識がはっきりしてきて、今どういう状況なのかが徐々にわかってきた。

 今この場にいるのはランツァ、キリエ、ウィリアム、レリア、ガルメラ、ジェネス、そして、アキとエレシスだ。どうやら、ブラックとの闘いで死と隣り合わせだった私達を、アキとエレシスが助けてくれたらしい。今はレリアも加わって、皆の傷を治している。

「勝ったのね……」

 キリエが独り言を呟いた。その時、キリエはある事に気付いた。

 ブラックの姿が見当たらない――。

 まさかあの重傷で、ここから逃げたというのか!?

「ねえ皆……ブラックは……」

 急に妙な不安に駆られて、キリエは皆に聞いてみた。

「あいつは」

「あいつなら俺が消した」

 最初にガルメラが答えようとしたが、それをランツァが無理矢理遮って言い放っていた。

「消した……?」

「ああ……」

「どういう意味……?」

「俺は、許せなかった……。皆を傷つけ、俺の親友の心を苦しめた、あいつを……」

 ランツァは淡々と語っていた。そのせいか、その怒りは恐ろしい程に伝わってきた。

「だから……、この世界から消した……」

 ランツァの目から、ほんの一滴の涙が流れ落ちた。

「だめだな、俺は……。あの時から、俺は殺してばかり……。相手が悪魔とはいえ、やってる事はあいつらと変わらねえよな……」

 その言葉を聞いて初めて、ランツァの涙の意味を、皆が悟った。

「仲間を護るためとはいえ、他の奴を殺していいわけがねえんだ……」

「当たり前ですよ」

 唐突に、エレシスが小さく呟いた。しかし、その声は周囲によく響いていた。

 そして、エレシスは言葉を紡ぐ。

「ですが、被害を抑えるためには仕方のない事だと、僕は思います」

「エレシス……」

 エレシスのフォローに涙を堪えながら、ランツァは笑顔を浮かべて言う。

「そうだな」

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